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イスマイリーヤ旅行記

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エジプトのカイロから2時間。イスマイリーヤへ足を伸ばす。初めて会った人の家に泊まり、次の日にはその友達の家へ。旅先で出会う人と生き方についてのおはなし。
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記事一覧

イスマイリーヤ旅行記 13 支援物資来たる

イスマイリーヤ旅行記 13 支援物資来たる

2024年6月13日 23:12

カイロのギャラリーで
一度だけあった女性が
スエズでの唯一の知り合い

体調を崩して苦しむ僕のために
SMSで診断してくれる医者を手配してくれた

身長体重と症状を詳しく説明すると
野菜スープと水をとにかく飲むように
それと胃薬、抗生剤の名前が送られてきた

知り合いにお礼と共に伝えると
ホテルにそのさらに友達が現れた

自家製のスープを袋に詰め
水のペットボト

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イスマイリーヤ旅行記 11 失ったものに目を向けよ

イスマイリーヤ旅行記 11 失ったものに目を向けよ

2024年6月11日 19:48

「武士道とは死ぬことと見つけたり」

新渡戸稲造の名著を思い出す
僕は思う

「旅とは失うことと見つけたり」

スエズ運河に上り下りが
あるかは分からぬが
南下して航海へと流れ着く街
スエズへとやってきた

お世話になった兄弟と別れ
90円のバスに乗った

隣の大学生と旅路を共にし
無事スエズのホテルに着いた

エアコン付きシングルルームで
一晩250ポンド83

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イスマイリーヤ旅行記 10 些細なこと

イスマイリーヤ旅行記 10 些細なこと

2024年6月10日 16:06

友達からアパートの鍵をもらうだけ
5分で帰る

そう言われてスクーターの後ろに乗った

イスマイリーヤの5分は
30分から1時間にはなる
鞄を友達のパスコンショップに置き
一応カメラだけ持って出た

なんと愚かな選択か
出発から早2時間
誰とも知らない人の家の客間で
カーバ神殿の昼の礼拝の生中継が
懐かしきブラウン管テレビに流れる

隣の部屋からは
金属を切る丸

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【エジプト】イスマイリーヤ旅行記

【エジプト】イスマイリーヤ旅行記

世界の物流の大動脈スエズ運河
その中腹にある街イスマイリーヤ

地中海から紅海、インド洋へ抜ける航路は
希望峰周回の手間を省く画期的なものだった

イスラエルのガザ侵攻と
フーシ派海賊問題で
コンテナ船の航行は皆無だ

運河沿いは高級リゾートと
重要な国家歳入を守る国家権力で
撮影はできないらしい

6月の初旬ながら
すでに気温は41度

かつて仏領時代に建てられた洋館通りも
歩行者は全くいない

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イスマイリーヤ旅行記2 夕飯を待つ

イスマイリーヤ旅行記2 夕飯を待つ

2024年6月5日 22:27

世界中なのか
エジプトだけかは分からないが
熱波が来ているらしい

今日は41℃
明日も18時まで41℃
明後日は42℃にまでなる

外出は控えた方がいいと言われる

今日は滞在先のアパートを少し掃除して
写真の編集をし
2回目だが「死神の精度」を読んだ
やはり面白かったのでおすすめを

Amazonがフランスの携帯番号に
認証コードを送り続けるため
ログインがで

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イスマイリーヤ旅行記3 分かり得ぬこと

イスマイリーヤ旅行記3 分かり得ぬこと

2024年6月6日 06:06

昼の熱気のせいか
効かないエアコンのせいか
久々に床で寝るからか
久々に家に1人だからか
わずかな昼寝のせいか

ドラマ「カルテット」を観たせいか
無数の野犬の鳴き声のせいか
夜中中泣く甲高い南国ちっくな鳥のせいか

分からないまま一睡もできず日の出を見る

不眠の理由など考えても仕方ない
僕達は意味や理由を求めすぎる

世の中には
分かることと分からないがあり

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イスマイリーヤ旅行記 4 農園へ行く

イスマイリーヤ旅行記 4 農園へ行く

2024年6月6日 16:12

41℃を記録する暑さの中
イスマイリーヤでは15時から
1時間半計画停電がある

エアコンも冷蔵庫も切れ
扇風機も動かない
窓を開ければ熱風が吹き込む

窓を閉め床や壁の石材の
冷たさに頼るしかない
石のひんやりとした冷たさが
徐々に自分の体温で失われていく
自分の体温げ恨めしい

今朝友達が
朝食に愉快な男を連れてきた
すぐに踊って歌い出す小錦のような人だ

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イスマイリーヤ旅行記 5 小国に招かれる

イスマイリーヤ旅行記 5 小国に招かれる

2024年6月6日

一本道を走る車の中で
「俺の家は由緒ある家系なんだ」
とアフマドは言い始めた

学生時代に住んでいた
カイロのサイダ・ザイナブ
その由来となったザイナブ婦人と
元は同じだという

へー、そうかねと思いながら
突然王様のような態度になった太った男に
警戒心を高めるも
すでに家に向かう車の中
なるようにしかならないと諦める

30分乾いた大地に走る高速道路を走り
マンゴーやオレン

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イスマイリーヤ旅行記 6 恐怖より愛を

イスマイリーヤ旅行記 6 恐怖より愛を

2024年6月7日

シークと呼ばれる人たち客間には30人は座れそうな
ソファが壁沿いに並び
その上には父、祖父、曽祖父らの
肖像が飾られている
確かに名家っぽい

30歳のアフマドに敬語で話す
53歳のヌールになぜ年下なのに
敬語で話し家臣のように振る舞うのか聞いた

アフマドの父も祖父もシークと呼ばれる
宗教的知識と人間性に特に秀でた人で
誰からも尊敬されるリーダーだったらしい

アフマドの父

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イスマイリーヤ旅行記 7 死にたくなければ休め

イスマイリーヤ旅行記 7 死にたくなければ休め

2024年6月7日 14:46

頭を上から押さえつけられる
顔を細い紐で叩かれるかのよう
足に砂が触れるたび
火の上を歩くかのように熱い

紙が燃えるようなスピードで
体が枯れていき、眩暈がする

吸う息は熱く
吸った息が体の中を熱くする

砂漠のような農園には
水分をギリギリまで絞られた
オレンジが実っている

分厚い皮をナイフで剥き
かじってみると
干されたかのように
わずかに残された果汁に

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イスマイリーヤ旅行記 8 船乗りの一生

イスマイリーヤ旅行記 8 船乗りの一生

2024年6月7日 22:45

20時の日没後
かつて船乗りとして世界を回り
今は農夫として郊外で暮らす
ザキと散歩に出た

「人生でやりたいことは全てやった
 若い頃は色んなところに
 行くのが楽しかった」

エジプトからヨルダン、
サウジアラビア、インド、
インドネシアから横浜
横浜では塩を大量に積んで
オーストラリアに売りに行った

大航海時代の船乗りのような
20世紀の話

色んな国を見

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イスマイリーヤ旅行記 9 警察に連れて行かれる 1/3

イスマイリーヤ旅行記 9 警察に連れて行かれる 1/3

2024年6月9日 21:35

護送車両警察車両に乗せられ運ばれている
隣には拳銃を持った私服警官
運転席と助手席には制服警官が2人

護送車両に乗っている

右側には鎖につながれた
手錠がぶら下がる
後ろ向きに座った僕の目の前には
足をつなぐ鎖の4つついた小部屋

炎天下で歩き回ったせいか
頭痛がひどい
まさか、こんなことになろうとは

アート巡り旅先ではいつも
ギャラリー巡りをする

日本国

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イスマイリーヤ旅行記 9 警察に連れて行かれる 2/3

イスマイリーヤ旅行記 9 警察に連れて行かれる 2/3

2011年のアラブの春の際に
教会が爆破されたことがあった

それ以降警備は厳しく
教会の前にはライフルを持った
警官がおり身分証の提示と
荷物検査なしには入れない

イスラム教徒はまず入れない
バプティスト系は僕も入れなかった

こんな田舎の教会に
外国人なんて来ないんだろう
たまたま道を聞いた人が非番の警官で
そのまま詰所に連れて行かれ座らされた

失敗した
とても嫌な予感がする

現在のエジ

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イスマイリーヤ旅行記 9 警察に連れて行かれる 3/3

イスマイリーヤ旅行記 9 警察に連れて行かれる 3/3

2024年6月9日 21:35

旅先で無いと困るものがある
失くしても何とかなるものもある

無いと困るのは現金、携帯、カメラ
逆になんとかなるのはパスポート

今現金の入った携帯とカメラ
そしてパスポートを持った警官に
護送車両に乗るように言われている

大丈夫、歩いて駅まで行って
そこから長距離バスにのるから

「教会の前で寝かせられない
 お前がカイロに帰るのを
 見届ける必要がある」

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