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余談的小売文化論

「知性ある消費」をテーマに、現代の消費行動や理想論と現実的な問題のギャップについて考え、言語化しています。「正解」を語るのではなく、読み手が自分なりの正解を見出すための一助になる… もっと読む
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2019年8月の記事一覧

見落としがちな伝統企業の大きな資産

見落としがちな伝統企業の大きな資産

百貨店が苦境に立たされて長らく経つ中で、アメリカでは従来の枠を超えた新たな取り組みが次々と起きている。

特にNordstrom Localをはじめとするユニークな施策を増やしているNordstromはこの四半期で業績を上げているし、

先日PickしたTargetの小型店舗を増やす施策も面白い。

さらにBloomingdale'sの『Carousel』のように、テーマ性をもたせたポップアップス

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邦画の可能性

邦画の可能性

そういえば最近、Netflixでオリジナルコンテンツばかり見ていることに気づいた。

最近気に入ってみていた中国ドラマもNetflixオリジナルだったし、

ずっと好きで少しずつ見ている『クィア・アイ』もNetflixオリジナルだ。

そして最近話題になった日本オリジナルの『全裸監督』も、もちろんすべて視聴した。

ちなみに先週からハマっている『ラスト・ツァーリ』もオリジナル作品。

何を見ようか

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物語は、『買った後』にはじまる

物語は、『買った後』にはじまる

『ファネル型から、循環型へ』

先月登壇したEC CUBE DAYで、これからの購買行動についてそんな話をした。

最近『ストーリー』の重要性が至るところで語られているけれど、その多くは最終的に買ってもらうことを意識したファネル型の発想が根底にある。

しかしSNSが口コミを可視化するようになった今、買ってもらった"あと"のコミュニケーションがますます重要になっている。

「買ったあとこそが関係性

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「オタク」がマス化する時代に

「オタク」がマス化する時代に

久しぶりにCanCamを読んでいたら、「オタク」が約30ページにわたって特集されていて面食らった。

しかもアニメやアイドル、舞台俳優を追いかけることが「素敵なこと」「目指すべき姿」として紹介されており、今をときめく人たちは皆何かに熱烈にハマっている、というのが特集の趣旨だった。

この特集を読んで、ひと昔前であれば特殊な趣味とされていた「オタク」という属性が、「ひとつのものに熱中している」という

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3. シェアされる文章の違い

3. シェアされる文章の違い

Nサロンの #noteチャレンジ の講座の一環として、noteを使って文章を「届ける」ための基本を教科書的にまとめたマガジンの第三弾です。

全体の目次はこちらからどうぞ。

3本目のテーマは『シェアされる文章の違い』です。

シェアは何によって起きるのかnoteはいいコンテンツを拾い上げる仕組みがあるのでいいものさえかけば見つけてもらって広まる可能性は高いのですが、せっかく書いたのであれば少しで

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[マガジン限定]今週のおへんじ。

[マガジン限定]今週のおへんじ。

今週は木曜更新のおへんじnoteです。

質問や感想、こんなこと書いて〜!というテーマがあれば下記のましゅまろからどうぞ。

今週はこちらのましゅまろにお答えしていきます!

「販売員のこれから」という興味深いテーマ…!ちなみに広義の販売員の未来についてはこれまでこんなnoteを書いてきました。

総括すると、その場で商品を説明する役割としての販売員という職種はこれからほぼ必要なくなっていくと私は

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対話のために、旅に出る。

対話のために、旅に出る。

10年前のこの時期、私はNYに行くことを決意していた。

あと1ヶ月で20歳になる。その前に世界の中心をこの目で見てみたかった。

はじめて訪れたNYは東京以上の大都会で、1ヶ月いてもまだ足りないほど刺激の多い街だった。

振り返ってみれば、このときNYという街に魅了され、人が集まる場所のパワーに圧倒されたことが20代の私のあり方に影響を与えたように思う。

だから、今年は次の10年を見据えた旅を

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今月の #あさみのまなび ベストセレクション

今月の #あさみのまなび ベストセレクション

8月も終盤にさしかかってくると、体が夏休みの宿題の焦燥感を思い出すのか毎年締め切りの夢を見る最所です。

ということで(?)今月もSlackコミュニティで日々つぶやいている内容を一部抜粋してご紹介します!
最近はTwitterでつぶやいたことの副音声みたいな使い方をしていることが多いかも。140字で書き足りなかったことや具体的なエピソードなどを書いています。

ちなみにSlack内では私以外のメン

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「体験時代」の新たなビジネスモデル

「体験時代」の新たなビジネスモデル

体験の時代と言われる今、ビジネスモデルも大きな転換を求められている。

例えば音楽業界はCDの売上が下がり続けている一方で、ストリーミングやライブの売上は伸びづけている。5年前と比べても、音楽フェスの数が圧倒的に増えた。

またアパレルブランドもファッションを軸に飲食やイベント事業に着手しており、その場でしか得られない体験の価値が上がっていることがわかる。

しかし体験を軸にしたビジネスの難しさは

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物語は、物語のために作られなければならない

物語は、物語のために作られなければならない

2年前、動画コマースについてこんなnoteを書いた。

その中で、『重要なのは、アイテムにフォーカスせずにストーリーを作ること』なのではないかと書いたのだけど、2年経ってみて改めてこの主張への確信を深めている。

今のファッション業界で語られている動画活用は、どちらかというとアイテムにフォーカスして、洋服の雰囲気を伝えるものが多いように思います。
しかし実際に人が「欲しい!」と思うのは、ドラマで主

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[マガジン限定]今週のおへんじ。

[マガジン限定]今週のおへんじ。

気づいたらお盆とやらが到来していたのですが、私はといいますと毎年この時期はプロ野球に甲子園にと忙しい日々を過ごしているのでほとんど帰省などしたことがありません。

それにしてもこの数年でお盆休みをカレンダー通りにとるのではなくそれぞれずらして夏休みをとる会社が増えたように思うのですが気のせいでしょうか。全然休みな感じがしない…!

でも帰省ラッシュのニュースを見ているかぎりは大多数の人がお盆休みを

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すべてを、言葉にしてしまわないこと

すべてを、言葉にしてしまわないこと

受動の感受がまずあって、能動の思考を経て認識に至るというのが物を知る順序になりますが、日本人は古来、初めの感受に長い時間をかけ、そこにはすでに思考の大半がふくまれていた。(「色と空のあわいで」古井由吉/松浦寿輝)

朝吹真理子さんのエッセイ『抽斗のなかの海』の中で出てきた古井由吉と松浦寿輝の往復書簡『色と空のあわいで』。

言葉はどう紡ぎ出され、文章としての意味をもち、私たちの思考を作っているのか

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日本はそろそろナイトエコノミーに本腰をいれるべきなのかもしれない

日本はそろそろナイトエコノミーに本腰をいれるべきなのかもしれない

今月に入ってから、誰と会っても第一声は『暑いですね』からはじまる。

もちろん夏は暑いに決まっているのだけど、気温は年々上がっているし昼間の日差しはもはや殺人的だ。

夏といえば気持ちが開放的になる上にイベントごとも多く、消費が増えるシーズンだ。しかも通常は猛暑の年の方が冷夏に比べて支出が拡大すると言われている。

しかしここまで暑くなってくると逆に人が家からでなくなり、経済にも影響が出るのではな

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勝ち負けの涙は、いつも地面に染み込んで。

勝ち負けの涙は、いつも地面に染み込んで。

バットが空を切り、思わず空を見上げる。

一瞬の空白があって、『ああ、負けたのだ』という実感がじわりじわりと体に染み込んでくる。

その実感に呼応するかのように、ぽたりぽたりと涙が床に落ちる。

負けた。負けたんだ、もう二度とこのチームの試合は見られないんだ。

はじめて野球を見て泣いたあの日から、私の夏にはいつも野球がある。

***

毎年地面に涙を染み込ませる彼らを見守りながら、私もいつのま

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