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#59 「頑張れ」の使い方

「頑張れー!」

オリンピックの熱が最高潮に達している今、この言葉を聞かない日はない。
競技に全力投球する選手。
懸命に応援する選手のご家族や観客。
この「頑張れ」という言葉が、会場を熱くしている一つの要素だと思う。

けれど、この言葉。
あるときから意外と使いどころが難しいと思うようになった。

それは、自分の父がうつ病になったのがきっかけだった。

下を向いているときに「頑張れ」は圧力

そもそも「頑張る」ってどういう意味なのだろう。

困難にめげないで我慢してやり抜く。
自分の考え・意志をどこまでも通そうとする。我 (が) を張る。
ある場所を占めて動かないでいる。

デジタル大辞泉(小学館)

ここでいう「頑張れ」は1か2の意味だろう。
つまり、この辞書をもとにして、「頑張れ」を言い換えるとこうなる。

「困難にめげずに我慢してやり抜けー!」
「あなたの考えと意志をどこまでも通せ―!」

スポーツの場面であれば、確かにこの言葉は力強い応援になる。
しかし、メンタルダウンをしている人がこれを言われれば、圧力になってしまうと思わざるを得ない。

うつ病の人に対しては、以下のような行動は避けましょう。
・偏見を持たない
・「頑張れ」という言葉をかけない
・個人の経験を一般化しない
・無理に社会的活動への参加を促さない
・医療的アドバイスを無許可で与えない
・感情を否定しない

品川メンタルクリニック様のページより引用 
https://www.shinagawa-mental.com/column/psychosomatic/forbidden-phrase/

このようにうつ病を患っている方に避けた方がいいこととして、「頑張れ」という言葉を使わないことが挙げられている。

これは僕が高校時代、父がうつ病になったときに知ったことだった。
僕の学生時代は、かなりの頻度で「頑張れ」という言葉が飛び交っていた。
勉強にしても、運動会や音楽会などのイベントにしても、何かにつけては「頑張れ」という言葉を投げられていた。
学生時代を全く楽しむことができていなかった自分からすれば、その「頑張れ」という言葉は騒音でしかなかった。

僕はうつ病を患ってはいなかったけれど、うつ病の方に「頑張れ」と使うことは避けた方がいいという事実は、すんなりと受け入れられた。
同時に、なぜ僕にとって「頑張れ」が苦痛だったかがわかった気がした。

繰り返しになるが、学生時代の僕は常に下を向いていた。
下を向いている人間にとっての「頑張れ」は、圧力でしかないのだ。
無理やりに「上を向け」と言われていることと一緒なのだから。

上を向いているときに「頑張れ」は通じる

人というのは上を向いているときと下を向いているときがある。
メンタルが落ちているときは、当然ながら下を向いているときである。

そんなときに「頑張れ」と言われても頑張れない。
ましてや、メンタルダウンをしている人はそれまで懸命に頑張って、我慢して、自分の身を削ってきたのだ。
そんな人に「頑張れ」と言うのは、傷だらけの体に鞭を打っているようなものである。

では、「頑張れ」っていつ使うのがよいのだろうか。
それは、その人が上を向いているときにかける言葉なのではないかと僕は思っている。

スポーツ選手は言わずもがなだ。
オリンピックで言えばメダルという目標を目指して戦っている。
そんなとき下を向いている選手などはいない。
全員が全員、上を向いている。
だから「頑張れ」が通用するのだと思う。

メンタルダウンをしている人全員に「頑張れ」と声をかけてはいけないわけではないとも、僕は思っている。
休養のおかげで、少しずつ元気を取り戻しているとき。
そんなときは優しく「頑張れ」と伝えると、その人の心にも届くのではないだろうか。

自分への「頑張れ」も使い方次第

自分自身に「頑張れ」と言い聞かせる人も多いだろう。
僕も頑張るかどうか、あることに注目して判断する。

僕の中にある矢印がどちらを向いているか、である。

「今日はあれやって、これやって、なんとか片づけたいな……!」
以前記事で書いたウォント思考を自然とできていれば、上を向いている。
そのときは「よし、頑張ろう!」と自分を鼓舞する。

「今日はあれもこれもやらなきゃ。ああ、しんどい……」
マスト思考もそうだが、しんどいと思っていれば、下を向いている。
そのときは「よし、頑張らない」と前向きに諦めることにしている。

人生には、あえて頑張らないという選択も必要だ。
人間はそこまで頑張れる生き物ではない。

頑張れるときは頑張る。
頑張れないときは頑張らない。

いずれの自分も認めることが大切なのだと思う。

余談

「頑張れ」という言葉が、音楽に乗ったときは、下を向いていても元気になれるときはある。
というか、音楽に「頑張れ」を乗せられるって素晴らしいと思う。
だから、THE BLUE HEARTSというのは偉大なのだろう。

公式の動画がないので、代わりにこれまた偉大な方である江頭さまの動画を掲載する。
この動画に元気づけられた人もきっとたくさんいると思う。

災害や感染症、何が起こるかわからない時代。
どうか無理せずに頑張っていきましょう。





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