シェイクスピア『ロミオとジュリエット』感想

誰もが知る『ロミオとジュリエット』

これは悲劇の仮面を被った喜劇だ。アンジャッシュも顔負けのスレ違いコント。

ジュリエットと父親の意向、パリスとジュリエットの会話、ロミオとジュリエットの運命、全てスレ違って悲劇へと収束するのに何故か笑えてしまう。(キャピュレットが権力の道具としか見ていなかった娘を亡くした途端に涙を流すという掌返しっぷりは滑稽そのもの) この笑いは、登場人物たちは悲劇に見舞われている一方で、読者はその機械仕掛けのような見え見えの物語構成を把握しているというアイロニーが働いていることによって促されているように思える。

喜劇的な要素は、その他しつこいくらいの下ネタと押韻にも見られる。

またシェイクスピアによくある二項対立の葛藤もある。これはジュリエットの語る「外見と内実は正反対!」という台詞に集約されている。p62に数多、二項対立が挙げられているが、中でも本作を貫く大きなテーマは愛情と友情だろう。ロミオは敵討ちから友情を選択し、愛情を投げ捨てる行動を取るが、一方でジュリエットは友情(家族の期待)を裏切って愛情を選択する。このバランス感覚は巧妙。

最後に印象的な一文を。
「逆境の甘いミルク、哲学だ。追放になっても慰められる。」

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