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深淵

穏やかに流れている川を眺める。

きらきらと日光を反射して、綺麗だと思った。

昨日とおとといとも、特に違うところはないように見える。

そういえば近くで見たことはあまりなかったな。

一歩近づくたびに、遠くで見て思っていたよりも流れが速いことを知る。

落ちないよう気を付けながらのぞき込んでみた。

底が見えない。

生き物の姿もよく見えない。

目を凝らすと流れの中で生活用品のゴミがゆらめいていた。

一つや二つではなく、数え切れないほどあると気づくには大した時間はかからなかった。

わざわざ深いところのゴミを掬うのは、億劫だ。

手を濡らし、顔を顰めながら、防げない悪臭に耐えながら、

楽しくすごせるはずの時間を割くのは嫌だ。

でもそのままにしていたら、いつか積み重なったものが水の流れを堰き止める時が来る。

それがいつかは分らないけれど、吹き上げたゴミまみれの水が、私たちの生活を覆いつくす時が来る。

そうなってから「このゴミを捨てたのは私じゃないのに」と嘆くことに、どんな意味があるだろう。

だから今、ゴミを拾う。他の誰もしていなくても、一人でもやる。

ゴミを捨てる人には辞めるよう伝える。

綺麗な川を、未来の子供たちに残すために。


例え話、その2。


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