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【学校教育/教育改革】生徒も教員もどちらも犠牲にしないという目的を忘れないこと【定期テストの廃止/単元テストの充実】


最近、新潟県で「定期テストの廃止の動きがある」という話を聞きました。


しかし、この記事を読んでいる皆さんもお分かりのように、定期テストを廃止するだけでは、単純に学習量が減ってしまいますし、内申点評価の目安が無くなってしまうというデメリットの発生しかありません。

ですので、定期テストというくくりでのテストを廃止するだけでなく、それと並行するように(現在も実施している)単元テストを充実させるということにする、と聞きました。

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この場合のメリット(狙い)として考えられることは、

(1)生徒目線

1. 単元が終わるごとにテストをするため(学習してから時間をおかないため=短期間でのテスト実施のため)、知識の定着をし易い。

2. 定期テストに合わせて、5教科または8or9教科という膨大なテスト対策を行わなくてはならないということが無くなるので、心身ともに負担が軽くなる。

(2)学校(教師)目線

1. 一夜漬けで対応出来るようなテストではなくなるため、生徒が学習の習慣を身に付けることが出来る。

2. 定期テストの準備や管理をしなくて良いため、その浮いた業務分を他の業務に振り分けることも、各教員の負担を軽くすることも出来る。

といったこと等が考えられますので、それを目指した施策なのでしょう。

(1)(2)の狙いが実現すれば、少なくとも、今より生徒の学力の底上げや、円滑な学校運営につながる可能性が高いのではないでしょうか。

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しかし、定期テスト廃止に伴う学校運営が、まだ実施されていない都道府県にいる私としては、上記の施策を推進することにより、


1⃣学校の授業についていけない生徒を切り捨てる形になるのではないか。

2⃣部活で忙しい生徒(テスト期間中しか部活の休みが無い=テスト休み期間中に集中して勉強する生徒)には不利なのではないか。


という結果につながらないかと不安を感じてしまいます。

1⃣2⃣どちらの場合も、様々な要因から
「学校の授業だけでは充分な理解をすることが難しい生徒(要領が悪い生徒が当てはまりやすい)」にとっては、
「単元テストの結果が内申点評価の大部分を占めてしまう」ことになってしまう可能性が高く、それによって、不利益を被ってしまうことは避けられない状況になってしまうのではないかと不安になります。

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上記はどういうことかと言いますと、私もそうでしたが、ある単元について、知識を頭に入れ定着させ・使いこなすためには、学校の授業だけでは足りなく・ある程度の時間と演習を必要とする生徒は多いです。

そういった生徒たちにとっては、定期テストよりも短い期間で実施されることになる単元テストが重視されると、知識の定着や使いこなすための時間と機会が減ってしまう(足りなくなってしまう)ことになり、結果的に(内申点含む)成績が下がってしまうということです。

そうなると結果的に、要領の良い生徒の成績が上がり、要領が悪い(=不器用な)生徒の成績が下がる、という結果になってしまうのではないかと思い、大変不安です。

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私は、授業や面談などで生徒や保護者に対して、次のようなことを良く話します。

☆要領が悪いことは決してマイナスではない。

(自分が・お子さんが)要領が悪いことは、学力向上を目指す場合にマイナスになるどころか、良い結果になることも多い。
要領が良い生徒は、ある単元・問題についてそれなりの努力で良い点数を獲得することが出来るので、深く学習することは少ない。
一方、要領が悪い生徒は、ある単元・問題について深く理解するまで学習しないと良い点数を獲得することが出来ない。だから時間がかかってしまい、要領が悪い自分を嫌いになるかもしれない。
でも、深く理解するまで学習しているのだから、一度獲得した知識などは、そう簡単に忘れたり手放すことは無いというメリットも存在する。
(漢字の見た目は悪いけれど)学習を「愚直」に続けた生徒は、入試やこれからの生活できっと役に立つ

私は、上記のことを周りに話しますし、私自身がそうだったため強く信じています。

また、学習塾塾長で勤務していた際には、大学受験・社会人で花開いた「学生時点で要領の悪い生徒」を見てきました。

そういった生徒たちが、要領の良い生徒たちと比較して、スタートの段階で(自分たちに非が無いのにも関わらず)マイナスの状況になってしまう、となってしまうことにつながるのであれば、私は、定期テストの廃止に伴う学校運営に大きく反対致します。

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また、この動きが、教員の負担を減らすこと『だけ』を大前提にして考えられていないかということも不安点です。

ここ2・3年、学校教員の過重労働が問題にされることが多くなりました。

過重労働解消のために行っていることとしては、

Ⅰ「部活動顧問を外部指導員に委託する」
Ⅱ「複数担任制・DX化の推進」
Ⅲ「教員への時間外労働手当の増額」

などの導入が全国各地で検討されており、一部は実施されています。
全てが導入されれば各教員にとって現在よりは良い状況になるでしょう。

しかし、上記のⅠ~Ⅲの施策を(様々な要因で)行うことが出来ないため、仕方なく定期テスト廃止を行うというのであれば、その後についても、本質を蔑ろにした場当たり的な運用になることは目に見えています。

そのような運用になってしまうと、生徒に対してのメリットが実現せず、ただ単に生徒が混乱してしまっただけ、という結果になることも間違い無いでしょう。


生徒と教員の「どちらかが犠牲になる」ような学校運営があってはいけません。


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学生時代に中学校教師を目指していた私としては、学校教員の負担を減らすことについて大賛成ですので、上記Ⅰ~Ⅲのような様々な施策を行って欲しいのですが、それによって特定の生徒たちに有利・不利が偏り過ぎないような学校運営を行って欲しいと願います。

そのためには、どのような施策を行うにしても、導入したことで目標に達したとするのではなく、導入後も効果や問題点を検証し常にマイナーチェンジを行う、ことが必要です。



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今回の画像は【yukiota】さんからお借りしました。ありがとうございます。




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