ぱぷらみ

スペインからのおたより。 自分自身について話すことを始めました。

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深淵

穏やかに流れている川を眺める。 きらきらと日光を反射して、綺麗だと思った。 昨日とおとといとも、特に違うところはないように見える。 そういえば近くで見たことはあ…

ぱぷらみ
4年前
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ANSWER

ずっと聞こえてくる足音から逃げるようにして ただ目の前の道を走っていた 進んでいるのか戻っているのかも分からなかった それでも後ろを振り返るのは怖かった 疲れ切っ…

ぱぷらみ
4年前
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ノンフィクション

「私、8月生まれの人って嫌い。」 「えっ…何故?」 「何故って、なんだか主張が強いし、図々しい感じがする。」 「そうじゃない8月生まれの人もいると思うけど…」 …

ぱぷらみ
4年前
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風の行き先

この町は空港が近いから、よく飛行機雲が見える。 帽子が飛ぶほどの強い風が吹いても、揺らがない細い軌跡。 銀の翼が白い飛沫を作り上げ、どこまでも広がる空に線引きを…

ぱぷらみ
4年前
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「大事なことだから」

「大事なことだから、一回しか言わない」 何度となく耳にしてきた言葉。 他者の話を一度で理解できないことは、悪いことだと思ってた。 何度も質問するのは自分の理解力や…

ぱぷらみ
4年前
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深淵

深淵

穏やかに流れている川を眺める。

きらきらと日光を反射して、綺麗だと思った。

昨日とおとといとも、特に違うところはないように見える。

そういえば近くで見たことはあまりなかったな。

一歩近づくたびに、遠くで見て思っていたよりも流れが速いことを知る。

落ちないよう気を付けながらのぞき込んでみた。

底が見えない。

生き物の姿もよく見えない。

目を凝らすと流れの中で生活用品のゴミがゆらめいて

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ANSWER

ANSWER

ずっと聞こえてくる足音から逃げるようにして
ただ目の前の道を走っていた
進んでいるのか戻っているのかも分からなかった
それでも後ろを振り返るのは怖かった

疲れ切って座り込んだ時に初めて
狭い空間で響く自分の足音に怯えていたことに気付いた

一度座り込むと立てなくなって
目指す方向も分からなかったとき出会った言葉

「自分の間違いで出来た傷跡も全部 僕の星座」

長い長い距離を走ったあとに飲む水み

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ノンフィクション

ノンフィクション

「私、8月生まれの人って嫌い。」

「えっ…何故?」

「何故って、なんだか主張が強いし、図々しい感じがする。」

「そうじゃない8月生まれの人もいると思うけど…」

「全員じゃないだろうけど。私が今まで会った8月生まれの人は皆そうだった。だから嫌なの。それにテレビの占いでもやってた、8月生まれは自己中だって。そういうふうに生まれたんだよ、あの人たちは。」

「いや、そのテレビの占いおかしくない?

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風の行き先

風の行き先

この町は空港が近いから、よく飛行機雲が見える。

帽子が飛ぶほどの強い風が吹いても、揺らがない細い軌跡。

銀の翼が白い飛沫を作り上げ、どこまでも広がる空に線引きをする瞬間。

あるいは溶けかけの綿が薄い青の中に透けている様子。

見上げる瞬間によって姿を変える道筋は、

何処かへと向かう人々によって作られていることをふと思い出す。

かつて乾いた砂の上に、粉の線を引いていた。

運動服と校庭の木

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「大事なことだから」

「大事なことだから」

「大事なことだから、一回しか言わない」
何度となく耳にしてきた言葉。

他者の話を一度で理解できないことは、悪いことだと思ってた。
何度も質問するのは自分の理解力や知識の無さの露呈だと、
そしてそれは恥ずかしいことだと思ってた。
聞き返すのが怖かった。
「こいつ分かってない」と思われるのが嫌だった。
正直、今でも怖いと思うことがある。
聞き返しても分からなかったらどうしよう?
相手が私と意思疎通を

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