『葛飾北斎の本懐』書評

北斎の本懐以外にも代表的浮世絵絵師の説明や、浮世絵の歴史についても言及され、導入本としても使える。

日本では北斎人気はかなり遅く芽生え、彼の作品がなかなか重要文化財に登録されなかった歴史がそのことを物語っている。

それは北斎が形式張った作品を生み出さず、常に新たな作風へ挑戦する姿勢を生涯貫いたことが他の絵師に比べて異質なためだろうか。ある種、常軌を逸した者として評価することが容易ではなかったのか。よく分からない。

そういう意味で、僕は北斎とレオナルド・ダ・ヴィンチは互いに通ずる部分があると感じた。

レオナルドは物事の本質を描こうとし、初期には全く評価されなかった。言わば、形式張った虚構を描こうとする世の流れに逆らい、挑戦的姿勢を貫いたと言える。

また作画のために北斎は宮大工の設計を学んでいたことと、レオナルドが建築学に精通していたことにも共通点がある。

『知識ゼロから浮世絵入門』によると、『モナ・リザ』が世界で最も知られた絵画で、二番目は『富嶽三十六景 神奈川沖浪裏』であるという。こう見ると、この精神は世の真理な気もする。

北斎は90歳という長寿を全うしたが、真の画風はそこまでしても得られなかったという。現状に満足せず、常に挑戦的に高みを目指す姿勢を僕は見習わなければならないだろう。

葛飾北斎の本懐 (角川選書) https://www.amazon.co.jp/dp/4041038456/ref=cm_sw_r_cp_api_i_eLugEbK5ADMCK

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