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麻衣
2020年4月5日 00:15
玄関を開けると、母がランタンを持って佇んでいた。初夏の匂いがする。この匂い、東京では決して嗅ぎえない。だから、正確には初夏の地元の匂い。母のそばに駆け寄り、歩く。時々たわいもない言葉を交わす。黙ることもある。 空。やっぱり地元の空は一味違う。青と紫を溶かしたような色。西の空にはまだ明るさが尾を引いている。東の地平線近くは闇が迫っている。巨大な雲が、その隙間から模様を描いて
2019年5月21日 23:05
大学生(または同級生間)の、あのうるさくて軽いノリが大の苦手で、学歴や趣味が同じ仲間が集まっている場所に行ってもなお、そういうノリにノレる人たちが多くいて、私はそんなチャラチャラした輪の中でただ苦笑いするしかなくて、そうすると周りの人たちが腫れ物を触るように私を扱い始める、あの空気が嫌で嫌で仕方ない。私は一時期私の真面目さを心底嫌った。軽い冗談を言ったり、友達の冗談を大きな声で笑い飛ばすという
2019年2月2日 03:25
JR原宿駅の改札を抜けて、若干年齢層の低い人混みに揉まれながら竹下通りを歩く。大通りに出ると車線に沿って右に曲がり、表参道に出る。カップルや外国人やコスプレイヤーたちと一緒に信号を渡った後、都会的なウィンドウショッピングを楽しむ。キディランドの横を曲がってお洒落なキャットストリートを進む。そのまま渋谷駅を目指して歩く。『東京という街を浴びるための散歩道→目当ての買い物をするための散歩道→ストレ
2019年2月4日 16:39
私が人生で最初に"魂"の存在を感じたのは、小学1年生の時。 私が生まれる前から両親が飼っていた、一羽のセキセイインコが亡くなったときだ。 私はインコのぴーちゃんに嫉妬されていた。私が生まれる前、家族の主役はぴーちゃんだった。首元まで鮮やかな青色をしたオパーリンの女の子。鳥好きの父と笑い上戸の母の間で愛されて、きっと幸福だっただろう。でも、私が誕生した途端、2人の関心はぴーちゃんではなく私