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海外生活振り返り日記-ニュージーランド前編-#19

年末

 12月31日。特に予定もなかったが当日クラスメイトのフランス人メロディに誘われバーで年越しすることになった。ホストファミリーの皆はどんな予定だったか分からないが、外国では定番なのか夕方になると街中のバーは店の外まで人が群がり盛り上がっていた。
 夕方過ぎにメロディと街で合流し、適当にご飯を食べて暗くなった頃通りがかりの店に入った。
 中は薄暗くて座る席を探すくらい割と沢山客がいる。何を飲もうかカウンターでメニューを見ていると何だかよくわからないうちに誰かのおごりでテキーラのショットを皆んなで一斉に飲むという雰囲気になり、メロディは流れに乗って3.2.1.テキーラー!という掛け声とともにクッと一気飲みしていた。年越しまでまだ時間があるが皆既に陽気に酔っ払っていた。しかし30分も経たないうちに次々と客が流れ込み居心地も悪くなってきたので一旦店を出て他の店を探すことにした。
 少し歩いているとどこからかバンドの生演奏の音が聴こえてきた。何だかちょっと楽しそうだったので中を覗くとそこまで混んでいなかったのでそのバーで年越しまでゆっくりすることにした。
 中は明るく、入口付近でバンドが演奏していた。聴いたことのない音楽から有名な曲まで幅広く演奏していて客は踊ったり喋ったり各々好きに過ごしていた。店内はテーブルは無くビリヤードの台とその周りに椅子がちらほら有るくらいで殆ど皆立ちながら飲んでいた。
 パーティーやバーは何度行っても得意ではないのでただ端っこにあるビリヤード台の近くで突っ立ってジュースを飲んでいると酔っ払いのおじさんに話しかけられた。中々面倒くさい。メロディに助けを求めようとしたが目を離した隙にいつの間にか居なくなっていた。メロディ…一緒にいてくれよ…と思っていたら彼女は彼女で2人の若い男性と楽しく話していた。その後メロディからその人達を紹介された。
 2人はニュージーランド人とアメリカ人の若者で話すのが早い上に若者言葉やスラングを連発してくるので何を話しているのか殆ど分からなかった。ただ覚えているのは何を話すにしても必ず頭にファ××ンと付けて話してくる。口癖なんだろうけどあまり関わりたくないなというのが第一印象だった。しかし一つ感心した事がある。それは彼らがスマホでメッセージを書く時のタイピングスピード。話すのも早いがタイピングがめちゃくちゃ早く、ダダダダダーっと次々と英文が出来上がっていく。これにはちょっと憧れた。
 メロディは2人から出身地を聞かれパリと答えていた。すると二人ともOh woo cool ! と盛り上がり会話が弾んでいた。パリの女というのはどこへ行っても響きが良いようだ。しかし実は彼女、パリ出身ではない。当時は何嘘言ってるんだと思っていたが、お酒の入った初対面相手には話も盛り上がるしその位適当な感じで良いなかもしれないとメロディの適当さにも慣れてきた。
 ニュージーランド以外でも外国で出身地を聞かれると大抵住んでいる県や市の人口や土地の面積を聞かれる。しかしそんな事日本にいて聞かれたことがなかったので直ぐに数字が出てこない。そんな時に他の国の人が自国の人口や面積をさらっと答えるのを見ると、日本の事も生まれ育った場所の基本情報も知らない自分を恥じる。それから人口と土地面積とセットで国の情勢や政治、男女差別があるのかどうか、母国についてどう思っているか等定番的に聞かれる。そういった類の話は友達としてこなかったので直ぐに自分の意見を主張出来ない。いつも I don't know. と言うのが恥ずかしいし自分でもがっかりしていた。
 各々自己紹介が済むとアメリカ人の男が自分の家を見せてきて何やら自慢している様だった。年越しが終わったら皆んなで家に来ないかと誘っている。こんな見ず知らずの人の家に夜中行くのは嫌だ。私は相当警戒していたがメロディはノリノリだった。メロディからも行こうよと誘われたが、ホームステイ先に門限があるから行かないと断ると、それを聞いたアメリカ男はガッカリ、そして呆れたように「日本人は…」と呟いた。実際門限などは無かったが、それで納得してくれるならとこちらも「そうです私は典型的な日本人です」とその皮肉を利用するかの様に堂々と断った。
 12時近くなるとバンドも盛り上がりバーの照明も暗く落とされ、年越しのカウントダウンがもうすぐ始まるという雰囲気の中、皆今か今かと中心に集まる。そしてカウントダウンが始まった。10, 9, 8, 7, …….と皆で叫ぶ。3,2,1… fuuuuuu~!!! Happy new year ~~~!!! と祝い、明かりがついたと同時に見た光景はプチカルチャーショックだった。たった30分前に出会ったばかりのニュージーランド男とメロディがキスをしていたのだ。うわぁ……とかなり引いてしまったが、これが海外かと思いながらメロディが2人の世界から帰ってくるのを気まずい気持ちで待っていた。
 とても微妙な気分の年越しと年明けとなったがやっと帰れると思うとほっとした。年明けの後は皆ちらほら解散していく。私はニュージーランド男の車でホームステイ先まで送ってもらい、メロディはそのまま彼らと共に去っていった。
 後日学校でメロディに会った時どうだったと聞いたら楽しかったよと言っていた。しかし時計を忘れたから取りに行かなきゃと言っていた。だがその後は彼らと連絡はとっていないらしい。
 海外のパーティーってやつを味わったが、この先もパーティーは好きにならないなと確信した日であった。

つづく


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