見出し画像

統計不正の簡単まとめ 井手英策氏のコラムから

▼坂村健氏のコラムに続いて、井手英策氏(慶応大学教授、財政社会学)のコラムも紹介しておく。2019年1月25日付の毎日新聞から。前回はこちら。

▼井手氏の認識も相当深刻だ。見出しは

〈統計不正 政府への信頼破壊の危機〉

〈厚生労働省が一部事業所で調査が行われていなかった事実を長年隠し、正しい手法で調査したかのように装ったうえ、一部賃料を廃棄していた。勤労統計は雇用保険や労災保険と連動しており、延べ2015万人・30事業所に合計564億円の過少給付が生じる。18日に閣議決定済みの予算案の増額修正が行われた。異例の事態である。

 昨年来、残業時間の集計、政府の障がい者雇用数、最低賃金以下で働いていた外国人の割合など、統計の誤りが次々と明らかになった。共同通信社の世論調査によれば、78%の人が政府統計は信頼できないと回答している。当然の結果だろう。〉

▼井手氏は、国の「予算」についてわかりやすい表現をする。

〈どの政策に力を入れ、いかなる社会を構想するのか、国の理念を数字で可視化したのが予算だ。政府が事実を隠蔽(いんぺい)し、内閣が一度決定した予算案を増額して書き直すという事態は、尾羽打ち枯らした国家の姿をさらけ出すに等しい、由々しき事態だ。〉

▼〈尾羽打ち枯らした国家の姿をさらけ出すに等しい、由々しき事態〉とは、新聞に載る範囲において、かなり激しい表現である。

〈「政府への信頼を損ないかねない」との声が与野党に広がる。だが認識が甘くないか。国際調査が示すように、日本人の政府への信頼は地に落ちている。直面するのは毀損(きそん)の危機ではない。破壊の危機だ。〉

▼だから井手氏の矛先は野党にも向く。

〈政府の信頼が壊れれば、予算執行への疑念が加速し、監視コストを高め、税の痛みが強まる。政府への不信、痛税感、巨額の政府債務、これらは同根の問題だ。膿(うみ)を出し切ることも大事だが、野党は政府不信を煽ること以上に、信頼回復の具体案作成にエネルギーを費やすべきではないか。〉

厚労省の統計不正は、その影響がどれほどのものなのか、5年、10年経たないとわからない規模の問題だと思う。

(2019年3月5日)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?