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桜の木の下で出逢った女の話

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桜の木の下で出逢った女の話 第1話

桜の木の下で出逢った女の話 第1話

一人暮らしに向けて荷造りをしていた時のこと。

ただの物置と化していた
机の引き出しの奥の方に可愛らしい封筒があった。

何年振りに目にしただろうか。

それは封印するかのように
目の届かないところへと追いやったもので───

忘れたくて…
でも忘れられない大切な思い出の綴じてある封筒だった。

何とも言えないドキドキに見舞われながら
その封を開ける。

そこには
一通の手紙と一枚の写真が同封され

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桜の木の下で出逢った女の話 第2話

桜の木の下で出逢った女の話 第2話

夜、メールの着信音が鳴りビクッとなった。

携帯電話なんて当時の俺には使い道などなかったが、
ウチは母子家庭で夜働く母親が
何かあった時のためにと持たせてくれていた。

電話帳に入っていたのは
母親、親戚の叔父と叔母、祖母だけという虚しさ。

そんな俺の寂しい電話帳に
この日新規登録がされたのだ。

それは数時間前の出来事。

『───私と友達になって下さい』

人間不信になって久しい俺にとっては

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桜の木の下で出逢った女の話 第3話

桜の木の下で出逢った女の話 第3話

ゴールデンウィーク最終日の
午後3時を過ぎた頃、俺は公園へ向かった。

もちろん抵抗はあったが、
架純が『来てくれるまで待ってる』なんて言いやがるから
取りあえず待ち合わせ時間だけ決めて行くことにした。

しかし桜がピークのこの時期。

人が多い。

俺は人混みってやつが嫌いで、
いつからそうだったのかは分からないが、
やはり学校でハブられるようになってからは
ハッキリと人混みが嫌いと思えるように

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桜の木の下で出逢った女の話 第4話

桜の木の下で出逢った女の話 第4話

5月下旬。

クソつまらない修学旅行を終えて最初の土曜日、
校区の外れにある公園で架純に会った。

架純の家はこの公園の近くのようで
あと少しズレていれば違う中学校だった。

ふと思う。

もし架純が違う中学校の子ならもっと楽だったのにって。

後にこの懸念は現実になるのだが
それはまたその時に説明するとして
少し俺の修学旅行について触れとく。

ぼっちの俺はもちろん欠席したかったが
親に心配はか

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桜の木の下で出逢った女の話 第5話

桜の木の下で出逢った女の話 第5話

架純と一緒にいるところを
不良グループに見られた翌日。

架純には何かあったら
とにかく俺に一報入れるようにと
念を押してはいたが
特に何の音沙汰もなく放課後を迎えた。

そしてその放課後に事は動く。

いつもは真っ先に帰宅する俺だが
この日は少し学校に留まることに。

架純に『何か変わったことあった?』
とメールし、返事を待ってから帰ろうと思っていた。

掃除も終わり、誰もいなくなった教室の

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桜の木の下で出逢った女の話~第6話

桜の木の下で出逢った女の話~第6話

ちょっとした余談になるが
7月から俺は朝刊の新聞配達をやることになった。

不正行為でバレたら
法的にもヤバかったらしいのだが
経緯を説明すると叔父…
細かく言うと母の妹の旦那さんが
新聞屋の職員だったので
もし可能なら新聞配達をやらせて欲しいと
俺は中2の頃からずっとお願いしていた。

が、今は色々と厳しくて
中学生の新聞配達は許可が降りづらいから
高校まで待てと言われていたのだ。

そこで俺は

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桜の木の下で出逢った女の話~第7話

桜の木の下で出逢った女の話~第7話

「てゆーか夏休み短くないですか?」

チャリの後ろに立ち乗りしながらぼやく架純。

「えっ、そうなの?普通じゃないの?」

「短すぎですよー!ビックリしましたもん!」

「そっちはどんくらいあったの?」

「40日くらいはあったと思いますよ?」

「マジで?一ヶ月以上もあんの!?」

お互いに軽いカルチャーショックを受けていた。

夏休み初日───

俺と架純は早速海へ向かっていた。

架純の希望

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桜の木の下で出逢った女の話~第8話

桜の木の下で出逢った女の話~第8話

夏休みが明けると途端に夏の終わりを感じる。

この晩夏に押し寄せる切なさは
夕焼けのそれに似ているのかも知れない。

別に夏が好きってわけじゃないのだが
何故だか決まって感傷的になるから不思議だ。

特にこの年の夏は
架純と過ごす毎日が楽しかったってのもあったんだと思う。

9月になり、誕生日が来た。

初めて架純の家に招待され
凄まじく緊張したのを覚えてる。

架純のお母さんが
「彼氏なん?彼氏

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桜の木の下で出逢った女の話~第9話

桜の木の下で出逢った女の話~第9話

卒業式は3月13日だったと思う。

式の最中も頭に過ったのは
すべて架純との思い出だった。

架純と出会った時から今この時まで
春も夏も秋も冬も
いつだって架純の笑顔が隣にあった。

わずか一年にも満たない日々だったけれど
それが俺の中学校生活のすべてになっていた。

ホント泣きそうになったけど
とにかく必死で堪えてた。

だって他の人から見たら
“ぼっち”だった俺に何の思い入れがあって
泣いてる

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桜の木の下で出逢った女の話~最終話

桜の木の下で出逢った女の話~最終話

架純がいなくなって
そして俺の高校生活は始まった。

同じ中学校出身の奴は一人もいなかったが
すっかり人付き合いから遠ざかっていた俺は
なかなか友達もできずにいた。

と言っても一人が楽になっていた部分もあったし
人を寄せ付けないオーラでも出していたんだろう。

架純はというと
千葉では上手くやっているそうだ。

『もう標準語もお手のもんやで!』
と本気なのかジョークなのか分からないことを言ってい

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