publista 写真家

エジプト・カイロに暮らす写真家です。中東での日記を書いています。英語、フランス語、アラ…

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エジプト・カイロに暮らす写真家です。中東での日記を書いています。英語、フランス語、アラビア語をしゃべります。写真展準備中です。

マガジン

  • イスマイリーヤ旅行記

    エジプトのカイロから2時間。イスマイリーヤへ足を伸ばす。初めて会った人の家に泊まり、次の日にはその友達の家へ。旅先で出会う人と生き方についてのおはなし。

  • 中東マガジン

    中東に関する面白い話をクリップしてます

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夜明けの隙間に心を覗く

2023年10月23日 07:29 薄暗い夜明けの屋上 カラスに混じる甲高い鳥の声 室外機のタービンの回る音 涼しげな風の中を車のクラクションが 犬の遠吠えのように呼応する レンガの隙間がくっきりと見えるビルが 影もなく立ち並ぶ 静かな朝の魔法が作るおだやかな時間 鳥たちが西へ西へと次々に飛んでいく 夜が終わる 東の空がピンクに染まり 窓が金色に光る その裏には真っ黒な影 人々の声が聞こえる 嗚呼、静かな魔法が終わる 下を見ればゴミだらけ 屋上には瓦礫の山 鳴り止

    • イスマイリーヤ旅行記 13 支援物資来たる

      2024年6月13日 23:12 カイロのギャラリーで 一度だけあった女性が スエズでの唯一の知り合い 体調を崩して苦しむ僕のために SMSで診断してくれる医者を手配してくれた 身長体重と症状を詳しく説明すると 野菜スープと水をとにかく飲むように それと胃薬、抗生剤の名前が送られてきた 知り合いにお礼と共に伝えると ホテルにそのさらに友達が現れた 自家製のスープを袋に詰め 水のペットボトルと薬局の袋を持って お金を渡そうとすると 「そんなんいいから」と断られる

      • イスマイリーヤ旅行記 12 食当たる

        2024年6月12日 書かねばならぬ その気持ちだけで 寝転がったまま なんとかこれを書く スエズの街は紅海とスエズ運河の合流点 どちらも海水だが とにかく海だ 新鮮な海鮮が食べたい一心で この街に来た 地元民おすすめのレストランで エビのスープを頼む トマトベースでディルと胡椒が効き 頭付きのエビが4尾も入って450円 安い フランスなら4000円はする 無類のエビ好きなので 食べたいと思っていた一品に ようやく辿り着くことができた レモンを少し絞って 頭から

        • イスマイリーヤ旅行記 11 失ったものに目を向けよ

          2024年6月11日 19:48 「武士道とは死ぬことと見つけたり」 新渡戸稲造の名著を思い出す 僕は思う 「旅とは失うことと見つけたり」 スエズ運河に上り下りが あるかは分からぬが 南下して航海へと流れ着く街 スエズへとやってきた お世話になった兄弟と別れ 90円のバスに乗った 隣の大学生と旅路を共にし 無事スエズのホテルに着いた エアコン付きシングルルームで 一晩250ポンド830円 とりあえず2晩分払った 久々のエアコンに癒されながら イスマイリーヤの動

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        • イスマイリーヤ旅行記
          14本
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          イスマイリーヤ旅行記 10 些細なこと

          2024年6月10日 16:06 友達からアパートの鍵をもらうだけ 5分で帰る そう言われてスクーターの後ろに乗った イスマイリーヤの5分は 30分から1時間にはなる 鞄を友達のパスコンショップに置き 一応カメラだけ持って出た なんと愚かな選択か 出発から早2時間 誰とも知らない人の家の客間で カーバ神殿の昼の礼拝の生中継が 懐かしきブラウン管テレビに流れる 隣の部屋からは 金属を切る丸ノコの音 37℃の熱気の中 シーリングファンが 休みなく熱風を送ってくる 友達

          イスマイリーヤ旅行記 10 些細なこと

          イスマイリーヤ旅行記 9 警察に連れて行かれる 3/3

          2024年6月9日 21:35 旅先で無いと困るものがある 失くしても何とかなるものもある 無いと困るのは現金、携帯、カメラ 逆になんとかなるのはパスポート 今現金の入った携帯とカメラ そしてパスポートを持った警官に 護送車両に乗るように言われている 大丈夫、歩いて駅まで行って そこから長距離バスにのるから 「教会の前で寝かせられない  お前がカイロに帰るのを  見届ける必要がある」 相当困る パソコンも着替えも充電器もカバンも 200m先の友達の家に置いてある

          イスマイリーヤ旅行記 9 警察に連れて行かれる 3/3

          イスマイリーヤ旅行記 9 警察に連れて行かれる 2/3

          2011年のアラブの春の際に 教会が爆破されたことがあった それ以降警備は厳しく 教会の前にはライフルを持った 警官がおり身分証の提示と 荷物検査なしには入れない イスラム教徒はまず入れない バプティスト系は僕も入れなかった こんな田舎の教会に 外国人なんて来ないんだろう たまたま道を聞いた人が非番の警官で そのまま詰所に連れて行かれ座らされた 失敗した とても嫌な予感がする 現在のエジプトは独裁国家 警察は好き放題振る舞っている 基本心優しい国民なので 旅行者に対

          イスマイリーヤ旅行記 9 警察に連れて行かれる 2/3

          イスマイリーヤ旅行記 9 警察に連れて行かれる 1/3

          2024年6月9日 21:35 護送車両警察車両に乗せられ運ばれている 隣には拳銃を持った私服警官 運転席と助手席には制服警官が2人 護送車両に乗っている 右側には鎖につながれた 手錠がぶら下がる 後ろ向きに座った僕の目の前には 足をつなぐ鎖の4つついた小部屋 炎天下で歩き回ったせいか 頭痛がひどい まさか、こんなことになろうとは アート巡り旅先ではいつも ギャラリー巡りをする 日本国内でも海外でも変わらない アートと名のつくところに行き そこで更にオススメを聞い

          イスマイリーヤ旅行記 9 警察に連れて行かれる 1/3

          日本出張

          2024年3月31日 14:29 日本に帰ってきた 出張につき一時的に 成田から高松へ乗り継ぎ softbankのsimカードを 数ヶ月前に紛失し 再発行が必要になった ロッカーにスーツケース2個を それぞれ預けて300ポンド バイオリンを香川に送り700ポンド ソフトバンク髙津の杜店に来るため 京成線で揺られてきた 待ち時間を含め 40分かけて行ったが 3800円と身分証が2つ必要と言われた 以前はもっと簡単だったのにな Simロックがなくなったせいか 手元にある

          人事を尽くす国エジプト

          2024年3月30日 16:10 エジプト人は友達にするには最高 何でもやってくれる が、友達じゃないとすぐに足元を見るしうそをつく サウジアラビア育ちのエジプト人が 両国の文化の違いと適応への苦労とともにそう言った 全くもって同感だ 驚く程何でもやってくれる 今朝ヨムナはシーク・ザイドから 1時間かけてやってきて 僕と友達とその息子を乗せて空港に行き 荷物問題を30分かけて解決し 僕らが無事ゲートをくぐるまで1時間も駐車場で待機し 2時間かけて帰っていった 日本で

          人事を尽くす国エジプト

          イスマイリーヤ旅行記 8 船乗りの一生

          2024年6月7日 22:45 20時の日没後 かつて船乗りとして世界を回り 今は農夫として郊外で暮らす ザキと散歩に出た 「人生でやりたいことは全てやった  若い頃は色んなところに  行くのが楽しかった」 エジプトからヨルダン、 サウジアラビア、インド、 インドネシアから横浜 横浜では塩を大量に積んで オーストラリアに売りに行った 大航海時代の船乗りのような 20世紀の話 色んな国を見ることは 色んな価値や生き方を学ぶことだと言う 「自分が何を求めているか  そ

          イスマイリーヤ旅行記 8 船乗りの一生

          イスマイリーヤ旅行記 7 死にたくなければ休め

          2024年6月7日 14:46 頭を上から押さえつけられる 顔を細い紐で叩かれるかのよう 足に砂が触れるたび 火の上を歩くかのように熱い 紙が燃えるようなスピードで 体が枯れていき、眩暈がする 吸う息は熱く 吸った息が体の中を熱くする 砂漠のような農園には 水分をギリギリまで絞られた オレンジが実っている 分厚い皮をナイフで剥き かじってみると 干されたかのように わずかに残された果汁に 甘みが凝縮されている 逆に喉が渇く 逃げるように家に戻る 汗はかいたそばか

          イスマイリーヤ旅行記 7 死にたくなければ休め

          イスマイリーヤ旅行記 6 恐怖より愛を

          2024年6月7日 シークと呼ばれる人たち客間には30人は座れそうな ソファが壁沿いに並び その上には父、祖父、曽祖父らの 肖像が飾られている 確かに名家っぽい 30歳のアフマドに敬語で話す 53歳のヌールになぜ年下なのに 敬語で話し家臣のように振る舞うのか聞いた アフマドの父も祖父もシークと呼ばれる 宗教的知識と人間性に特に秀でた人で 誰からも尊敬されるリーダーだったらしい アフマドの父を師と仰いでおり 長く一家と交流を持ってきた 小さい頃からアフマドを知っている

          イスマイリーヤ旅行記 6 恐怖より愛を

          イスマイリーヤ旅行記 5 小国に招かれる

          2024年6月6日 一本道を走る車の中で 「俺の家は由緒ある家系なんだ」 とアフマドは言い始めた 学生時代に住んでいた カイロのサイダ・ザイナブ その由来となったザイナブ婦人と 元は同じだという へー、そうかねと思いながら 突然王様のような態度になった太った男に 警戒心を高めるも すでに家に向かう車の中 なるようにしかならないと諦める 30分乾いた大地に走る高速道路を走り マンゴーやオレンジの木々の間を抜けると 驚くような豪邸が建っていた 家の前の広大な敷地の日陰に

          イスマイリーヤ旅行記 5 小国に招かれる

          イスマイリーヤ旅行記 4 農園へ行く

          2024年6月6日 16:12 41℃を記録する暑さの中 イスマイリーヤでは15時から 1時間半計画停電がある エアコンも冷蔵庫も切れ 扇風機も動かない 窓を開ければ熱風が吹き込む 窓を閉め床や壁の石材の 冷たさに頼るしかない 石のひんやりとした冷たさが 徐々に自分の体温で失われていく 自分の体温げ恨めしい 今朝友達が 朝食に愉快な男を連れてきた すぐに踊って歌い出す小錦のような人だ 農園を持っているというので 今から行って一晩泊めてもらうことになった 昔行ったサ

          イスマイリーヤ旅行記 4 農園へ行く

          イスマイリーヤ旅行記3 分かり得ぬこと

          2024年6月6日 06:06 昼の熱気のせいか 効かないエアコンのせいか 久々に床で寝るからか 久々に家に1人だからか わずかな昼寝のせいか ドラマ「カルテット」を観たせいか 無数の野犬の鳴き声のせいか 夜中中泣く甲高い南国ちっくな鳥のせいか 分からないまま一睡もできず日の出を見る 不眠の理由など考えても仕方ない 僕達は意味や理由を求めすぎる 世の中には 分かることと分からないがあり 殆どのことはわからないまま生き 分からないまま死ぬ 今の僕に分かるのは シャワ

          イスマイリーヤ旅行記3 分かり得ぬこと