【読書メモ】インパクト投資入門

インパクト投資に関する2021年時点での状況が整理されている。印象に残った点は以下のとおり。

・金銭的なリターンと社会的なリターンのバランスにはコントラストあり。
・運用資産の半数が先進国への投資で、アジアが注目されている。
・人気のセクターはエネルギー、金融サービス、食・農業。住宅、水・衛生、インフラセクターも一定程度の実績あり。
・テクノロジーの進化、アクターの多様化、評価手法の確率によりインパクト投資が急激に進んだ。
・Responsible exitが必要。承継先が金銭的な価値のみならず、社会的なインパクトを理解している必要があるため。
・組織体制に注目した枠組みとして、Bコーポレーション(民間認証)、Public Benefit Corporation(法制度)が存在。例えば後者では株主以外の利害関係者を考慮した経営判断が可能となる。
・インパクト投資家は一般の投資家と同様に、課題の解決に向けたインパクト・エンゲージメントを行う。
・インパクト投資を受けている企業の例:カーボンキュア・テクノロジーズ(グリーンなコンクリ製造・開発)、ウニノミクス(ウニの蓄養事業によりウニの大量発生による環境破壊をビジネスで解決)
・政府関係の取り組み:ADB傘下のインパクトファンド、シンガポールの政府系投資ファンドであるテマセクがインパクト投資ファンドに出資
・インパクト投資を受けている企業が上場する場合には、その社会的使命から遠ざかる「ミッションドリフト」の懸念がある。
・ユニコーンと対置される概念としてゼブラ企業があり、①社会的な意義は高いが市場の成熟や開拓が必要なビジネス②マーケットがニッチ③利害関係者を重視した経営という特徴を持つ。コミュニティ・エグジットという手法もある。
・包括的なリソースとしては、GIINの「年次インパクト投資家調査」、GSG国内諮問委員会のアンケート結果がある。

インパクト投資に関して今後理解を深めたい点は以下のとおり。

・インフラ・モビリティ分野ではどのような活用が考えられるのか。例えば、ビジネスとして成立が難しいとされている途上国におけるインフラプロジェクト(グリーンやレジリエンス関係)や地方部における交通プロジェクトへの資金源となり得ないのか。
・日本での取り組みはどの程度進んでいるのか。また、政府はどのように関わっているのか。金融庁や経産省のほか、事業官庁(農水省、厚労省、国交省等)はどのように関与しうるのか。


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