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エッセイ

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#つぶやき

記憶に溶けていきそうな夜

記憶に溶けていきそうな夜

玄関を開けると、母がランタンを持って佇んでいた。

初夏の匂いがする。
この匂い、東京では決して嗅ぎえない。
だから、正確には初夏の地元の匂い。

母のそばに駆け寄り、歩く。
時々たわいもない言葉を交わす。黙ることもある。

空。やっぱり地元の空は一味違う。
青と紫を溶かしたような色。
西の空にはまだ明るさが尾を引いている。東の地平線近くは闇が迫っている。
巨大な雲が、その隙間から模様を描いて

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コンプレックスからの脱却

コンプレックスからの脱却

大学生(または同級生間)の、あのうるさくて軽いノリが大の苦手で、学歴や趣味が同じ仲間が集まっている場所に行ってもなお、そういうノリにノレる人たちが多くいて、私はそんなチャラチャラした輪の中でただ苦笑いするしかなくて、そうすると周りの人たちが腫れ物を触るように私を扱い始める、あの空気が嫌で嫌で仕方ない。

私は一時期私の真面目さを心底嫌った。軽い冗談を言ったり、友達の冗談を大きな声で笑い飛ばすという

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竹下通り〜表参道〜キャットストリートの洗礼

竹下通り〜表参道〜キャットストリートの洗礼

JR原宿駅の改札を抜けて、若干年齢層の低い人混みに揉まれながら竹下通りを歩く。大通りに出ると車線に沿って右に曲がり、表参道に出る。カップルや外国人やコスプレイヤーたちと一緒に信号を渡った後、都会的なウィンドウショッピングを楽しむ。キディランドの横を曲がってお洒落なキャットストリートを進む。そのまま渋谷駅を目指して歩く。

『東京という街を浴びるための散歩道→目当ての買い物をするための散歩道→ストレ

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セキセイインコと和解した話

セキセイインコと和解した話

私が人生で最初に"魂"の存在を感じたのは、小学1年生の時。
私が生まれる前から両親が飼っていた、一羽のセキセイインコが亡くなったときだ。

私はインコのぴーちゃんに嫉妬されていた。
私が生まれる前、家族の主役はぴーちゃんだった。首元まで鮮やかな青色をしたオパーリンの女の子。鳥好きの父と笑い上戸の母の間で愛されて、きっと幸福だっただろう。
でも、私が誕生した途端、2人の関心はぴーちゃんではなく私

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