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『朗読のススメ』(永井一郎・著) 声優の心と身体とリラックスについて

サザエさんの波平役で知られるベテラン声優・俳優である永井一郎さんの朗読に関する本を読みました。

発声法やアクセントなどの技術論を超えた内容で、言葉とは何か、演じるとは何か、さらには心と身体の在り方にまで触れた奥深い本でした。

声を出す仕事をするには自分を解放する必要があるため、まず体の緊張を解いて心の緊張もとっていくことの重要性を説いています。驚いたのは、野口整体の野口三千三さんの名前が出てきたこと。

永井さんは、技術論については論理的かつ具体的な説明をしながらも、一方で頭の理解を超えて体で感じ、理解することを重視しています。

・ある行動をする時に細胞全体のベクトルが同じ方向をむくこと
・行動は連続しており、今ここにいることがだいじ
・演じる役と同じ細胞のベクトルになり、正確に行動できると体の中が自然に動く感じがする
・気持ちや気分が声に現れる、人が声に現れる
・体の緊張が完全にとれていないと集中はできない
・ある程度の技術を身につける段階までは形(型)と訓練がだいじ
・自分を解放して自分のからだを喜ばせる
・自分を守る鎧を捨てると軽くなれる、自由になれる

読んでてシステマの本かな?と思いました。笑
芸術の分野で表現する仕事も、アスリートに似た面があるのだなと。永井さんは京大文学部の仏文科卒というのも初めて知ったのですが、自分の仕事に役立ちそうなスポーツの論文を引用するなど、経験論に収まらない知識の引き出しも多く、朗読の範囲に留まらない内容になっています。
もちろん、朗読をはじめ表現する仕事をしているあらゆる人に役立つものになっているのですが。

ここ一番でリラックスできるのがプロなんだなと。そんなことを考えました。

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