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センパイ・スクランブル
とにかく驚いた。だって憧れの凪先輩が下校時、遥か上空から垂れる糸を登って帰宅するのを見てしまったのだから。
えっ、と私の気の抜けた声が、廃ビル裏の空き地に響いた。先輩は掴みどころのない人物で、例え親友でもどこ住みなのかも知らないらしい。それで気になり、帰宅中の先輩をこっそり尾行してしまった。けれど、まさか空の上にあるなんて。
頭上で銀のロングヘアが風になびいていた。先輩は疲れたそぶりも見
ケンタウルス調教助手
ヘロ子は5年前、F1レーサーになってモナコを制する夢を諦めた。なぜなら彼女は体重が495kgもあったからだ。
「オラオラーッ!相変わらず走りに集中が見られませんね!」
ヘロ子は今、モナコの市街地ではなく栗東トレーニングセンターの坂道を駆け上がっていた。4本の脚に力を滾らせ、敷かれた木片を蹄鉄で蹴り、そして2本の手をメガホンに見立て並走馬に檄を入れ続けていた。何を隠そう、ヘロ子は尋常の人間で
-VS EATER-
パリ、夜の裏路地。カレーライスと八宝菜が手足をバタつかせ、捕食者に悲痛な抵抗を示していた。
「アァ、ウマイ、こんなご馳走にありつける日がまた来るなんて……」
「存分に味わえ、これは本来ヒトに許された当然の権利だからな」
「頭が無くなる!助けて!」
哀れな被食者にがぶりつくのは薄汚い男女二名、その後ろで黒服男が一人見守る。哀れな被食者の頭部は今に平らげられようとしていた。
「肉断ち
超密着!世界ランタンロイヤル
我が魂は年一度ハロウィーンの夜に甦る その時地上で最も強大なジャック・オ・ランタンを産み出した者の願いを叶えて進ぜよう
ジョン・バンボギンが死んだ、その暴力と異能を以って世界を牛耳る鬼子は腫瘍で呆気なく逝った。均衡は崩れ、世のアウトロー共は彼の遺言に野心を駆られるのだった。
それから始まった世界ランタンロイヤルも今年で52回目、今回も我々取材班は独自に注目した選手達に密着取材を試みた。
アポカリプス・ワーカー
ガランゴウン、塔の上で俺は旧時代的な滑車を回し、白色のレンガを地上から運び込み続けている。汗を拭いふと空を仰ぐと、相も変わらず彗星が飛び交い、倉吉平野に林立する白い聖塔達を赤く照らしていた。
「慈悲ーッ!」「働く意思はありアアーッ!」
その時、純白の天使が薄汚い求職者2人を攫っていく光景が目に映る。可哀想に、だが俺も他人事じゃない。6時のベルが鳴り響き、俺はこの教会建設現場を解雇された。
廃都探検日記 vol.001「伝説の焼き芋屋」
僕の姉さんは優しく、まだ幼い僕を冒険に連れて行ってくれる。今日は新宿の廃ビル屋上から、国道20号線を覗いていた。
『いしやぁ~きいもぉ~おいしいよ~』
「おっ早速きたなっ!”伝説の焼き芋屋”!」
ザラついた音声の方向、焼き芋屋台が走るのが見えた。推定時速666km。荷台を屋台に改装しただけの唯の軽トラックにしか見えないそれは、新宿駅跡の方から僕たちの方へ、不自然な静けさで爆走する。それが僕達
アタック・オブ・ザ・ユグドラシル
正に晴天の霹靂だった、その日東京スカイツリーは一瞬にして天を貫く巨木に変身したのである。
日本は大混乱に陥った。地デジ放送は停止し、あらゆる経済活動が減衰。外国人観光客も大幅に減り、終末思想カルトがにわかに流行...
「それももう三年前の事かぁ~」
「あの時は本当祭りだったねっ!」
巨木の根元、人混みの中で三人組の女子高生がフラペチーノ(樹木フレーバー)片手に談笑する。あれからこの巨木は新