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Fly a Letter to the Wind

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Fly a Letter to the Wind~シクラメン

「あっ…」

そう言って彼女──
翼はスーパーの一角にある花屋の前で立ち止まった。

ちなみに彼女といっても恋人なわけではない。

そんな、鉢花に歩み寄る翼の様子を見て俺は半ば呆れ口調で言った。

「お前、ホント好きだな?その花…」

「え?」

「いや、去年も一昨年も同じことしてっからね?」

そう、翼のこの行為は
もう毎年恒例になりかけている。

「そうだっけ?」

わざとらしい返事をして

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Fly a Letter to the Wind ~プレゼント

「そういや俺、今日誕生日なんだよね…」

「えっ?そうなの?早く言ってよ!なんも準備してないし!」

「いや、別にいいよ。そういうつもりで言ったわけじゃないからw」

「じゃあ1週間くらい過ぎてから言ってよ!」

「はっ?」

「今日誕生日って言ってる人を目の前に何もしないのも嫌じゃん!」

「いや、本人が良いっつってんだから別に良いじゃんw」

「良くないし!ちょっと待ってて!」

そう言うと翼

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Fly a Letter to the Wind~空と海

翼とはアパートの隣同士に住む間柄といっても別に頻繁に会ってたわけではない。

仕事の時間のズレもあるしそれぞれの付き合いだってある。

本当に何となくのタイミングで週に一度や二度会うようなもんだ。

まぁ、主に俺の部屋の明かりを見て翼が気まぐれに押しかけてくるってのがパターンといえばパターンだったのだが…。

しかし、それがパターン化されてくるとこっちも知らず知らずのうちに待つようになり、逆に来な

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Fly a Letter to the Wind~マフラー

翼と出会ってから迎えた三度目の誕生日。

1年目は航空機の模型。

2年目はドラ○もんの目覚まし時計。

大人に渡すプレゼントとしてはどうなんだろうってのが本音ではあったが、祝ってくれる行為そのものが嬉しいわけで。

やっぱり今年もワクワクしている俺がいた。

夜、インターホンが鳴る。

俺の家のインターホンの9割は翼が鳴らすものだった。

ドアを開ける。

ほらな?

やっぱり翼だった。

しか

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Fly a Letter to the Wind~別れ

年末になると翼は毎年のように実家に帰省していた。

俺は実家に帰ったり、彼女のいない友達と過ごしたりとその年によって適当に過ごしていた。

少し変だと感じたのはカウントダウンを終え新年が明けてから。

別に翼とはほとんどLINEとかそういうのはなかった。

何せ隣同士に住んでるからね。

でも『明けましておめでとう』的なメッセージは過去2年すぐに来ていた。

その時俺は、友達と飲みながら騒いでたん

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Fly a Letter to the Wind~紙飛行機

翼がいなくなってから1年が経とうとしていた。

心の傷を癒すのは時間だとはよく言うが、時間ってのは本当に優秀なもので二度と立ち直れないと思っていた俺も少しずつ歩み進めることができていた。

窓辺で燃えるように咲く赤いシクラメン。

結構神経使ったけど…ちゃんと咲かせたよ。

テーブルの上、隣同士に並ぶ航空機の模型とドラ○もんの目覚まし時計。

その前方にA4の真っ白い用紙を置き、俺はペンを取った。

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Fly a Letter to the wind~カノン

クイズ番組を観ていた。

【次の人物の名前を答えよ】

「これはショパンだべ…」

「いや、シューベルトじゃない?」

「いや、ショパンだって」

「シューベルトだね」

【正解はメンデルスゾーン】

「………いや、誰だよ!」

「ちょっと初めて聞く名前だったね…」

「代表曲なんだよっつー話だよ!」

「これは難易度Sの問題だったね」

「うん。でもこういうのサラっと答えたらカッコイイんだろうな

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