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Fly a Letter to the wind~カノン
クイズ番組を観ていた。
【次の人物の名前を答えよ】
「これはショパンだべ…」
「いや、シューベルトじゃない?」
「いや、ショパンだって」
「シューベルトだね」
【正解はメンデルスゾーン】
「………いや、誰だよ!」
「ちょっと初めて聞く名前だったね…」
「代表曲なんだよっつー話だよ!」
「これは難易度Sの問題だったね」
「うん。でもこういうのサラっと答えたらカッコイイんだろうな
Fly a Letter to the Wind~紙飛行機
翼がいなくなってから1年が経とうとしていた。
心の傷を癒すのは時間だとはよく言うが、時間ってのは本当に優秀なもので二度と立ち直れないと思っていた俺も少しずつ歩み進めることができていた。
窓辺で燃えるように咲く赤いシクラメン。
結構神経使ったけど…ちゃんと咲かせたよ。
テーブルの上、隣同士に並ぶ航空機の模型とドラ○もんの目覚まし時計。
その前方にA4の真っ白い用紙を置き、俺はペンを取った。
Fly a Letter to the Wind~別れ
年末になると翼は毎年のように実家に帰省していた。
俺は実家に帰ったり、彼女のいない友達と過ごしたりとその年によって適当に過ごしていた。
少し変だと感じたのはカウントダウンを終え新年が明けてから。
別に翼とはほとんどLINEとかそういうのはなかった。
何せ隣同士に住んでるからね。
でも『明けましておめでとう』的なメッセージは過去2年すぐに来ていた。
その時俺は、友達と飲みながら騒いでたん
Fly a Letter to the Wind~マフラー
翼と出会ってから迎えた三度目の誕生日。
1年目は航空機の模型。
2年目はドラ○もんの目覚まし時計。
大人に渡すプレゼントとしてはどうなんだろうってのが本音ではあったが、祝ってくれる行為そのものが嬉しいわけで。
やっぱり今年もワクワクしている俺がいた。
夜、インターホンが鳴る。
俺の家のインターホンの9割は翼が鳴らすものだった。
ドアを開ける。
ほらな?
やっぱり翼だった。
しか
Fly a Letter to the Wind~空と海
翼とはアパートの隣同士に住む間柄といっても別に頻繁に会ってたわけではない。
仕事の時間のズレもあるしそれぞれの付き合いだってある。
本当に何となくのタイミングで週に一度や二度会うようなもんだ。
まぁ、主に俺の部屋の明かりを見て翼が気まぐれに押しかけてくるってのがパターンといえばパターンだったのだが…。
しかし、それがパターン化されてくるとこっちも知らず知らずのうちに待つようになり、逆に来な
Fly a Letter to the Wind ~プレゼント
「そういや俺、今日誕生日なんだよね…」
「えっ?そうなの?早く言ってよ!なんも準備してないし!」
「いや、別にいいよ。そういうつもりで言ったわけじゃないからw」
「じゃあ1週間くらい過ぎてから言ってよ!」
「はっ?」
「今日誕生日って言ってる人を目の前に何もしないのも嫌じゃん!」
「いや、本人が良いっつってんだから別に良いじゃんw」
「良くないし!ちょっと待ってて!」
そう言うと翼
Fly a Letter to the Wind~シクラメン
「あっ…」
そう言って彼女──
翼はスーパーの一角にある花屋の前で立ち止まった。
ちなみに彼女といっても恋人なわけではない。
そんな、鉢花に歩み寄る翼の様子を見て俺は半ば呆れ口調で言った。
「お前、ホント好きだな?その花…」
「え?」
「いや、去年も一昨年も同じことしてっからね?」
そう、翼のこの行為は
もう毎年恒例になりかけている。
「そうだっけ?」
わざとらしい返事をして
微
桜の木の下で出逢った女の話~YouTube
Another Story
桜の木の下で出逢った女の話~最終話
架純がいなくなって
そして俺の高校生活は始まった。
同じ中学校出身の奴は一人もいなかったが
すっかり人付き合いから遠ざかっていた俺は
なかなか友達もできずにいた。
と言っても一人が楽になっていた部分もあったし
人を寄せ付けないオーラでも出していたんだろう。
架純はというと
千葉では上手くやっているそうだ。
『もう標準語もお手のもんやで!』
と本気なのかジョークなのか分からないことを言ってい
桜の木の下で出逢った女の話~第9話
卒業式は3月13日だったと思う。
式の最中も頭に過ったのは
すべて架純との思い出だった。
架純と出会った時から今この時まで
春も夏も秋も冬も
いつだって架純の笑顔が隣にあった。
わずか一年にも満たない日々だったけれど
それが俺の中学校生活のすべてになっていた。
ホント泣きそうになったけど
とにかく必死で堪えてた。
だって他の人から見たら
“ぼっち”だった俺に何の思い入れがあって
泣いてる
桜の木の下で出逢った女の話~第8話
夏休みが明けると途端に夏の終わりを感じる。
この晩夏に押し寄せる切なさは
夕焼けのそれに似ているのかも知れない。
別に夏が好きってわけじゃないのだが
何故だか決まって感傷的になるから不思議だ。
特にこの年の夏は
架純と過ごす毎日が楽しかったってのもあったんだと思う。
9月になり、誕生日が来た。
初めて架純の家に招待され
凄まじく緊張したのを覚えてる。
架純のお母さんが
「彼氏なん?彼氏
桜の木の下で出逢った女の話~第7話
「てゆーか夏休み短くないですか?」
チャリの後ろに立ち乗りしながらぼやく架純。
「えっ、そうなの?普通じゃないの?」
「短すぎですよー!ビックリしましたもん!」
「そっちはどんくらいあったの?」
「40日くらいはあったと思いますよ?」
「マジで?一ヶ月以上もあんの!?」
お互いに軽いカルチャーショックを受けていた。
夏休み初日───
俺と架純は早速海へ向かっていた。
架純の希望
桜の木の下で出逢った女の話~第6話
ちょっとした余談になるが
7月から俺は朝刊の新聞配達をやることになった。
不正行為でバレたら
法的にもヤバかったらしいのだが
経緯を説明すると叔父…
細かく言うと母の妹の旦那さんが
新聞屋の職員だったので
もし可能なら新聞配達をやらせて欲しいと
俺は中2の頃からずっとお願いしていた。
が、今は色々と厳しくて
中学生の新聞配達は許可が降りづらいから
高校まで待てと言われていたのだ。
そこで俺は
桜の木の下で出逢った女の話 第5話
架純と一緒にいるところを
不良グループに見られた翌日。
架純には何かあったら
とにかく俺に一報入れるようにと
念を押してはいたが
特に何の音沙汰もなく放課後を迎えた。
そしてその放課後に事は動く。
いつもは真っ先に帰宅する俺だが
この日は少し学校に留まることに。
架純に『何か変わったことあった?』
とメールし、返事を待ってから帰ろうと思っていた。
掃除も終わり、誰もいなくなった教室の
片
桜の木の下で出逢った女の話 第4話
5月下旬。
クソつまらない修学旅行を終えて最初の土曜日、
校区の外れにある公園で架純に会った。
架純の家はこの公園の近くのようで
あと少しズレていれば違う中学校だった。
ふと思う。
もし架純が違う中学校の子ならもっと楽だったのにって。
後にこの懸念は現実になるのだが
それはまたその時に説明するとして
少し俺の修学旅行について触れとく。
ぼっちの俺はもちろん欠席したかったが
親に心配はか
桜の木の下で出逢った女の話 第3話
ゴールデンウィーク最終日の
午後3時を過ぎた頃、俺は公園へ向かった。
もちろん抵抗はあったが、
架純が『来てくれるまで待ってる』なんて言いやがるから
取りあえず待ち合わせ時間だけ決めて行くことにした。
しかし桜がピークのこの時期。
人が多い。
俺は人混みってやつが嫌いで、
いつからそうだったのかは分からないが、
やはり学校でハブられるようになってからは
ハッキリと人混みが嫌いと思えるように