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#創作大賞2023
ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。〜世間知らずの夢の成就は、屋敷ではなく平民街で〜 第一話
【あらすじ】
第二夫人に最愛の旦那様も息子も奪われ、挙句の果てに家からも追い出された伯爵夫人・フィーリア。
なけなしの餞別だけを持って大雨の中を歩き続けていた彼女は、目的地も希望も生きる理由さえ見失いかけた時に、二人の貧民の男の子たちと出会う。
言葉汚く直情的だけど、何だかんだで面倒見がいい、ディーダ。
喋り方こそ柔らかいが、その実どこか冷めた毒舌家、ノイン。
環境のせいでスレてい
ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。〜世間知らずの夢の成就は、屋敷ではなく平民街で〜 第二話
◆
多少のお金はあるにしても、この街の事などまったく知らない。
思えば嫁いで来て以降、仕事で忙しかったザイスドート様から「一緒に街に降りよう」と言われた事はなかったし、私自身も特に街に対して興味を抱いた事が無かった。
その程度の私だから、当然どこに行けば食べ物が買えるのかも知らない。結局二人に案内されるままにお店に入り、彼らが欲しいという物を三人分購入した。
そうして連れて来られたの
ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。〜世間知らずの夢の成就は、屋敷ではなく平民街で〜 第六話
◆第二章:人見知りな伯爵夫人は、平民街の温かさを知る。
習慣とは怖いものである。
屋敷に居た時はいつもザイスドート様たちの起床時間よりも、二時間早く起きるという使用人同然の生活だった。
それがもう、すっかり体に染みついてしまっている。
ここに住まわせてもらい始めてもう一週間の時が経ったが、朝、二人よりも少し早く目を覚まし起こさないようにこっそりと顔を洗いに外に出るのは、最早私の日課と言
ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。〜世間知らずの夢の成就は、屋敷ではなく平民街で〜 第十三話
陽光が差し込む布屋『ネィライ』の店内で、店内の美化活動に勤しんでいた。
壁一面に並ぶこげ茶色の棚から一段分、商品を傷めないように注意しながら布束を引き抜く。空いた棚には雑巾を掛け、うっすらと積もっていた埃を拭きとって、布束の方にははたきを掛けて、再び棚へと戻す。その作業の繰り返しだ。
しかしそれが意外と大変。一束の布は意外と重く、出し入れするだけで重労働だ。
が、だからこそやりがいもある
ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。〜世間知らずの夢の成就は、屋敷ではなく平民街で〜 第十四話
布屋『ネィライ』は、こういうのも何だけれども、それ程お客様が多いお店ではなかった。しかしここ数日は客足が多い。
「ありがとうございました」
笑顔でお客様を、また一人送り出す。
カランカランとドアベルがお客様の退出を知らせ、パタンとゆっくり扉が閉まった。音が消えて数秒後、誰も居なくなった室内でやっと私は「ふぅ」と息を吐く。
会計カウンターには、記入済みの財布カバーの注文票と幾らかのお金