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【MPP授業感想】Digital Transformation of Governments③

WEEK 3: Measurement and metrics: recognising good or bad digitalisation when we see it何をもってDXが成功しているとみなすのか。非常に悩ましい問いだ。しかし、政府のDXが遅れている日本にとっては、先行する国々を追いかけていくためにも、適切なメルクマールを設定することが非常に重要になってくる。 講義では様々な指標が提示されたが、個人的にしっくりきたのは、政府システムがプラットフォームとして機

    • 【MPP授業感想】Housing Policy③

      Week 4: Private renting: an inferior tenure?第二次世界大戦後、住宅所有の増加や家賃の規制により、賃貸住宅市場は長期的に衰退してきたが、近年は住宅価格の上昇や生活様式の変化により、再成長の局面を迎えている。世界金融恐慌以後、安定したキャッシュを生み出す賃貸住宅の資産としての地位が相対的に高まったことで、投資家の資金も賃貸住宅市場に向かいつつある。 今回取り扱った論点で印象的であったのは、賃借人の十分な保護と商業的に成立する賃貸住宅は

      • 【MPP授業感想】Housing Policy②

        Week 3: The Homeownership Dream果たして持ち家政策を推進することに正当性はあるのか。住宅を所有することは、市民にとって、安定的な住居の確保、感情的な理由(例:「立派」な市民であることの証明)、経済的な利益(インフレによる債務価値の低減、キャピタルゲインなど)といったメリットがあり、政府としても、当時新自由主義的なトレンドに傾いていたこともあり、他の住宅政策や社会福祉政策のフェーズアウトを正当化するための理論的根拠、あるいは乗数効果を期待した経済政

        • 【MPP授業感想】Digital Transformation of Governments②

          Week 2 Transformation or reinforcement of existing systems? 今回の問題意識は、デジタル技術の導入は、改革をもたらすどころか却って既存のシステムを強化するのではないか、というもの。 政府であれ、民間企業であれ、デジタル技術は組織を通じて導入されることになるので、その組織の構造がデジタル技術のもたらす効果を規定することになる。今回読んだ論文において、政府においてこれまで真剣にデジタル化を検討してこなかった理由として、

        【MPP授業感想】Digital Transformation of Governments③

          【MPP授業感想】Digital Transformation of Governments①

          選択科目は2つ受講できるのだが、直近の記事で紹介したHousing Policyに加え、Digital Transformation of Governmentsを受講している。政府におけるデジタル化がどのような場合に上手くいき、どのような場合に失敗するのかについて、各国の事例を見ながら分析を深める科目となっている。 Week 1: Core concepts行政組織の運営に関する考え方は、ウェーバー的な伝統的官僚機構(前例主義、専門的知見、独立性)に始まり、New Pub

          【MPP授業感想】Digital Transformation of Governments①

          【MPP授業感想】Housing Policy①

          今学期は各自の関心分野を深掘りする選択科目が開講されている。私はかつて建築基準法を担当していたこともあって、住宅政策を取り扱うHousing Policyを履修することにした。 Week 2: Housing AllowancesHousing Allowances(住宅手当)は、一定の所得以下の人々に対して、住宅に関連する費用(主に家賃)を支援する制度を指す。住宅へのアクセスを担保する機能を果たしているほか、一般的な所得補助の側面も持っていることに加え、人々の流動性を高め

          【MPP授業感想】Housing Policy①

          【MPP授業感想】Generative AI as a Public Policy Tool

          昨年の話になるが、ChatGPTのような生成AIを政策立案ツールとしてどのように活用できるのかというユニークなテーマを取り扱った選択科目に参加したので、その感想を記しておきたい。 生成AIの特徴 まず、生成AIがどのように作動しているのかを理解しておく必要がある。ざっくりといえば、生成AIは意味論ではなく、構文と確率で動いている。次にどのような言葉が来るのかを予測しながら、質問に対する答えを構成していくのだ。したがって、具体性が非常に重要であり、プロンプト(生成AIに出す

          【MPP授業感想】Generative AI as a Public Policy Tool

          【MPP授業感想】Evidence for Public Policy

          感想(全体) 一般的な公共政策修士では統計学が必修科目であることが多いが、本プログラムでは、より広い文脈で政策立案をいかにエビデンスに基づき立案・実施するかを学ぶ標題の科目が必修となっている。EBPMの重要性をただ訴えるのではなく、現実の政策立案におけるEBPMの限界にも言及しており、非常に実用的かつバランスの取れた内容だと感じた。また、統計の細かい知識に立ち入るというよりは、政策立案に当たっての指針となる重要な考え方・見方を包括的に理解できる構成となっており、一行政官とし

          【MPP授業感想】Evidence for Public Policy

          【読書メモ】インパクト投資入門

          インパクト投資に関する2021年時点での状況が整理されている。印象に残った点は以下のとおり。 ・金銭的なリターンと社会的なリターンのバランスにはコントラストあり。 ・運用資産の半数が先進国への投資で、アジアが注目されている。 ・人気のセクターはエネルギー、金融サービス、食・農業。住宅、水・衛生、インフラセクターも一定程度の実績あり。 ・テクノロジーの進化、アクターの多様化、評価手法の確率によりインパクト投資が急激に進んだ。 ・Responsible exitが必要。承継先が

          【読書メモ】インパクト投資入門

          【MPP授業感想】Politics⑦

          Week 7 最後の2週間のテーマは国際政治だった。総論的な感想としては、自分が学部生の頃(約10年前!)に学んだ内容に比べると、当たり前だが昨今の厳しい国際情勢を反映したものに変化していたのが印象的だった。当時は経済的相互依存が深化、民主主義国家が増加していくことで大規模な軍事紛争は抑制されるはずだという見立てだった(私はそういうものかなあと能天気に聞いていた)が、悲しいことにこの予測が的中することはなかった。当時から政治学という学問に魅力を感じていなかったのは、実際に発

          【MPP授業感想】Politics⑦

          【MPP授業感想】Politics⑥

          Week 6 Social movements and Interest-group politics 今週のテーマは社会運動と利益集団。 まず利益集団に関して、自分の所属する省庁は業界団体との関係性を特に重視しているように思われ、まさに講義で扱ったRegulatory capture(支配的な産業が規制当局に影響力を行使すること)が起きているように思う。若者(だと信じたい)の一人としては、正直なぜ旧態依然とした業界の肩を持つのだろうかと感じることも多いが、おそらく内部(

          【MPP授業感想】Politics⑥

          【MPP授業感想】Politics⑤

          Week 5 (Bureaucracies) 今週のテーマは官僚制であった。政治家が官僚に裁量を意図的に与えるケースとして、①長期的な政策目標へのコミットメントの担保、②政治への批判の回避があるという。正直、日本では官僚主導が悪、政治主導が善という規範が与野党、国民で共有されており、①のような視点は生まれにくいなと感じた。また、昨今の政治主導、そしてなぜか不祥事の責任は官僚が負わされるという傾向はまさに②を言い表したもののように思われる。裁量を与えられない中で責任だけ負わさ

          【MPP授業感想】Politics⑤

          【MPP授業感想】Politics④

          かなり間隔が空いてしまったが、まずはPoliticsに関して今学期の内容を振り返りたい。 Week 4 Cleavages が今回のテーマ。この言葉、自分も政治学の講義を受けて初めて知ったのだが、日本語に訳すと、亀裂や裂け目という意味だそうだ。人種や性別といったSocial Cleavagesが存在し、その一部が政治に動員され、Political Cleavagesとして顕在化する。性別のようにそれぞれのSocial Cleavagesに共通して存在するもの(Cross-

          【MPP授業感想】Politics④

          【読書メモ】シン・日本の経営 悲観バイアスを排す

          MBAのインタビュー対策に読んだ本。ポイントを以下に記す。 ・失われた30年は単なる停滞ではなく、グローバルな技術リーダーとしての役割を模索していたと捉えられる。 ・日本企業は「舞の海戦略」を採用している。すなわち、コモディティ化した製品からディープテック事業へのピボットを図っている。(例:日立製作所) ・その結果として、日本企業は中間財の技術や生産設備の強みにフォーカスする戦略にシフトしている(「ジャパン・インサイド」)。 ・優れた日本企業に共通するのは、Profit(利

          【読書メモ】シン・日本の経営 悲観バイアスを排す

          【MPP授業感想】Politics③ほか

          The Politics of Policymaking (week3) 今週のテーマは政治制度。議院内閣制と大統領制、中央集権と地方分権といった政治制度の違いが国家の運営にどのような影響を与えるのかについて、各国の事例を見ながら議論した。最も強調されていたように思うポイントは、国内に多様な民族や階級が存在していることを前提として、そうした多様な選好をいかに集約して国内政治を安定させていくのか。この観点からすると、日本はそもそも社会的な分断が顕在化していないわけで、改めて日

          【MPP授業感想】Politics③ほか

          【MPP授業感想】Politics②ほか

          同級生の経験を聞いて 同級生が自らのライフストーリーを語るという企画が今週からスタートした(現在所属しているプログラムでは、生徒主導で様々なイベントが企画されている)。初回で話してくれたアメリカ人の女性の経験がとても考えさせられるものだったので、ここで感想も含めて記しておきたい。 彼女はアメリカ・ポートランドの高校で発生した銃乱射事件の生存者だ。そして、この事件をきっかけとしてアメリカの銃暴力に対する抗議を行っている活動家でもある。彼女は、数十万人が参加したとされるデモを

          【MPP授業感想】Politics②ほか