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傘をさす帰り道


 幼い頃、傘をさすことが好きだった。
 雨が降ってくると、傘をさして、降り注いでくる雨粒を傘で受け止める。

 ボトボトボト……という雨粒が傘にぶつかる音を、不思議な気分でいつも聞いていた。
 この雨粒は、どこから落ちてきたんだろう? と考えては、傘の透明な部分から空を見上げていた。
 雨粒を体に受けるとき、私は自然の一部なのだという実感が湧いてくる。
 空高いところに、川や海から蒸発した水滴が集まって雲が出来て、それが一定量を超えると雨として私達の元へ降り注ぐ。
 そして降り注いだ雨はまた川となり海へ流れ込み、また蒸発して雨となる。
 不思議な自然の循環。
 私は、地球に住んでいる。
 大地、海、空、もっと遠くの宇宙。
 私は、銀河に住んでいる。
 不思議な感覚。こんなにも自然は身近なのに、私はこの宇宙について、何も知らない。
 一体誰が作ったんだろう?
 創った人、本当にすごい! 尊敬!

 今日は雨の予報だ。
 会社に出勤する前に、天気予報を必ず見るようにしている。傘をさせる機会を逃すわけにはいかない。
 虹色の雨が降ってきたら、どうなるんだろう。
 雨が降った後に虹がかかることがある。でも、虹色の雨が降ってくることはない。
 うーん。自然って、不思議!

 夜に雨が降っているとき、私は傘をぐるぐる回しながら帰る。透明な部分がぐるぐる移動して、少しずつ見える景色が変わっていく。
 夜住宅街を歩いていると、光が家に灯っている。
 沢山の光の粒が、温かい家庭の数を表している。幸せ!
 空を見上げると、光の粒が移動していく。あれは飛行機だ。
 はるか上空を、何百人という人が高速で移動していく。彼らはどこに、何の用で行くのだろう。昔は飛行機何てなかった。どうやって作ったんだろう?
 人間の知恵って、凄い!
 私に降り注いでいる雨粒も、あそこから落ちてきたのかな?

雨が降っている。
私はそれを受け止める。ボトボトボト……雨の音がする。

この世界は不思議に満ちている。
今日も雨が降る。私は傘を持って出かける。






 

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