週刊少年松山洋_タイトル_修正

版権タイトルとオリジナルを作る時の難易度の違い

「いわゆるキャラクター版権をお預かりして作る(『NARUTO-ナルト-』などの)版権タイトルを開発する時と、『.hack』や『ソラトロボ』『アスラズラース』などのオリジナルのゲームソフトを作る時ってどちらが難しいですか?」

という質問をよくいただきます。

先に答えを言ってしまうと“全く同じ”です。

質問者の多くが“え?キャラクター版権の方が簡単でしょ?デザインとかストーリーが決まってるわけだし”というリアクションをされますが、実は全然そんなこと(簡単なわけでは)ありません。

順に解説すると

キャラクター版権タイトルの難易度

確かにデザインやストーリーは原作ですでに描かれています。が、やはりそれはあくまで原作のモノ。ゲームタイトルとして開発する時点でキャラクターの三面図も新たに描き起こします。その上でそのゲーム機で動かすことができる最適なポリゴン数に合わせてデザイン&モデリング制作を行います。

例えばナルトの場合は顔と手の指に多めにポリゴンを割きます。顔は表情の演技がある為。そして手の指は作品の性質上、印を結ぶ表現が多いのでおのずと手のアップが注目されることになる為です。

髪の毛のツンツンした表現もどれくらいの“束感”にすればどの角度から見てもナルトのあの髪のシルエットになるのかを調整していきます。

ストーリーもゲーム用の脚本として新たに書き起こします。原作のストーリーはあくまで漫画として表現されたネームなので、ゲームの(システムにもよりますが)遊びの中で自然と自分がプレイしながらストーリーに没入できるように大幅な修正が入ります。(もちろん原作者や版元の監修を受けます)

またキャラクター版権タイトルを手掛ける上で最も難易度が高いのが“ファンの期待に応えること”です。すでに漫画原作やアニメがある場合では特に“お客様の中にすでに先入観やイメージが出来上がっている”ことが多いのです。自分の中では“このキャラはこんな動き方はしない!”とかですね。それらのイメージを壊すことなく新しい感動も作り出さなければならないので毎回最も悩みながら制作を進めています。

美術だってそうですよ。“この町ってこんなにスカスカしてないよね?”とか思われては絶対にいけないので忠実に再現することに尽力します。

一番難しいのはそれぞれの“お客様の頭の中にあるイメージを再現する”ということですね。

オリジナルタイトルの難易度

版権タイトルと比べると“全ての要素を自分たちで決められる”というところが利点。であるのと同時にそれこそが一番の難易度だったりもします。全てを自分たちで決められるということは同時に“どこがゴールなのかが不明瞭だといつまでたっても決まらない”ということ。デザイン・ストーリー・システム・音楽・声に至るまで全ての要素が明確な答えを最初から持ち合わせているわけではありません。

ましてや現在のゲーム開発は非常に巨大なプロジェクトになりがちなので段階を持たせることが多いです。プリプロダクションと呼ばれる試作段階も3段階も4段階も設定したりします。その都度システムを組み上げながら仕様が変更されます。その度にストーリーも修正を加えていきます。その繰り返し。

もちろんタイトルの現場監督であるディレクターの頭の中に明確なビジョンがあることが大前提ではありますが、それでもやっぱりみんな人間であって神様ではありません。ディレクターの頭の中でいくら“こうだ!”って思い描いていてもそれを形にできるデザイナーやプログラマーがいないと絶対に実現はできません。

ディレクターは“それを組み上げた先にどんな面白さや気持ち良さが待っているのか”を作る前にそれぞれのスタッフに理解させて同じ気持ちで制作をやってもらわなければなりません。

この“ゼロから伝える難しさ”こそがオリジナルタイトルの一番の難易度かもしれません。

*****

このようにゲーム開発は非常に多くの要素が複雑に絡み合った『総合エンターテインメント』です。

キャラクター版権タイトルもオリジナルタイトルもどっちも同じくらい制作は大変である、ということですね。

では後半部分は私がよく学生さんにする質問とその答えを紹介します。

「例えばニンテンドー3DSのゲームタイトルを15人のスタッフで1年かけて開発するチームと、プレイステーション4のゲームタイトルを100人のスタッフで3年かけて開発するチームがあったとして。どちらのチームのほうが大変だと思いますか?」

もうわかりましたか?

答えはこちらです。

N3DSで15人×1年のプロジェクトと、PS4で100人×3年のプロジェクトはどっちの開発が大変?

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