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【陶芸粘土と九谷焼和絵具で作る「みずのいきもの」】寺田ひかり インタビュー

寺田ひかり個展「みずのいきもの アカサタナ編」を、2024年5月29日(水) – 6月9日(日)の期間にピカレスクギャラリーで開催いたします。

今回は、寺田ひかりさんにご自身のことや制作エピソード、今回展示される作品についてインタビューしました。ぜひお楽しみください。


自己紹介をお願いします。

子どもの頃から、絵を描いたりものを作ったりするのが好きでした。歳を重ねるうちに、平面より立体作品のほうが自分に向いているなあと感じるようになり、大学で出会った粘土での造形、陶芸の道に進むことになりました。

その後、結婚や子育てをする中で制作するというバランスに、時には悩みながら細く長く続けてきて、振り返れば30年あまり陶芸と付き合っていることとなりました。今は母の介護をしながらの制作になっております(笑)。

もしかしたら、生活との2本レールがあってこそ、制作を続けることができたのかもしれません。

現在の作品の世界観が生まれたきっかけを教えてください。

最初のきっかけは、高校の文化祭です。紙粘土の人形販売が好評だったことが嬉しくて、将来自分の作ったものを売って生活できたらいいなと思いました。

その後陶芸を学ぶ中で、いくつかの気づきがありました。轆轤(ろくろ)での食器づくりや型起こしの技法より、手びねりで形づくりをするほうが楽しかったこと。アールヌーヴォーや縄文土器のような有機的な造形が好きだったこと。美しいを追求したものより少し不格好でも面白いもの、老若男女問わず見てくださるかたの笑顔をひきだせるものを作りたいと思ったことで、世界観が出来上がってきた気がします。

現在使用している素材を選んだ理由を教えてください。

陶芸粘土での形づくりには、「焼く」という工程に耐えられるかという制約が常に付きまといます。例えば足の細いものだと、焼いたら窯の中で倒れます。また、大きなものでも異素材の心材は、焼いて変質するため使うことはできません。

しかし、その制約のなかでどんなかたちだと大丈夫かを考えて作っていくことで、デフォルメされたかたちになったり、独特の面白いものが出来上がります。

私は石川県で陶芸を学んだので、九谷焼和絵具(上絵具)は、自然と装飾に取り入れることになりました。ガラス質の透明感ある色彩なので、土の色によって見える表情が変わること、「盛り絵の具」と言われるように盛る厚みによって色の濃淡が出ることなど、奥深いものです。

陶芸作品は最後は窯に委ねて出来上がるもので、予想に行きつかない仕上がりになってしまうこともあれば、思った以上の仕上がりになることもあり、いつも答えが違うところが魅力でもあります。

普段、何からインスピレーションを受けていますか?

初めはなんとなく気になっているものや、誰かに「こんなものはつくらないの?」と聞かれたことを基に粘土を触っていくうちに、連想ゲームのようにして次に作る形が浮かんできて、幾つかの作品に派生していくという感じです。

つくろうとするモチーフへの自分の偏ったイメージを大事にしたいと考えています。例えば動物モチーフの作品をつくるときは、先に動物のデッサンをするのではなく自分が連想するイメージ先行させてから、あとで実物や図鑑の動物でかたちを確認する作業をします。そこでもう一度形を練り直すこともあります。

影響を受けたアーティストや、作品はありますか?

形の面白さという点では、名のなき人ひとがつくった縄文土器や土偶、埴輪があげられます。

斬新な視点と技巧という点では尾形光琳、葛飾北斎などの作家作品です。

自分の制作に迷っているとき、シューマンの「芸術家の使命とは人の心に光をあてることである」という言葉にはっと気付かされました。そのことを忘れずにいたいと思います。

これからどんな作品を作りたいですか?

今回は「みずのいきもの」という括りで新しいアイデアが浮かんだので、そこから派生したものを増やしていこうかと考えています。今回と同じモチーフで大きさや装飾をかえたり、違う名前のものをピックアップしたり、ハマヤラワ編にも繋げていけたらいいですね。

その他は毎年干支モチーフの作品をつくるので、今年年末にかけてはヘビの作品に取り組みます。

ー ご出展いただく作品のコンセプトを教えていただけますか?

【タ】タツノオトシゴ

タツノオトシゴは水族館で見るのが楽しみな生き物のひとつです。本当は「リーフィーシードラゴン」というヒラヒラがたくさん付いたタツノオトシゴが好きなのですが、焼き物という素材で立体に作るには破損しやすいそうなので、作るのは無理そうです。それで今回は、オリジナルのかわいいタツノオトシゴにしました。

タツノオトシゴはオスがお腹に育児嚢と呼ばれる袋を持って子育てをすることから、夫婦円満や子孫繁栄の象徴とされているそうで、ラブラブなハートをちりばめました(笑)。あとは浮かんでいるように見せるため、海藻をつくり、そこにくっつけてあります。海藻はカラフルにしました。

焼き物の形としては、焼いたときに倒れる可能性がある形なので、そのバランスを見極めてつくるのが難しいところでした。実際横から見たら少ししなっていたりしますが、モチーフが海藻とタツノオトシゴなので、それらしさが出てかえって良かったように思います。裏からも表からも見ることのできる作品です。

【ト】トビウオ

鮮魚売り場で新鮮なトビウオを手に入れると、ウロコの色が濃いブルーで非常にきれいなのです。ヒレは広げると半透明の扇のよう。おめめもキュート。

こちらの作品は私の想像はほとんど入れずに、本物と出会った時の感動をなるべく詰め込みました。(尾のかたちは正確でないですが)100mくらいの距離は簡単に飛ぶらしいトビウオ。小さなジェット機のイメージも少し添えています。

【ク】クラゲ「海月」

クラゲの漢字表記の一つが「海月」です。クラゲのかたちが月に見えたのか、月がクラゲに見えたのか、どっちなのでしょう。

この作品では、三日月が小さな3匹のクラゲの浮遊を見守っています。クラゲは、空か海かわからないところを漂っています。そして作品を裏から見ると月の裏の形が実は…?

何の形なのか、想像してみてくださいね。正解は実物をご覧になるか、また後でインスタグラムに画像を載せるのでご覧くださいませ。

お客様、ご来場予定の皆様に向けてメッセージをお願いいたします!

今回は、水に関するいきものをアイウエオの順にひとつずつピックアップして、自分なりの想像を膨らまして制作しました。今まで私の作品を見たことある方から、初めての出会いの方まで、いろんな視点で楽しんで頂けたらと思います。

手びねりの自由な形と九谷上絵具の絵付けの組み合わせは、一見違和感があるかもしれませんが、組み合わせの面白さを感じていただけたらと思います。

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寺田ひかりさん、たくさんの貴重なお話をありがとうございました。
皆さまはどのエピソードが心に残りましたか?

ピカレスクスタッフは、作品「【ク】クラゲ『海』」の、裏から見た月の形がとても気になります。水族館に行くと魚の形が面白くて、一つの水槽の前にずっといても飽きない…そんな経験はありませんか?(スタッフは水族館が好きなので、よくあります)
今回の個展も、水族館に遊びにきた気持ちで、じっくりと楽しめそうですね!

寺田ひかりさんの展示作品実物を一堂に鑑賞できる貴重な機会です。皆さまのお越しを、お待ちしております。

寺田ひかり個展「みずのいきもの アカサタナ編」

〈会期〉2024年5月29日(水) – 6月9日(日)
〈詳細〉https://picaresquejpn.com/teradahikari_exhibition_2024/
〈寺田ひかり 公式SNS〉
Instagram https://www.instagram.com/hikari_terada/
Blog https://blog.goo.ne.jp/hikaclay

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【基本営業日時】
*営業 水 - 日・祝 11:00 - 18:00
*定休 毎週月火
*会場 Picaresque Gallery
*住所 東京都渋谷区代々木4-54-7
*電話 070-5273-9561

■開催中&過去に開催した展示一覧
https://picaresquejpn.com/category/information/
■開催&開催予定の展示一覧
https://picaresquejpn.com/exhibition-calendar/


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