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本の感想たち

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読んだ本について思ったことや考えたことを書きます。
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#文学

眠りを豊かに

17世紀の大作で、世界で最も売れている小説であるセルバンテスの『ドン・キホーテ』。3.4ヶ月ちまちま読み進めてようやく読了。

今回はその中から好きな一節を。

まったく、眠りってものを創り出したお人に幸いあれ、と言いたいね。だって眠りは、人間のあらゆる思惑を被い隠してくれるマントであり、飢えを取り除いてくれる食糧であり、渇きを癒してくれる水であり、寒さを暖めてくれる火であり、暑さを和らげてくれる

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ドン・キホーテに学ぶ

日本人なら誰もが知る、驚安の殿堂ドン・キホーテ。名前の由来を調べてみたら、案の定セルバンテスの『ドン・キホーテ』で、その名に込められた願いが素敵でハッとさせられる。

これを解するには『ドン・キホーテ』の概要を簡単に触れておく必要がある。

中年のドン・キホーテは騎士道物語を貪り読み、現実世界もそうなのだと勝手に思い込んだ結果、弟子サンチョ・パンサとともに世の不正を正す騎士になるべく冒険(?)に出

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シェイクスピア『ロミオとジュリエット』感想

誰もが知る『ロミオとジュリエット』

これは悲劇の仮面を被った喜劇だ。アンジャッシュも顔負けのスレ違いコント。

ジュリエットと父親の意向、パリスとジュリエットの会話、ロミオとジュリエットの運命、全てスレ違って悲劇へと収束するのに何故か笑えてしまう。(キャピュレットが権力の道具としか見ていなかった娘を亡くした途端に涙を流すという掌返しっぷりは滑稽そのもの) この笑いは、登場人物たちは悲劇に見舞われ

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『フランケンシュタイン』から考える"悪魔"

『フランケンシュタイン』から考える"悪魔"

『フランケンシュタイン』を読んだ。ここ最近読んだ中では群を抜いて面白かった。文学の力を再認識。

好奇心に突き動かされ夢中で悪魔を作った人間の苦悩と、作られた悪魔の苦悩。

悪魔とフランケンシュタイン(以下フラン)の関係性は、不遇な状況にある子が親に「なんで自分を産んたんだ!」という怒りをぶつけるのと同じように思う。
元々心優しい悪魔は自分の不遇な状況からフランに復讐心を燃やし、一方のフランは悪魔

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