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10秒で読める小説

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100作書けたので、次の目標は150作!ってことでボチボチ書いていきます。
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2022年8月の記事一覧

【10秒で読める小説】人の話はちゃんと聞こうね

【10秒で読める小説】人の話はちゃんと聞こうね

娘がテレビアニメのドラえもんに夢中になっている隙に、小声で夫に相談した。
「娘が友達にお金を貸して、返してもらえないらしいのよ」
しかし夫はスマホ片手にうわの空。
思わずイラッとして声を荒げる。

「ねぇ、聞いてるの?」

「聞いてるよ、娘がスモールライト貸したって話だろ!」

いや、それテレビ混じっとる。

【10秒で読める小説】ドリフかよ

【10秒で読める小説】ドリフかよ

高校最後の夏休みが終わる…。
トキメキも胸キュンも胸騒ぎも、何もなく終わるのはいやだ。でも陰キャの俺に出来るのは、神頼みくらいだ。
近所の神社へ行って手を合わせた。

「夏の最後に、特大のインパクトを下さい」

神社の前の鈴を力いっぱい振ると、鈴が頭の上に落ちてきた。

【10秒で読める小説】犯人

【10秒で読める小説】犯人

「あの名作ミステリ買ったよ」
夫に言うと
「あー、アレね。まさか犯人が○○だったとはね」
夫はあっさりと犯人を言いやがった。
「ちょっと!買ったとは言ったけど、読んだとは言ってないでしょうが」
私はそばにあった花瓶を振り上げた。

刑事「それが今回の犯行の動機ですか」

【10秒で読める小説】苦手

【10秒で読める小説】苦手

タバコやギャンブルする男の人は苦手なの、と私が言うと
「わかる、私も苦手」と友人が賛同してくれたので勢いづいて、
運転中口が悪くなったり、寝起きに機嫌悪かったり、トイレで漫画読んだりする男の人も苦手、と加える。
友人は、「まんま、あんたの彼氏じゃん」と笑った。

…なんで私の彼氏のこと、知ってる?

【10秒で読める小説】アイドル

【10秒で読める小説】アイドル

園児が46人いるから、と欅坂46の歌で発表会にダンスする事にしたら
「うちの子がセンターよ!」
「いや、うちの子よ」
と保護者から要望が殺到した。

総選挙で決めようとも言われたけど、全員、同票になるに決まってる。

「仕方がない」
保育士の私がセンターに立ってキレッキレのダンスを披露したった。

【10秒で読める小説】AI画家

【10秒で読める小説】AI画家

AIがお題に沿って素晴らしい絵を描くらしい。

画家の俺は立つ背がなくなった。早く身を立てて恋人と結婚したいのに。

こうなったら矛盾したお題をAIに与えてSNSで晒してやる。俺は
「この世で最も美しく醜悪な人間」
と打ち込んだ。だが完成した絵を見て腰を抜かした。
恋人を描く俺の後ろ姿だったのだ。

※画像は、流行りのmidjourneyというAI絵画に
「この世で最も美しく醜悪な人間」というタイ

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【10秒で読める小説】リクエスト

【10秒で読める小説】リクエスト

未亡人になった友人が言った。

「夫が夢枕に立って言ったの。俺は天国でいい人が出来たからお前も気にせず再婚しろって──私そんな気ないのに」

「ご主人の気持ち、わかるなあ。あなたに前を向いて欲しくて優しい嘘をついたのよ」

友人は目をつり上げた。
「嘘じゃないと思うわ。最新のスイーツを仏壇に供えてくれ、なんて言ってたから。新しい女に渡す気なのよ」

【10秒で読める小説】スマート幽霊

【10秒で読める小説】スマート幽霊

老婆の霊が出るといわく付きの部屋を借りた。
初日から電灯を消される怪異が発生。

「おい電灯消すなよ!」
『ワシの名前は、おいじゃない。トメじゃ』
「OKトメちゃん、電気をつけて」
パッと電気がともる。
「OKトメちゃん、明日の天気は?」
『午後から雨じゃ、傘を忘れるな』

案外、快適生活かも?

【10秒で読める小説】推しキャラ

【10秒で読める小説】推しキャラ

「ドラゴンボール、出始めの頃は髪を三つ編みにあんでて、赤いリボンつけてて、すごく良かった」

と息子と、その友達が話している。
「あー初期のブルマか」
と思いつつ、口は出さないでいると

「サイボーグになったら、イマイチだった」

タオパイパイの話だった。

【10秒で読める小説】秘密にしてたけど

【10秒で読める小説】秘密にしてたけど

「お前に言わなくちゃならない事がある。いい話と悪い話、どっちから聞く?」
夫が尋ねてきた。
「じゃ、いい方から」
「昨日、元気な男の子が誕生した。俺の子だ」

それ、いい話か?
「悪い話っていうのはさ…」
「もう、聞かなくてもわかるよ」
私はため息をついて、口を開いた。
「正直に話してくれたお返しに、私もあなたに隠してた事を話すね。あなた、種無しなの」

【10秒で読める小説】帰還

【10秒で読める小説】帰還

「ただいまー」
初老の男性が上がり込んできた。
「あの、どちら様で?」
「あれ?ここじゃなかったか。でも、子孫の新しい住所知らないから、ここに二、三日お邪魔するよ」

あ、前の住人か。この家、中古で買ったからなぁ。
私は茄子と胡瓜で精霊馬を作って手を合わせた。「早くお帰り下さい」