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【和訳】英国国防省:ウクライナ情勢報告

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英国国防省発表のウクライナ情勢評価分析の日本語訳
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【和訳】英国国防省 ウクライナ情報 25.05.2024

【和訳】英国国防省 ウクライナ情報 25.05.2024

日本語訳ロシア連邦軍参謀次長ヴァディム・シャマリン中将が、かなりの金額の賄賂を受け取った疑いで逮捕されたことが、2024年5月23日に報じられた。シャマリンは、ロシア連邦刑法第290条6項に記された罪(著しく高額な賄賂を受け取ること)に問われている。

今回の事件の前に、最近、同様に汚職容疑で逮捕されたロシア国防省高官がいる。具体的には、ティムール・イワノフ国防次官とユーリー・クズネツォフ人事総局

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【和訳】英国国防省 ウクライナ情報 24.05.2024

【和訳】英国国防省 ウクライナ情報 24.05.2024

日本語訳この一週間、ロシアはハルキウ州北部ヴォウチャンシクでの攻撃の際、ロシア正規軍とシュトルムZ部隊とともに、ロシア国防省のアフリカ軍団に属する部隊を投入している。

ロシア国防省のアフリカ軍団は2023年12月に登場した部隊で、正規軍の将兵に経験豊富な傭兵が加わって編成されており、その兵力は2,000人を超える。なお、この部隊に加わっている傭兵の多くは、かつてワグネル・グループで任務に就いてい

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【和訳】英国国防省 ウクライナ情報 23.05.2024

【和訳】英国国防省 ウクライナ情報 23.05.2024

日本語訳2024年5月19日、ウクライナ軍はロシアの港セヴァストポリに対して、長距離連携攻撃を敢行した。この攻撃が複数の片道攻撃型ドローンと複数の陸軍戦術ミサイル・システム(ATACM)が組み合わされたものであった可能性は極めて高く、その結果、カラクルト級コルベット「ツィクロン」が撃沈されたのはほぼ確実だ。

2022年以降、黒海で行動していたカリブル・ミサイル搭載カラクルト級艦艇は4隻あり、「ツ

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【和訳】英国国防省 ウクライナ情報 22.05.2024

【和訳】英国国防省 ウクライナ情報 22.05.2024

日本語訳2024年4月にウクライナは、戦争が勃発してから最大規模の穀物・油料種子の輸出を行い、その量は660万トンに達した。これは、ウクライナが黒海上の海運回廊を通って、ほかから干渉されることなく輸出できることをはっきりと示している。黒海沿岸諸港の月あたりの輸出処理量が、黒海穀物合意(BSGI)のもとで輸出されていた期間も含め、この戦争中のいずれの時期よりも大きくなったのはほぼ確実である。2024

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【和訳】英国国防省 ウクライナ情報 21.05.2024

【和訳】英国国防省 ウクライナ情報 21.05.2024

日本語訳ロシアはウクライナ北東部のハルキウ州で新たな攻勢軸をつくっているが、ウクライナ東部におけるロシア軍の攻撃も依然として盛んである。

ロシア軍はアウジーウカから北西方向の前進軸に引き続き作戦上の焦点をあてており、E50高速道路の両側の幅広い前線を攻撃している。ロシア軍が直近の72時間で戦術レベルの小規模な戦果を連続的にあげている可能性が高いが、この戦果にはおそらく大きな損失がともなっているも

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【和訳】英国国防省 ウクライナ情報 20.05.2024

【和訳】英国国防省 ウクライナ情報 20.05.2024

日本語訳ロシアは目下、労働力不足に直面しており、いくつかの分野でかなり大きな問題になっている。ロシアの独立系報道メディア・イズベスチアの推計によると、2023年にロシアで不足した労働者の数は480万人に上ったとのことだ。一例を示すと、ロシアの運輸・物流業界は2023年の間、トラック運転手の不足分を25%しか埋めることができなかった。

労働力不足の原因だが、少なくともその一部は、ウクライナにおける

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【和訳】英国国防省 ウクライナ情報 19.05.2024

【和訳】英国国防省 ウクライナ情報 19.05.2024

日本語訳2024年5月5日から6日にかけて銃撃されたロシア兵のうち、少なくとも11人が「同士討ち(フレンドリー・ファイア)」によるものだった。2024年5月6日の事件に関して、ロシア軍憲兵は仲間のロシア兵6人を殺害したロシア兵一人を熱心に捜査していた。この兵士は、ロシア占領下ウクライナ領ドネツィク配置のロシア軍砲兵大隊に付随するシュトルムZ部隊所属の元受刑者新兵だ。2024年5月5日にポロヒー付近

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【和訳】英国国防省 ウクライナ情報 18.05.2024

【和訳】英国国防省 ウクライナ情報 18.05.2024

日本語訳2024年5月14日、ウクライナ軍は、不法に占拠されているクリミア領内にあるロシア側軍事目標に対する攻撃を行った。初期報告から、ベルベク航空基地に配備されたSA-21[S-400]防空ミサイル部隊の一部が撃破されたことが推察され、破壊されたもののなかにはグレイヴストーン・レーダーとミサイル発射機が含まれている。さらに続報から、少なくとも2機のMiG-31BMフォックスハウンドC航空機が地上

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【和訳】英国国防省 ウクライナ情報 17.05.2024

【和訳】英国国防省 ウクライナ情報 17.05.2024

日本語訳驚きの人事異動のなか、ロシア国防相の地位からセルゲイ・ショイグが外れ、第一副首相だったアンドレイ・ベロウソウがその地位に就き、一方でショイグはニコライ・パトルシェフの後任としてロシア連邦安全保障会議書記になった。そして、そのパトルシェフは大統領補佐官に任命された。ショイグとパトルシェフは、長年にわたるロシア大統領プーチンの盟友であり、かつ、影響力をもつ盟友でもある。

ベロウソウは経済専門

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【和訳】英国国防省 ウクライナ情報 16.05.2024

【和訳】英国国防省 ウクライナ情報 16.05.2024

日本語訳ロシアによる侵略から2年後の今でもウクライナ経済は強い回復力を保っている。ウクライナのエネルギー関連インフラがロシアによって攻撃されているにもかかわらず、2024年のウクライナの実質経済成長率は3%台になると見込まれている。このことは、ウクライナ経済が2022年に約29%縮小したのちに、戦時下で回復傾向を続けていることを示しており、昨年の2023年は5%の実質経済成長率を示した。なお、これ

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【和訳】英国国防省 ウクライナ情報 15.05.2024

【和訳】英国国防省 ウクライナ情報 15.05.2024

日本語訳2024年5月14日は、ユネスコによる「武力紛争の際の文化財の保護に関する条約」が採択されてから70周年目にあたる日だ。ウクライナにおける戦争が続くなか、長距離爆撃機の爆撃や滑空爆弾を手段としたロシアの都市爆撃によって、ウクライナの文化的・歴史的・宗教的遺産は破壊的な影響を被っている。

ウクライナ文化情報政策省によると、ロシアによる全面侵略以降、2024年5月2日時点で、合計1,987の

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【和訳】英国国防省 ウクライナ情報 14.05.2024

【和訳】英国国防省 ウクライナ情報 14.05.2024

日本語訳ロシアが新たに編成した北方部隊集団がウクライナ領ハルキウ州内に侵攻して攻撃しており、すでに村落をいくつか制圧している。国境の小都市ヴォウチャンシク[Vovchansk]がロシア軍の当面の目標であるのはほぼ確実で、この都市を巡って、現在、ロシア・ウクライナ両軍は戦闘を続けている。

新たな攻撃軸を設けることで、ウクライナのリソースを戦線のほかの地区に振り向けられないようにロシアが試みているの

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【和訳】英国国防省 ウクライナ情報 13.05.2024

【和訳】英国国防省 ウクライナ情報 13.05.2024

日本語訳2024年に入って以降、ロシアが全地形対応車[*注:いわゆるバギー]やオフロード・バイクのような軽車両の使用を増やしている可能性は極めて高く、前線への兵員輸送と、特に夜間におけるウクライナ陣地への攻撃遂行のために用いている。

2023年11月、ロシア大統領ウラジーミル・プーチンは、新たに入手した“デザートクロス1000-3”全地形対応車を自ら視察した。なお、この車両は中国製でODES工業

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【和訳】英国国防省 ウクライナ情報 12.05.2024

【和訳】英国国防省 ウクライナ情報 12.05.2024

日本語訳ロシア国営のエネルギー企業であるガスプロムは、過去25年間で最大の年次赤字決算を計上した。2023年、ガスプロムの収益は約30%下落し、1年間の純損益はおよそ6,290億ルーブル(69億米ドル)に達した。

2022年のロシアによるウクライナ侵略と、それに続くロシアと西側との関係悪化は、ガスプロムの経営を厳しく制約している。ガスプロムはその輸出先として、これまで欧州市場に依存してきたが、そ

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