スコールの降る世界を生きる ~ベトナム在住9か月の記録~
■雨季と靴
相変わらずベトナム・ホーチミンに住んでいる。
南国と言えばスコールだ。ホーチミンでは、おおよそ5月から11月が雨季と言われている。
乾季の時からずっと買おうと思っていた雨季向けのスニーカーを、やっと買えた。
こういう、メッシュやらゴムで出来ていて、濡れてもすぐ乾くスニーカーが、ここではよく売られている。
実は、雨季になる数か月前からずっと探していたのだが、雨季が始まってからやっと見つけられた。
日本人の感覚では、「店の商品は数か月分の季節を先取りして並べられるもの」なので、私はずっと
「なぜ、3月になっても雨季用の靴が無いの……? みんな、どこで買うの……?」
とあたふたしていたのだが、雨季になった瞬間に店頭に一斉に並んだ。
つまり、ホーチミンの店には、「季節を先取りする」という概念はないらしい。
こういう、国ごとの違いを発見するたび、つくづく「日本人は準備が大好きだな~」と思う。
日本は天災大国だし、(少なくとも昔は)飢え死ぬ可能性があるほど冬は寒かった。だから、先のことを考えることが習慣化してる民族なんだなあと思う。
対してホーチミン。
何もしなくても勝手に果物がボットボト落ちてきて、余りまくって道で腐ってるほどの豊かな植生。
そして、外で寝てても死なない気候。(←これ超重要)。
つまり、ホームレスになってもそう簡単に死なないとうこと。
「備えなくても憂いなし」の国。命をつなげていけるだけのセーフティネットを、国ではなく自然が、勝手に提供してくれる国。
■雨季と神
雨季が来てから気付いたが、雨季を待ち望んでいたようである。
日本などではよく「靴を見れば金持ちか分かる」とか「靴だけは高いものを履け」とか「靴が汚い女はすぐヤレる」とか言われるが、少なくともホーチミンではそれは意味をなさない。
「ザーーーーーーーーーーッ!!!!」と天からブチ落ちる水が、見栄も洒落っ気も貧富の差も、全て洗い流してしまう。
革靴とか履いてる人はアホじゃん? 何気取ってるの? って話になる。
「雨は平等っぽくていいな」と思う。
「水に流そう」とか
「頑張ってもダメな時はダメだぜ! 天の機嫌が悪い時は全部チャラ!」
「濡れる時は全員濡れる!! 死角なし!」
という気分になる。
っていうかなんかもう、全てがアホらしくなるレベルで降る。
パチンコで大当たりした時に玉が出てくる場所、あの中にいる気分。あるいは車を洗車する巨大な機械、あれの中にいる気分。
そう言えば日本では「雨が降る」と言うが、ベトナム語では「Trời mưa」(It rainsと同じで、「天が雨降らす」)と言う。
ちなみに、ベトナム人がよく言う「Trời ơi」(チョイオーイ)というのは、「神様よ~」という意味で、つまり「Oh my god」と同じだ。
「天から雨を降らしている(めちゃめちゃ気まぐれな)誰か」を想定したくなるような気候である。
準備できるのはカッパと雨季用靴だけで、あとはもう天の気まぐれ次第だ。
いずれにせよ、なんだかスコールを待っていたように思う。
スコールなんて、面倒なだけなのに。毎日カッパを携帯しないといけないし、洗濯物も増える。
しかし、私がベトナムに来たのは、スコールのある季節だったから、スコールが無い季節は落ち着かなく感じるのかもしれない。
スコールを眺めながら、「やっと通常運転のホーチミンにもどったぜ」と感じる。
スコール中は、大量の水の中で守られている気分になる。
スコールのお陰で草木がアホみたいに成長し、果実が実りまくる。
「頑張らなくても飢えない」世界を、平等にもたらしている。
渋澤怜(@RayShibusawa)
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