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本の感想たち

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読んだ本について思ったことや考えたことを書きます。
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#書評

『フランケンシュタイン』から考える"悪魔"

『フランケンシュタイン』から考える"悪魔"

『フランケンシュタイン』を読んだ。ここ最近読んだ中では群を抜いて面白かった。文学の力を再認識。

好奇心に突き動かされ夢中で悪魔を作った人間の苦悩と、作られた悪魔の苦悩。

悪魔とフランケンシュタイン(以下フラン)の関係性は、不遇な状況にある子が親に「なんで自分を産んたんだ!」という怒りをぶつけるのと同じように思う。
元々心優しい悪魔は自分の不遇な状況からフランに復讐心を燃やし、一方のフランは悪魔

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『学問のすゝめ』書評



日本人に崇め奉られている一万円札の顔である人による有名な本にも関わらず、読んだことのある人はかなり少ないのではないだろうか。

17編にわたって主張とそれに関連する実例が書かれている。(構成はD.カーネギーの『人を動かす』と類似)

面白いのは、明治時代だけでなく現代にも通じる教訓がふんだんに述べられていること。福沢諭吉は何度も洋行しているため、ある意味で現代のグローバル社会に生きる我々と

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『葛飾北斎の本懐』書評



北斎の本懐以外にも代表的浮世絵絵師の説明や、浮世絵の歴史についても言及され、導入本としても使える。

日本では北斎人気はかなり遅く芽生え、彼の作品がなかなか重要文化財に登録されなかった歴史がそのことを物語っている。

それは北斎が形式張った作品を生み出さず、常に新たな作風へ挑戦する姿勢を生涯貫いたことが他の絵師に比べて異質なためだろうか。ある種、常軌を逸した者として評価することが容易で

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『思考の整理学』書評



全てには賛同できないが、参考になる箇所を二つ。

・メモ
僕は日常的などんな些細なことでも心動かされた事象は必ずメモっているが、見返す機会もないし、どれも有機的に結びつくことがなかった。本書では「メモを寝かせて発酵させたり、後にその中でも重要なメモを新しいノートにまとめる」という目新しい技は悩める僕の参考になった。

・読書マーカー
「本は借りるべきか買うべきか?」と「本の重要な示唆はどの

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『幸福について』書評



ショウペンハウアーは『読書について』に続いて2冊目。

これは巷に溢れた自己啓発本とは一線を画する。少しでも曲解すれば無為に孤独な人生を送ることにもなり得る、ある意味危険な本かも知れない...。

僕なりの解釈で超簡単にまとめると、「バカは群れをなすことで人生の退屈を紛らわせる一方で、教養人は精神的享楽を享受することで孤独を愛し、より幸福な人生を送ることができる。」

教養人は有象無象の群

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書評『犬は「ぴよ」と鳴いていた』



何気なく日常で使う擬音語・擬態語の歴史を紐解く。

最後にそれらを意識したのは、10年前に小学校で宮沢賢治の『やまなし』を扱った時だろうか。「くらむぼんはかぷかぷわらったよ」の「かぷかぷ」が今でも忘れられない。
馴染みのないこの擬態語ですら、未だに根強く記憶に残っている。

擬音語・擬態語の豊富さは日本特有であり、外国人がニュアンス含め完璧に理解することは困難を極めるだろう。しかし、我々日

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『福翁自伝』書評



全く堅苦しい本ではなく、読みながらクスクス笑える。福沢諭吉の人生を追いながら彼の処世術や教訓を学べる。

一見無鉄砲でだらしのないようだが、確たる信念を持ち、絶えず好奇心を持つ勤勉な姿勢を生涯にわたって崩していない。このメリハリこそが当時としては名誉ある洋行メンバーとして選ばれ、数々の名著を残した所以だろう。

新訂 福翁自伝 (岩波文庫)
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