467.【WACK峮峮スピンオフ#34】ノートガルドの街、混乱!
大家好。今回はWACK峮峮スピンオフの34回目、第2部の14回目です。ルシファーとなった闇チュンチュンによって、メチャクチャにされたノートガルドの街を描きます。
これは「WACK峮峮スピンオフ#33」の続きに当たります。「WACK峮峮スピンオフ#33」は次のリンクをご覧ください。
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ノートガルドの街は金貨で満たされた。デスクから、クローゼットから、台所から、冷蔵庫から、洗濯機から、水道の蛇口から金貨があふれてきた。ノートガルドの住人は、一夜にして億万長者、まさに成金となった。
ノートガルドの中心にあるパブ「DUST」。金貨をポケットにねじ込んで、ワディさんはDUSTに向かった。階段を下り、DUSTのドアを開け、パンク風の酒場に腰を下ろす。ストレートなロックに聴き惚れていると、シドとジョーがやって来た。
「おう、ワディ、久しぶり」
「元気か。俺たちゃハッピーさ」
「やっぱ金か」
「そうそう、家ん中金だらけ」
「できねえこたあない。昼から酔いつぶれてるってヤツ」
2人は笑いながら、乾杯といこうと、ジョッキを注文した。
「こりゃいいね。どうなっちまったんだろう」
「ワディもわからん。でもみんなリッチなんだから、言うことないだろ」
そこにスージーとコージーがやって来た。
「おやおや、ベッピンさんのお出ましか」
「ジョー、また調子いいこと言ってんじゃないよ。あんたは大体それでコケる」
「おうおう、何とでも言ってくれ。今日はご機嫌、いや、明日も明後日もだ」
「なんだ、スージーその衣装。まだダンサーやってんのか」
「ダンサーは趣味。あたしからダンス取ったら何もないさ」
「コージーはあれか。まだやってんの」
「休業中よ。こんなに金あったらね。あれ、体力いるのよ」
「まぁそりゃわかるが、今晩はオレと過ごすか」
「シドは調子いいんだから。まぁ考えてもいいけどね」
そんな調子で夜は更けた。心地よい酔いにまかせて、パブを出たワディさん、覚束ない足取りに「ちょっと飲み過ぎたかな」と思いつつ、通りに出た。表通りは夜更けにも関わらず、喧噪に包まれている。いつもうるさい警察の取り締まりも、この日はお休みのようだ。
「やれやれ」と思いつつ、ワディさんは間違えて、裏通りに足を踏み入れた。「あれ迷ったかな」と思ったとき、裏通りにしゃがみ込む数人の人影が目に入った。焦点の定まらない目、青白い顔でろれつが回らず、ぐったりとして笑い声を漏らす者。中には、滝のような汗を流し、鼻水やよだれを垂れ流し、震えが止まらず、痛みにうめき、嘔吐する者もいた。ジャンキー、明らかにスマックやホワイトレディにやられた奴らだった。
酔いが一気に醒めたワディさん、逃げるようにして表通りに出て、家路を急いだ。それだけでは済まない。帰れば帰ったで、その後の膨大な町長としての務めが待ち受けていた。
ノートガルドの街は腐敗の坂を転げ落ちていた。公共機関はなかなか機能せず、役所では待ちくたびれた住人の文句が絶えなかった。病院では長蛇の列ができ、入院患者の看護も滞っていた。交通機関も遅れがちで、ライフラインのメンテナンスも疎かになっていった。どれもこれも、金に目がくらんで、自分勝手に行動した結果だ。
カジノは大盛況だったが、誰もがうまくいくはずもなく、大金をすった挙げ句、暴力沙汰に発展するケースが多発した。街中で争いごとがあっても、警察はなかなか現れない。警官も自己の楽しみを優先していた。暴徒に襲われた店舗、略奪、暴力、放火、破壊に快感を見いだす輩も出る始末。だが、それを取り締まる者も少なく、犯罪件数は急上昇した。
ワディさんは何とか町長の仕事をこなそうとしていたが、問題が多すぎて手の付けようがなかった。くたくたに疲れて、お馴染みの如水珈琲店に姿を現したのは、夜遅くになってからだった。
「ワディちゃん、いらっしゃい!大変なことになったね」
そこには、いつもどおりの白さんがいた。ワディさんは安心したが、首をかしげて聞いた。
「白ちゃん、いつもどおりだね。何にもなかったの?」
「ああ、金貨の話かな。とてつもない量の金貨があふれてたよ」
「え、それでどうしたの?」
「全部寄付した。ネット中心だけどね、うまくいったよ」
ワディさんは思い出したように言った。
「そうか、しまった!悪魔と金貨の話とか知ってたのに、つい浮かれてしまった。いかんなぁ」
「誰でもそんなもの。早く気づいたワディちゃんは良かったんじゃない」
「やっぱり、ルシファー?あの峮峮ちゃんがこんなにしちゃったのかな。信じたくない……」
「でも事実だろうね。みんな金に目がくらんで狂ってしまったんだね」
そんなとき、うさうさんが入ってきた。
「みんな大丈夫~?」
「うさうこそ。あれ、うさうはあのお金どうしたの?」
ワディさんが聞くと、涼しい顔をしてうさうさんは答えた。
「供養、供養。神々に供養して、すごいパワーをもらっちゃった。金貨はもうないけどね」
「わぁ、そういうやり方もあるんだ」
感心するワディさん、一つアイディアが浮かんだ。
「そうか、誰もが手軽に寄付したり、供養したりできるシステムを作ればいいんだ。もちろん、それだけで解決するわけじゃないけど、少しは役に立つ」
「それはいい手だと思う。町長さんはこういうとき大変だな。お疲れさま」
そう言って、白さんがココナッツウォーターを出した。ココナッツウォーターを飲みながら、ワディさんが言った。
「ところで、峮峮ちゃんはどうしてるんだろう。あのルシファーは恐ろしいほど美しかったけど……」
うさうさんはスマホを取り出し、チュンチュンアプリを立ち上げた。
「戦闘能力の画面はダメ。液晶がフルに点灯している状態。パワー最大ってことね」
ワディさんが覗くと、液晶がフルに点灯していて、数字の体をなしていなかった。
「地図に関しては……」
そう言って、うさうさんはうさうボタンの真ん中を押した。すると、地図全体がホワイトアウトしていて、何も見えない画面が示された。
「それで良かったと思ったのは、右のボタン。これは設定ボタンなの。ここで受信感度をミニマムにするとね……」
設定し直してから、もう一度地図のボタンを押すと、今度は地図が表示され、赤い光が獅龍公園を示していた。
「峮峮ちゃんはピラミッドにいるみたい。ピラミッドがルシファーのパワーを増幅させてるのね」
「その増幅されたパワーが、ノートガルドの街全体を覆い尽くしてるのか。うさうさんは対抗できないの?」
「無理無理。こんな強大なパワーに対抗できる人なんていないよ」
しばらく沈黙が支配した。そんな沈黙を破って、ワディさんが言った。
「でも、ルシファーが人の欲望をイジって堕落させてるというのはわかったけど、どうして丸さんは殺されたんだろう」
「それなんだよね、群ちゃんは作者だからかな? 何か峮峮ちゃんにしたのかな?」
「丸武くんってイジると面白かったのに。いなくなるとつまんないな~」
ちょっと寂しくなった珈琲店のドアが開いて、そこにポンちゃんが入ってきた。
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一人で如水珈琲店に入ってきたポンちゃん。何を話すのでしょうか?次回は謎解きです。
今回のパブは、ロンドンのパンクロックをイメージしました。よって、シド(シド・ヴィシャス)、ジョー(ジョー・ストラマー)、スージー(スージー・スー)、コージー(コージー・ファニ・トゥッティ)と、名前をそれっぽくしてみました。
今回の登場人物はこの方です。
WACKの関連記事は次のマガジンから。
今までのWACK峮峮スピンオフは次のマガジンからどうぞ。
峮峮スピンオフは、ちょっと休憩を入れます。
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