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映画『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』感想 

予告編
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ワカンダ!フォーエバー!!


人の〈死〉

 これまで『エンドゲーム』(感想文リンク)と『ノーウェイホーム』(感想文リンク)だけだった。最速上映の鑑賞、そしてそのチケット予約のためにわざわざ有給休暇を取ったのは笑。

前者はおよそ10年超に亘るMCUの集大成、後者はトビー&アンドリューのサプライズ出演(一応、公開前は噂段階だったけど)などを楽しみに、ドキドキとワクワクが止まらなかった。

そして本作も、公開されるその日を待ちに待っていたのだけれど、その想いは上記の二作品とはどこか異なるものでした。もちろん期待感もあったけど、それ以上に僕の、或いは多くの人の関心のほとんどは、ティ・チャラ/チャドウィック・ボーズマンを失った今、何が描かれるのかということだったと思います。
(ネタバレではありませんが、それなりに内容に触れていきます。悪しからず。)


 冒頭に流れる、お馴染みのMCUのロゴ映像。スタン・リーの時と同様、故人へのリスペクトに溢れた特別仕様のせいで、まだ始まってもいないのに涙腺がやばばば……。そして物語は始まり、ティ・チャラの死から描かれ始める。既にわかってはいたのに、ライアン・クーグラー作品ではお馴染みの長回しによる緊張感が、より一層、この事態を深刻に、重たくさせていた印象です。ワカンダにとって、MCUにとって、ファンにとって、映画界、世界にとって、とても大きな存在だったのだなと、改めて痛感させられます。

彼の死、そして葬儀のシーンは、故チャドウィックのそれと同じにしか感じられない。それほどに彼はティ・チャラ/ブラック パンサーそのものだったのだと象徴するシーン。

ジャッキー・ロビンソン、サーグッド・マーシャル、ジェームズ・ブラウンなど、歴史に名を残すような黒人たちを演じてきたチャドウィックの活躍、そして『ブラックパンサ ー』という作品の存在意義。俳優として、映画人として、彼が世界に伝え届けてくれたことの数々。そういった彼の意志と、何よりチャドウィック・ボーズマンへのリスペクトを、本作からは色濃く感じられます。

ネット記事の引用になりますが、レティーシャ・ライト(シュリ役)がインタビューで述 べていた「彼へのラブレター」という言葉が非常にわかり易いかと思います。

私にとって続編は、チャドウィックのレガシーに対する美しき貢献だと感じています。続編は彼に贈るラブレターのようなものです。毎日、撮影セットに行って、彼に捧げるために各シーンにエネルギーを注ぐことにフォーカスしたし、彼が誇りに思えるよう、この映画に卓越したものを捧げたかったんです。  —— レティーシャ・ライト

『THE RIVER』



 同時に、死んだ者をどう捉えるかということについても考えさせられる本作。チャド ウィック・ボーズマンがもう居ないという重み、大きさ、掛け替えの無さが作品自体にも作用していたように思います。

死者とは、もう存在しないから関係が無いのか。或いは既にこの世を去ったその人が、生きる人々に何をもたらすのか。偉大な兄を失ったことを上手く受け入れられていないように見えるシュリを主人公にして、人の〈死〉を受け入れることがどういうものなのかについて描かれていたように感じました。


 死んでいる——もうこの世に居ない——者のことなど関係無いのだと口にしていたはずのシュリが、物語の要となる場面では、そんな死者の言葉に大きく心を動かされる。彼女の言葉に対するどこか皮肉めいた展開のおかげで、「関係無い」という台詞とは裏腹に、 真逆の事を伝えているようにすら感じられてくる。

人はいつか死ぬ、しかし既にこの世を去っていようとも、その存在は消えることなく、生きる者に何かをもたらし得るのではないだろうかと。



 最期の最後、彼女が心の中に想像するという形で、観客は再び彼に会うことができる。今も兄の意志は、魂は彼女の心の中に、ワカンダに残っているのだと言ってくれているかのようなシーン。

前述のオープニングロゴは、いわゆる追悼の意を示したもののように見えたけど、ここで流れる彼の姿、彼との記憶は、ティ・チャラの意志・魂がまだ彼女の中で息衝いているという描写を通すことで、ティ・チャラ/ブラックパンサーを演じたチャドウィックの意志・魂までもが観客の心に、延いては世界中に生き残っているのだと示してくれているよう。

先ほど述べたような、彼が映画人として残してきたものの偉大さ、そして作り手たちの彼に対するリスペクトがひしひしと感じられます。



 チャドウィックについて述べてばかりで、ほとんど内容に触れていませんでしたが、偉大な者の〈死〉というテーマだけではなく、〈王〉とは何たるか、或いは恨みや諍いによる報復の応酬、戦争の火種など、昨今の国際情勢をも彷彿とさせるようなテーマも描かれています。

また、全体を通して、地上のシーンはシネマスコープが多く、逆にタロカン (本作で敵対する国)や海上のシーンはIMAXでの映像が多めで、スクリーンのアスペクト比を場面ごとに変えることによってタロカン(≒海)の大きさを表現するといった見せ方もあり、テーマの大きさだけに留まらず、IMAXという大画面で観る価値があったんじゃないかな。


 まぁ、一見さんが楽しめるかと言われると難しいところが多分にありますが、それでも、他にもまだまだ語りたくなる魅力がたっぷり詰まった、そしてMCU史上、(個人的には)最も情熱的だったと感じた一本でした。


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