見出し画像

今年の花火はゲストハウスのお客さんと見た。

――ゲストハウスのゲストと一緒に、車のなかから花火を見ている。今までに見たことのない不思議な色の感情が胸のなかに咲きました。その色はとても温かく、光り輝いているものでした。


人生は物語。
どうも横山黎です。

作家、木の家ゲストハウスマネージャー、FMぱるるんのラジオ番組「Dream Dream Dream」のパーソナリティーとして活動しています。

今回は「今年の花火はゲストハウスのお客さんと見た。」というテーマで話していこうと思います。



🏨外国人ゲストと花火

僕は茨城県水戸市上水戸にある木の家ゲストハウスという宿泊施設で仕事をしています。ゲストハウスは普通のホテルや旅館とは違い、寝室が一緒だったり、リビングやキッチン、お手洗い、お風呂を共用で使います。安く泊まれる分、サービスが必要最低限なんですが、他の宿泊者たちと交流することが付加価値となるわけです。

木の家ゲストハウスのオーナーは宮田悠司さん。会社員をやめて100万円で世界一周をしているさなか、ゲストハウス事業の展開に思い至り、帰国後、空き家だった祖父母の家をリニューアルして、ゲストハウスにしたのです。

水戸は観光地といえるわけではありませんが、それでもゲストの数は少なくありません。旅人、仕事の出張で来る人、合宿しにくる大学生……などなど、本当に多くのゲストがいらっしゃっているんです。

その需要をどうにか受け止めようと、宮田さんは宿泊施設を増やしていき、現在では水戸に6棟存在します。今後は水戸だけでなく、宇都宮や前橋でも同じように展開していこうと考えているという状況です。

昨日は、水戸駅近くの千波湖で花火大会がありました。そのせいか、いつもの休日よりもゲストが多かったんですね。特に水戸駅近くにあるいちょう坂ゲストハウスは久しぶりに満室になりました。

去年開催されたときは、結婚式のバイト終わりにパートナーと一緒に巡りました。水面に揺らぐ花火の光に魅せられて、あの日を境により関係が深まったような気がします。

去年のあの日を超えることはないだろうし、ゲストの対応に追われて忙しいだろうから、今年の花火は見なくてもいいや......と半ばあきらめていたんです。

しかし、それは杞憂に終わりました。昨日、僕はいちょう坂ゲストハウスに宿泊中のお客さんと一緒に花火を見ることができたのです。

去年の千波湖の花火大会


🏨茶道と三味線

7月26日から30日までいちょう坂ゲストハウスに宿泊予定のイタリア人がいるんですが、昨日7月29日、こちらの不手際でいちょう坂ゲストハウスの予約がオーバーしてしまったんですね。いくつもの予約サイトに掲載していることもあり、たまにこういうエラーが生じてしまうんですが、定員が8人であるのに対し、予約が9人になってしまったんです。

さてどうしたものかと頭を悩ませた結果、イタリア人に1日だけ、僕たちが運営する別の宿泊施設に移動してもらおうと思い至りました。

というのも、その前日、つまり一昨日のことですが、一度そのイタリア人にお会いしていて、コミュニケーションを取っていたんです。ただ会話しただけではありません。一緒に、茶道体験をしたんです。

木の家ゲストハウスでは茶道の体験ができるんです。オーナーの宮田さんのお父さんが茶道をやっておりまして、ゲストハウスのオプションサービスとして提供しているんです。たまに外国人が興味を持ってくれるんです。

今回のイタリア人も同様で、茶道体験に興味を持ってくれたのです。

ただ、いちょう坂ゲストハウスには和室がないので、移動してもらう必要がありました。少し離れた木の家ゲストハウス3号館の方へお越しになるように伝えたんです。

ひとりで体験してもらうのも……という思いから、何人か人を集めようという話になり、まわりに呼びかけました。結果、大学生がひとり興味を持ってくれました。そういえば僕も体験したことがなかったので、参加することになりました。計3人で始めることにしたんです。

茶道体験はとても有意義な時間でした。仕草の機微、お茶をたてる流れ、お茶を飲む作法……洗練された日本の伝統文化を味わうことができました。

さらに、一緒に茶道体験した大学生は三味線の師範を持っていて、稽古帰りに茶道をしにきたので、楽器を持っていたんですね。せっかくだし、ということで、彼女に三味線を弾いてもらうことになりました。イタリア人がちょうど今後京都の鞍馬山に行くこともあり、「鞍馬山」という曲を弾いてもらいました。

途中、木の家ゲストハウス3号館にチェックインの高校生が登場して一緒に三味線を聴くことになったし、良い意味でカオスな状況でしたね。


🏨花火のようなサービスを

話を戻しますね。

茶道体験をしていただき、そして急遽三味線体験もしていただき、その時間のなかで少なからずコミュニケーションを取ることができたことを受け、部屋の移動をお願いしようと思ったのです。

予約を受け付けただけのまだ信頼関係が築けていないゲストにお願いするよりも、同じ場所で同じ時間を過ごしたゲストにお願いした方が良い。きっとこちらの事情も分かってくれるはず。そう信じて、メッセージを送ることにしたんです。

結果、快く引き受けてくれました。

いちょう坂ゲストハウスから木の家ゲストハウスまでは距離があるので、車の送迎をすることを提案しました。彼がいちょう坂ゲストハウスに戻ってくるタイミングで迎えにいきました。

ちょうど僕らが出発した頃、車外から大きな音が轟きました。花火大会が始まったのです。

「花火を見たいから、少しルートを変えるよ」

僕は彼にそう伝えて、いつもとは違うルートへとハンドルを切りました。いちょう坂を過ぎ、南町を左折し、千波湖を沿うように車を走らせました。窓の向こうでは、花火が次から次へと打ち上がっていました。

ゲストハウスのゲストと一緒に、車のなかから花火を見ている。

今までに見たことのない不思議な色の感情が胸のなかに咲きました。その色はとても温かく、光り輝いているものでした。

「あなたはラッキーですね。茶道を体験して、三味線を聴けて、花火を観れて」

「僕はラッキーボーイだよ」

僕は今、こういう仕事をしています。

たとえ逆境を迎えても、ゲストの心の動きを考えて、自分にできることをやる。お客さんに満足してもらえるように、サービスをする。大学時代に続けていた結婚式のバイトで得た知見が今にも活きている。そんなことを思いました。

今朝、イタリア人を車で送りました。車中、「あなたのことをブログで書きたい」と伝えると快諾してもらいました。最後には一緒に写真を撮りました。

特にこれからは繁忙期だからたくさんのゲストが来るし、それだけいろんなエラーも起きそうだけれど、今回の経験を糧に、木の家ゲストハウスのマネージャーとして尽力していくつもりです。最後まで読んで下さり、ありがとうございました。

20240728 横山黎









この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?