短歌の香り

短歌の師匠ミルクさんのブログ、「短歌のリズムで」よりお許しを頂いたお話や短歌を掲載して…

短歌の香り

短歌の師匠ミルクさんのブログ、「短歌のリズムで」よりお許しを頂いたお話や短歌を掲載しています。澱んで腐敗の一途を辿る歌壇とエセ歌人達、転がるように消滅へ突き進む文芸としての短歌に警鐘を鳴らしながら、まがい物ばかりの短歌の中で本物を追い求める師の深い歌の世界をご紹介いたします。

マガジン

  • 私の好きなミルクさんの歌 Vol.1

    個人的にいいなあと思ったミルクさんの素敵な歌をまとめておくものです。

記事一覧

"ただごと歌"はなぜダメなのか

 「幼児の視点を純粋な視点と勝手に変換しているようなもの、子供が見たまま、そのままを言葉にするということが無条件に尊いという幻想に囚われている」  ミルクさんの…

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私の好きなミルクさんの歌 014

 せっかくなので季節に合った歌をご紹介しておきたいと思います。 私の駄作とは比べものにならない切れ味の鋭さ、迫り来る臨場感と叙情、 師はいつでも何百歩も先を歩かれ…

短歌の香り
12日前
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「自分」をフェードアウトさせてこそ短歌(落選歌でも宝物)

  "私が見えなくなるまで希釈せよ” 本当に有り難い、素晴らしい短歌の教えです。 ですがビックリするくらい今の短歌を巡る状況からズレています。もうずっと「自分から…

短歌の香り
13日前
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私の好きなミルクさんの歌 013

 もしも人に何かを教える機会があれば、このような心持ちでなければならないということを心底感じる特別な経験でした。それが私がこの短歌を目にしたときに受けた第一印象…

短歌の香り
2週間前
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裏テーマを紐解く時間も学びのひとつ

 ミルクさんの指摘は常に的のど真ん中を射貫いているので辛辣極まりないですし、短歌を作っている99.9%の人達には耳の痛いお話ばかりでしょう。ただミルクさんは自分の偏…

短歌の香り
2週間前
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比喩を無理やりこじつける=「着想」の勘違い

 先日も京大をはじめ○○短歌会なる同人の会報誌を目にする機会がありました。 最近は多くの方が短歌雑誌の○○人詠に登場することもあって、プロの方も多く混じっておら…

短歌の香り
3週間前
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私の好きなミルクさんの歌 012

 夏が近付いて来ました。 毎日毎日、短歌に関わるということはなかなか難しいことですが、季節の変わり目や季節感のある食べ物、行事などを見聞きする度に「歌が作れない…

短歌の香り
1か月前
13

「死」に急ぐばかりの創作はなぜダメなのか

 師匠のミルクさんは、作歌において最も使ってはいけない言葉として「死」をあげられています。「亡」や「殺」なども、出来れば使わない方がよいとおっしゃいます。もちろ…

短歌の香り
2か月前
8

愚かな願いのなれの果て

・自分の短歌や境遇や信条に共鳴や共感してくれるひとがいるはずだ。 (そんな人はいません) ・誰かが見てくれて、誰かが気付いてくれて、誰かが掬って取り上げてくれるは…

短歌の香り
2か月前
4

重症患者の症例を紹介します。(現代短歌病)

本来はこちらには投稿せずにおこうと思っていたのですが、某大手サイトに書いたレビューが忖度なのか、圧力なのか、消されてしまったので、こちらに書くことにいたしました…

短歌の香り
2か月前
3

記憶の中の鮮やかさを共有する(落選歌でも宝物)

落選歌の記事が少し読まれていて驚きました。 私の記事のアクセスなど一日に片手でおつりがくる程しかないはずなのに、なぜかその何倍ものビューがあって、「まぁ記事をコ…

短歌の香り
3か月前
6

想いを留める役割を忘れない。(落選歌でも宝物)

 師匠の凄い歌ばかりでは疲れてしまうかもしれませんので、凡人である私の短歌でお茶を濁すこともお許しいただきたいと思います。 たまたま見かけたその年のNHK全国短歌…

短歌の香り
5か月前
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私の好きなミルクさんの歌 011

 まるで幻灯のようにパッと脳内に広がる景色、あまりに簡単な言葉、あまりに単純な景色、落差も驚嘆も裏切りも何もない世界、なのに心に染み渡る。それがミルクさんの歌の…

短歌の香り
7か月前
4

大切なのは読めること、ただ詠むだけなら人はいらない。

 これだけ巷にゴミのような短歌が撒き散らされると、第二のうたよみんとなって閉鎖や削除の憂き目にあうサイトや、有料化によって容量制限や強制削除を避けなければならな…

短歌の香り
8か月前
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言葉のメッキが剥がれたら(上辺だけの言葉、上辺だけの短歌)

短歌の天才と宣う方の本をちらっと読んでみました。 あなたのための・・・とか言う、もったいぶった歌を作られる歌人です。 私は凡才なので何もかも教えて頂く立場なのです…

短歌の香り
9か月前
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「一読瞭然」「一首自立」という流儀

 ミルクさんの歌を読んでいていつも感じるのは、とても解りやすい違和感です。 「どこかで読んだ、目にした、聞いた、ことがない言葉や表現」で常に構成されていて既視感…

短歌の香り
9か月前
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"ただごと歌"はなぜダメなのか

 「幼児の視点を純粋な視点と勝手に変換しているようなもの、子供が見たまま、そのままを言葉にするということが無条件に尊いという幻想に囚われている」  ミルクさんの感想はいつも的確で辛辣ですが、この”ただごと歌”に対する考えも痛い所を突いているようです。 ただごと歌と言えば奥村晃作さんが最も有名でしょう。 ボールペンはミツビシがよくミツビシのボールペン買ひに文具店に行く 奥村晃作『鴇色の足』 本阿弥書店 この歌は「ただごと歌」などではない!と声高に言われる方もいらっしゃるよ

私の好きなミルクさんの歌 014

 せっかくなので季節に合った歌をご紹介しておきたいと思います。 私の駄作とは比べものにならない切れ味の鋭さ、迫り来る臨場感と叙情、 師はいつでも何百歩も先を歩かれています。 「夕立は明日の予告」だなんて、ビリビリ痺れます。 確かに映画の予告編のような凝縮性とジェットコースターのようなスペクタクル感を激しい夕立からは感じますね。 そして最後は明日への希望の証である虹。ベタなんです。ベタベタなんですけれど、それがミルクさんの優しさなのだと思います。 誰の状況にも寄り添い、「それで

「自分」をフェードアウトさせてこそ短歌(落選歌でも宝物)

  "私が見えなくなるまで希釈せよ” 本当に有り難い、素晴らしい短歌の教えです。 ですがビックリするくらい今の短歌を巡る状況からズレています。もうずっと「自分から離れろ、自分を切り離せ」とおっしゃっているミルクさんとは真逆で、世の中の短歌の99.9%は私に固着した醜いものばかりになってしまいました。ミルクさんは何度も何度も、 「このままでは短歌そのものが消滅する」と警告しているのに、本当にわかっていないポンコツばかりで呆れます。大昔からあるのに無くなるはずが無いと馬鹿馬鹿

私の好きなミルクさんの歌 013

 もしも人に何かを教える機会があれば、このような心持ちでなければならないということを心底感じる特別な経験でした。それが私がこの短歌を目にしたときに受けた第一印象です。  0点の答案用紙に頭を抱える担任教師の姿が想像されます。頭ごなしに叱ることは簡単に出来ても、励ましをもって接したり、言葉を掛けることには多くのためらいや躊躇が頭をよぎり、うまく場をおさめることは容易ではないでしょう。 しかしその教師は数十秒後に真っ青なペンを取り出し、0の横に「等級」と大きく書き足しました。答

裏テーマを紐解く時間も学びのひとつ

 ミルクさんの指摘は常に的のど真ん中を射貫いているので辛辣極まりないですし、短歌を作っている99.9%の人達には耳の痛いお話ばかりでしょう。ただミルクさんは自分の偏った正義感や主義主張を押しつけて何もかもを自分と同じ方向に向かせたいと考えているわけではないと思います。今まで多くのミルクさんの短歌を読解してきましたが、それらは一様に「裏テーマ」なる問いかけを孕んでいました。ミルクさんの着想は多くの場合が問題提起やこれで良いのかという問いかけであり、そこまでを持って短歌の役割であ

比喩を無理やりこじつける=「着想」の勘違い

 先日も京大をはじめ○○短歌会なる同人の会報誌を目にする機会がありました。 最近は多くの方が短歌雑誌の○○人詠に登場することもあって、プロの方も多く混じっておられるようですが、いやはや中身は以前としてすっからかんのままで、とても師匠に「読んでみて下さい」とはオススメできない代物ばかりでした。 小学生や中学生は時に大人もハッとさせるような発見を導く歌がありますが、高校生や大学生ともなればもう方法論に長けた頭で何でもショートカットして時短で済ませることに慣れてしまって、肝心の所に

私の好きなミルクさんの歌 012

 夏が近付いて来ました。 毎日毎日、短歌に関わるということはなかなか難しいことですが、季節の変わり目や季節感のある食べ物、行事などを見聞きする度に「歌が作れないものか?」「歌にして残して置けないものか?」と自問自答する始末。心がけてはいるものの、弱い力をずっとかけ続けるというトレーニングが一番難しいということを身に沁みて感じております。  以前ある7月の日に、ミルクさんがメールに紛れ込ませた一つの歌がとても印象に残っていて、今回はその歌をご紹介したいと思います。  not

「死」に急ぐばかりの創作はなぜダメなのか

 師匠のミルクさんは、作歌において最も使ってはいけない言葉として「死」をあげられています。「亡」や「殺」なども、出来れば使わない方がよいとおっしゃいます。もちろん、単に暗いとか縁起が悪いとか、そのような単純な理由ではありません。  ミルクさんは「死」ほど自分の身近にあって、簡単で単純で幼稚で明確な落差言葉はないとおっしゃっています。落差の階段があるのなら、一歩目は「死」です。同じく「亡」や「殺」も二歩目三歩目という同じような位置でしょう。どちらかと言えば「絶対に使うな!」と

愚かな願いのなれの果て

・自分の短歌や境遇や信条に共鳴や共感してくれるひとがいるはずだ。 (そんな人はいません) ・誰かが見てくれて、誰かが気付いてくれて、誰かが掬って取り上げてくれるはずだ。 (そんな人もいません) ・みんなと同じような短歌をつくって投稿していれば、中には応援してくれる人やサポートしてくれる人がいるはずだ。 (そんな人もぜーーーーーんぜんいません) ・たくさん短歌を作っていけば、たまには素晴らしい短歌ができるはずだ。 (そんなに甘くもありません) ・作り溜めた短歌を本にすれば、きっ

重症患者の症例を紹介します。(現代短歌病)

本来はこちらには投稿せずにおこうと思っていたのですが、某大手サイトに書いたレビューが忖度なのか、圧力なのか、消されてしまったので、こちらに書くことにいたしました。もはや歌人も出版社も書店も、今の腐ったヒエラルキを守ることに必死なようですが、ダメなものはどうやってもダメです。辛辣なレビューに耐えられないようなものは、まがい物だと自白しているようなものなのです。 川野里子さん 「ウォーターリリー」 短歌研究社 実はこの歌集、面白いです。 だって師匠のミルクさんが「ダメ」と言わ

記憶の中の鮮やかさを共有する(落選歌でも宝物)

落選歌の記事が少し読まれていて驚きました。 私の記事のアクセスなど一日に片手でおつりがくる程しかないはずなのに、なぜかその何倍ものビューがあって、「まぁ記事をコピペして学習するための巡回ロボットの機械的なアクセスだろう」くらいに思っていました。 けれども選者や選歌の物差しとして落選歌ほど明確なものはないのではないかとも感じていました。「選ばれる」「選ばれない」の線引きがどのようにされているのか全く明確な指針のない中では、世に出ることのない落選歌の方が逆説的に明確な指針になると

想いを留める役割を忘れない。(落選歌でも宝物)

 師匠の凄い歌ばかりでは疲れてしまうかもしれませんので、凡人である私の短歌でお茶を濁すこともお許しいただきたいと思います。 たまたま見かけたその年のNHK全国短歌大会のお題が「平」だったので、少し前に作ってあった短歌を応募してみました。選ばれるとか選ばれないとか、そのようなレベルのチャレンジではなくて、ただ入選歌集が欲しかったので適当な歌を選んで出しました。 ちなみに一応出す前に、師匠には見て頂かないと・・・と思い相談しておりまして、「たぶん選には選ばれないと思いますが、

私の好きなミルクさんの歌 011

 まるで幻灯のようにパッと脳内に広がる景色、あまりに簡単な言葉、あまりに単純な景色、落差も驚嘆も裏切りも何もない世界、なのに心に染み渡る。それがミルクさんの歌の真骨頂です。 誰しもの心に同じ景色を描き出すことの難しさを、ミルクさんはいとも簡単にやってのけます。 簡単な言葉で思考の奥深くに潜り込むことを常に追求されているからこそ、すべてのモチーフが意味を持ち、読者に静かに語りかけてくるのです。 たわわに実った柿の木、そして実を落とし冬枯れとなった柿の木、夕暮れによって影絵と

大切なのは読めること、ただ詠むだけなら人はいらない。

 これだけ巷にゴミのような短歌が撒き散らされると、第二のうたよみんとなって閉鎖や削除の憂き目にあうサイトや、有料化によって容量制限や強制削除を避けなければならないという時代はそう遠くないと思われます。 そもそも「読める」人が圧倒的に少ないことが、文芸の中で短歌を停滞させている根本の原因なのですが、このnoteで何度もお話しているように、プロの歌人の中にも読める人はごくごく僅かしかいらっしゃいません。さらに●●賞とか●●歌壇とか多数の方が応募する系の短歌は、そもそも選者に読ま

言葉のメッキが剥がれたら(上辺だけの言葉、上辺だけの短歌)

短歌の天才と宣う方の本をちらっと読んでみました。 あなたのための・・・とか言う、もったいぶった歌を作られる歌人です。 私は凡才なので何もかも教えて頂く立場なのですが、それにしてもミルクさんの教えと真っ向からぶつかるようなまるで真逆のことばかり書いてあって、一周回って面白いとさえ思いました。 この方の短歌は言葉や気持ちの上澄み(綺麗だと信じている部分)ばかりを掬って歌にされているようで、すばらしくキラキラしていて第一印象の良いものばかりが目立ちます。 (本物の短歌)を目にして

「一読瞭然」「一首自立」という流儀

 ミルクさんの歌を読んでいていつも感じるのは、とても解りやすい違和感です。 「どこかで読んだ、目にした、聞いた、ことがない言葉や表現」で常に構成されていて既視感や既読感に苛まれることは全くありません。 そもそもそれがミルクさんのスタイルであり、ミルクさんの歌たらしめる根幹でもあると思うのですが、有名な歌人達の名歌、秀歌と言われる歌の中にも「キラーフレーズ」が簡単に他の言葉に置き換わってしまうような安っぽい作り方が多く見られます。 連作に気を取られてその一首に力が入らないことも