591.【WACK峮峮スピンオフ未公開集#4】峮峮にJulieの念いは届くか?(2)
大家好。WACK峮峮スピンオフ未公開集の第4回目は、第2部の18です。この「峮峮にJulieの念いは届くか?」は、Kindleでは1つの章になっていますが、長いのでこのnoteでは2つに分けました。
Julieがルシファーになってしまった峮峮(チュンチュン)を救い出すストーリーの第2回目です。ここの会話で重要になってくるのは、第2部10「Julieの憂鬱」での2人の会話です。
また、この第2部18は、第2部17の続きです。第2部17「峮峮にJulieの念いは届くか?(1)」は次のエピソードをご覧ください。
それでは、note未公開部分をご覧ください。
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峮峮にJulieの念いは届くか?(2)
獅龍公園の入口に到着したJulie。夜明けの空は徐々に茜色に染まり、夜の闇を追いやっていった。
Julieは獅子像の下に腰を下ろすと、モスカートをセットし始めた。もう一度グレネードの動作を確認してから、慎重に、当麻の言葉を思い出しながらセットした。緊張感が襲ってきたが、「峮峮、帰ってきて」と唱えると、心が落ち着いた。
獅龍公園の中に入ると、どうしたのかと思うほど、公園は荒れ果てていた。ゴミが散乱し、嘔吐物は放置され、紙ゴミが夜明けの風に舞っていた。東雲の薄明かりの中に、生ゴミを漁ろうとするカラスが飛び始めていた。
Julieは先を急ぎ、濃いブルーに輝くピラミッドの前に立った。ピラミッドの頂点には、白い光を放つ峮峮が君臨していた。峮峮は美しい輝きをまとっていたが、そのおぞましい所業は否定できなかった。
Julieは、大声で峮峮に呼びかけた。
「峮峮、降りてきて!話がしたいの」
「そんな重装備で話し合い?笑っちゃうな。でもいいよ、Julie」
峮峮は空を舞いながら降りてきて、Julieの前に立った。普通に対話できる距離に近づくと、ゆっくりと黒いバイザーを外して投げ捨てた。そして、その赤い瞳でJulieを睨んだ。
「えらい自信ね……」
「そんなの私には効かない。わかってるもん」
Julieは、その口調に峮峮らしさが残っているので、少し安心した。いや、確信した。絶対にうまくいく!
「峮峮、あなたはルシファーなの?私はあなたをそんな人と思っていない。たとえルシファーになっても、私の峮峮は変わらない。今もあなたが昔のままだと知っているから」
「あなたに何がわかるの、Julie。私はこの世界を支配するルシファー。これは運命なの」
「違う!私には見える。チアやってる峮峮が、いつもニコニコと接してくれる峮峮が。あなた変わってないじゃない」
「Julieね、あたしの姿が見えないの?この角、髪の色、瞳の色、そしてこの衣装。魔槍を出そうか?どこがチアなの?」
「本当のあなたはルシファーなんて望んでいない!なんでって、私には見える。本当のあなたがそこにいるから」
峮峮に動揺が広がった。それを打ち消すように言った。
「それは思い込み。Julie、あなたに何がわかると言うの?」
「わかるよ。その言葉の調子、言葉の波動、昔の峮峮と変わってないじゃない。それは隠せない」
峮峮はうつむいた。遠くでさえずる小鳥の声が聞こえてきた。それに呼応するように、Julieが言った。
「前ね、自慢話とか言っちゃってゴメン。いろいろ話を聞くと、あなたが大変なことをやってきたのがわかった。スゴいよね、峮峮」
「……それ、ホントにわかって言ってるの?」
「ホントにわかってるって……それは私なりにだけど」
「誰もわかってくれないんだ。どんなに大変だったか。どんなにつらかったか」
「そんなことないよ。少しでも、完全じゃなくても、少しでもわかるよ」
「そんなの言葉だけ!誰もわかってくれない……」
「峮峮……」
「Julie、あなただけはわかってくれると思ったのに、あのとき、あのときぶち壊したんだ!」
峮峮の赤い瞳が輝いた。Julieは戸惑いつつも、仕方ないと思って、グレネードを構えた。
「Julie、私を撃つ気?撃つなら撃ちなよ。そう簡単に人って撃てるもんじゃないよ」
Julieは安全装置を外し、引き金に指をかけた。だが、その指は震えた。凍り付いたように指を動かすことができない。
「Julie、あなたには無理。やめた方がいい」
Julieは、アドバイスを受けたように思念し続けていた。
(峮峮、帰ってきて。峮峮、帰ってきて。峮峮、帰ってきて……)
もう一度、引き金に力を入れる。
「峮峮、帰ってきて!」
引き金が引かれ、黒の弾が峮峮のシールドを破壊した。
(……残り1分!)
そう思って、Julieは次に白の弾を撃ち込む。白の弾は峮峮の胸を撃ち抜いて、峮峮は悲鳴と共に上昇していった。Julieは次の弾、黄色を発射した。しかしその弾は空中で炸裂し、空に黄色い軌跡を描いた。
「炸裂弾?……え、外したの?」
動揺するJulieだったが、時間が迫る。そのとき、峮峮がゆっくりと下降し始めた。峮峮が訴えかけるような表情で、Julieを見つめた。
(青の弾……勝利か、死か)
峮峮の赤い瞳がうるみ、まぶたがささやいたとき、Julieは叫んだ。
「峮峮、帰ってきて!」
青の弾に撃たれ、峮峮はそのまま地面に落ちた。ルシファーの姿のまま、青ざめた顔をした峮峮が横たわっていた。微動だにしない峮峮を見て、Julieは絶望した。そこにひざまずいて、峮峮の額に手を滑らせた。
「峮峮……どうしよう、あたし……」
そのとき、濃いブルーのピラミッドの底から漆黒の闇がわき上がった。漆黒の闇は上昇し、ピラミッドを包み込むと思いきや、ピラミッドが巨大な水しぶきとなって崩れ落ちた。その水しぶきは漆黒の闇に吸い込まれる。そして、ピラミッドはすべて闇に吸収され、巨大な闇が支配した。
その漆黒の闇に、ぽっかりと黒い穴が空いた。穴の周りはブルーの光で縁取られており、穴へと向かう道がどんどんこちらへ迫ってきた。
「Julie、こっちだ」
穴の奥からやって来た人影が、Julieに声を掛けた。当麻無明だった。
「峮峮はこの奥にいる。行きなさい」
Julieが立ち上がると、当麻は続けた。
「峮峮はまだ死んではいない。死の前兆、仮死状態だ」
Julieは黒い穴に急いだ。息を切らしながら、こう思った。
(よかった。外したと思ったけど、蘇生の効果が残っていたのね)
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そして小説の全容を以下リンクで示します。内容が大量なので、もう一度出すことは難しく、リンクでご容赦ください。
第1部 峮峮の変身
第2部 7人の悪魔との対決
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