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私の好きなミルクさんの歌 014

 せっかくなので季節に合った歌をご紹介しておきたいと思います。
私の駄作とは比べものにならない切れ味の鋭さ、迫り来る臨場感と叙情、
師はいつでも何百歩も先を歩かれています。
「夕立は明日の予告」だなんて、ビリビリ痺れます。
確かに映画の予告編のような凝縮性とジェットコースターのようなスペクタクル感を激しい夕立からは感じますね。
そして最後は明日への希望の証である虹。ベタなんです。ベタベタなんですけれど、それがミルクさんの優しさなのだと思います。
誰の状況にも寄り添い、「それでも虹を信じて明日またがんばろう」というエールとして歌を完成させているのです。

・夕立は明日の予告激しさを詰め込んだあと虹を掲げて

 また、タイトル歌ではないのですが、他にも夕立を詠った歌でご紹介したいものがあります。

・覆い来る遠き雷雲 六月の珠よ転がれ一面の田に

これは先の一首とはまた味わいの異なる歌で梅雨の始まりを詠われたものですが、
「六月の珠」という例えが何より効いています。
「夕立は明日の予告」とか「六月の珠よ転がれ」とか、一体どうすればこんな凄まじい比喩を思いつくのか検討もつきませんが、とにかく凄いとしか言いようがありません。

ミルクさんの歌ではこのように時系列の情景がかなりフォーカスのはっきりした形で描かれるものが多いのですが、それにしてもその場に立っているが如くのリアリティには驚きを隠せません。点描のような緻密さと、水彩のようなシズル感覚、そして版画のような明暗と手触りを31音の中に組み込んだ、絵画か写真のような歌と言えるでしょう。

あらためて言いますが、ミルクさんは歌歴10年に満たない素人です。
誰にも師事しなくても、何処にも所属しなくても、良い歌は詠めるということを体現されているスーパー素人なのです。

短歌のことを「誰でもホームランが打てる文芸」と例える方もいらっしゃいますが、私の見る限り現在の歌壇のラッキーゾーンはセカンドベースの後ろくらいな位置だと思います。本当に子供でもだれでもホームランが打てるでしょう。そんなものをホームランだと言っているから、いつまで経ってもゴミのような投稿歌が減らないのでしょう。
ミルクさんのように、少なくともプロの歌人は推定飛距離150mの場外へ打ち込んで欲しいものです。
それでこそ歌人なのであり、それでこそ短歌を短歌たらしめるものだからだと思うのです。

ミルクさん 短歌のリズムで  https://rhythm57577.blog.shinobi.jp/