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ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。〜世間知らずの夢の成就は、屋敷ではなく平民街で〜 第一話
【あらすじ】
第二夫人に最愛の旦那様も息子も奪われ、挙句の果てに家からも追い出された伯爵夫人・フィーリア。
なけなしの餞別だけを持って大雨の中を歩き続けていた彼女は、目的地も希望も生きる理由さえ見失いかけた時に、二人の貧民の男の子たちと出会う。
言葉汚く直情的だけど、何だかんだで面倒見がいい、ディーダ。
喋り方こそ柔らかいが、その実どこか冷めた毒舌家、ノイン。
環境のせいでスレてい
ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。〜世間知らずの夢の成就は、屋敷ではなく平民街で〜 第十六話
◆◆◆
――マイゼル様は、最近特に機嫌が悪い。
使用人から影でそう言われている事は、俺自身よく知っている。
が、仕方がないではないか。
最近俺の周りでは、腹立たしい使用人の不手際が頻発に頻発を重ねているのだ。
「おいメイド! どうしてインク壺にちゃんとインクが入っていない!」
「し、しかしインクはちゃんと――」
「俺はインクが半分以下に減っているのは嫌なんだ! 貴様は一体何年俺に仕え
ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。〜世間知らずの夢の成就は、屋敷ではなく平民街で〜 第二話
◆
多少のお金はあるにしても、この街の事などまったく知らない。
思えば嫁いで来て以降、仕事で忙しかったザイスドート様から「一緒に街に降りよう」と言われた事はなかったし、私自身も特に街に対して興味を抱いた事が無かった。
その程度の私だから、当然どこに行けば食べ物が買えるのかも知らない。結局二人に案内されるままにお店に入り、彼らが欲しいという物を三人分購入した。
そうして連れて来られたの
ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。〜世間知らずの夢の成就は、屋敷ではなく平民街で〜 第六話
◆第二章:人見知りな伯爵夫人は、平民街の温かさを知る。
習慣とは怖いものである。
屋敷に居た時はいつもザイスドート様たちの起床時間よりも、二時間早く起きるという使用人同然の生活だった。
それがもう、すっかり体に染みついてしまっている。
ここに住まわせてもらい始めてもう一週間の時が経ったが、朝、二人よりも少し早く目を覚まし起こさないようにこっそりと顔を洗いに外に出るのは、最早私の日課と言