ぱぷらみ

スペインからのおたより。 自分自身について話すことを始めました。

ぱぷらみ

スペインからのおたより。 自分自身について話すことを始めました。

最近の記事

深淵

穏やかに流れている川を眺める。 きらきらと日光を反射して、綺麗だと思った。 昨日とおとといとも、特に違うところはないように見える。 そういえば近くで見たことはあまりなかったな。 一歩近づくたびに、遠くで見て思っていたよりも流れが速いことを知る。 落ちないよう気を付けながらのぞき込んでみた。 底が見えない。 生き物の姿もよく見えない。 目を凝らすと流れの中で生活用品のゴミがゆらめいていた。 一つや二つではなく、数え切れないほどあると気づくには大した時間はかから

    • ANSWER

      ずっと聞こえてくる足音から逃げるようにして ただ目の前の道を走っていた 進んでいるのか戻っているのかも分からなかった それでも後ろを振り返るのは怖かった 疲れ切って座り込んだ時に初めて 狭い空間で響く自分の足音に怯えていたことに気付いた 一度座り込むと立てなくなって 目指す方向も分からなかったとき出会った言葉 「自分の間違いで出来た傷跡も全部 僕の星座」 長い長い距離を走ったあとに飲む水みたいだった 渇きを癒すものを求めることすらずっと忘れていたから 欲しかったものを

      • ノンフィクション

        「私、8月生まれの人って嫌い。」 「えっ…何故?」 「何故って、なんだか主張が強いし、図々しい感じがする。」 「そうじゃない8月生まれの人もいると思うけど…」 「全員じゃないだろうけど。私が今まで会った8月生まれの人は皆そうだった。だから嫌なの。それにテレビの占いでもやってた、8月生まれは自己中だって。そういうふうに生まれたんだよ、あの人たちは。」 「いや、そのテレビの占いおかしくない?いくら何でも大雑把すぎるよ。根拠無いでしょう?」 「私は経験から知ってるの。テ

        • 風の行き先

          この町は空港が近いから、よく飛行機雲が見える。 帽子が飛ぶほどの強い風が吹いても、揺らがない細い軌跡。 銀の翼が白い飛沫を作り上げ、どこまでも広がる空に線引きをする瞬間。 あるいは溶けかけの綿が薄い青の中に透けている様子。 見上げる瞬間によって姿を変える道筋は、 何処かへと向かう人々によって作られていることをふと思い出す。 かつて乾いた砂の上に、粉の線を引いていた。 運動服と校庭の木々が揺れるときは、儚げにちらちらと白が舞った。 その時はただの文字と音でしかな

          「大事なことだから」

          「大事なことだから、一回しか言わない」 何度となく耳にしてきた言葉。 他者の話を一度で理解できないことは、悪いことだと思ってた。 何度も質問するのは自分の理解力や知識の無さの露呈だと、 そしてそれは恥ずかしいことだと思ってた。 聞き返すのが怖かった。 「こいつ分かってない」と思われるのが嫌だった。 正直、今でも怖いと思うことがある。 聞き返しても分からなかったらどうしよう? 相手が私と意思疎通を図ることを諦めたらどうしよう?という恐怖。 特に母国語以外の言葉でコミュニケーシ

          「大事なことだから」