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「八朔」と呼ばれる節句がある。

「八朔(はっさく)」と呼ばれる節句がある。

これは果物の八朔の語源にもなった言葉だが、8月の朔日の略だ。
朔とは新月のことで、旧暦では1日に当たる。

「朔望」という言葉があるが、望は望月(もちづき)、すなわち満月のことで15日。十五夜お月さんにはウサギがいる。

旧暦のこの時期、今の9月1日だが、このころには早稲の穂が実り、農家がそれを貴人やお世話になった人に贈る風習があった。

また「田の実の節句」とも言われたことから、これが「頼みの節句」となった。日本人は昔からこういう言葉遊び、語呂合わせが大好きだ。駄洒落も辿ると和歌の掛詞に行きつくだろう。

この「頼みの節句」に、公家や武家の間で、日ごろ頼みになっている人=世話になっている人に贈り物をするようになったという。

今でも京都の花街では、祇園の芸舞妓さん達が、世話になっているお茶屋や師匠に正装で挨拶をして回るのが慣わしらしい。

さて八朔の節句には各地で行事がある。

香川県丸亀市では男児の成長を祈って、米粉で馬(八朔だんご馬)を作る。

時は江戸、将軍家光が菩提寺参拝の帰途で、愛宕山(あたごやま)の山頂に咲いた梅の枝を馬で取ってくるよう所望した。諸侯がたじろぐ中、讃岐(現在の香川県)藩主・生駒高利の命を受けた同藩馬術指南役・曲垣平九郎が、急勾配をものともせずに見事それを成し遂げたことで一躍全国にその名を轟かせたという逸話がある。馬の団子はこれにあやかったもの。

また福岡県遠賀郡では300年以上続く「八朔の節句」として、長男・長女の誕生を祝うのに、男児には藁で馬を編み(「藁馬」)、女児には米粉で雛人形(団子雛)を作って飾る。

山梨県の都留市では「ふるさと時代まつり八朔祭」が、これは9月1日に行われる。郡内三大祭りの一つになっているくらい大々的な祭で、豪華な大名行列や屋台が売り。和太鼓や神楽の音が祭全体を盛り上げるのだろう。楽しそうだ。

熊本県上益城郡山都町(やまとちょう)でも、江戸時代中期から八朔祭が続いている。これも9月1日。見せ場は「大造り物」の引き回し。竹や杉、黒松の皮、松笠、ススキの穂など、すべて自生する材料を可能な限りありのままの姿形で使って巨大な像を作り、それを街中引き回す。これも楽しそうだ。

歴史、すなわち長く続いていること、長く続けていることには相応の重みがあるということが歳をとると薄っすら分かるようになってくる。

伝統を排除して、科学を崇拝して効率化をうたい、何でもかんでも新しくすることが正義ではない。

オーストラリア連邦の成立が1901年。
(ヨーロッパ人による発見は1606年、シドニー入植1788年。)
たかだか120年前に成立した国を前にすると、その何倍も長い日本の歴史、伝統文化は誇らしく思えるのだ。


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