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『性格診断』やってみたら、

「これやってみてほしいんだけど」

以前、僕の彼女がそう言って、スマホの画面を見せてくれた。

そこには『16性格診断』のページが表示されていた。

『16性格診断』とは、簡単な質問に答えていくと、自分の性格上好ましいと思う考え方の傾向を、16のタイプに分類してくれるというもの。『MBTI』とも呼ばれている。

彼女はこういった、性格診断や占いみたいなものが好きだった。

僕はひねくれ者なので、そういうものをいまいち信じることはできない。

前提となるいくつかの質問に直感的に答える、ということがそもそも苦手だった。

「『知らない人とは、すぐに仲良くなれるほうだ』……? こっちがそう思っていても、相手は仲良く思っていないこともあるよな。回答。『どちらとも言えない』」

そんなよくわからない理屈で、診断に臨んでいた。

でもこういうものは、個人をきちんと捉えるうえでの足がかりになったりするんじゃないかと思う。

診断への反応もふくめて。

例えば、彼女のように「たしかに、言われてみればそういうところあるかも!」と素直に受け止めているほうが、楽しいだろうし可愛げもある。


診断結果によると、僕は『論理学者』に分類されるようだった。

全人口の約3%。圧倒的マイノリティ。

アインシュタインやニュートンやパスカルと同じらしい。

彼らも診断、やったのだろうか。

しかしどうりで科学や哲学に興味が尽きないわけだ。うんうん。

その道に進んでいたら、それはもう偉大な業績を残したに違いない。

少なくともこうして、文章なんか書いていないのではないか。

毎日頭を抱えながら、自分の中の言葉と格闘することもないのでは。


その世界線では、りんごの木とか眺めて、大発見をしたに違いないのだ。

死後に脳を取り出されて、解析されることもあっただろう。

そして将来『MBTI』で『論理学者』に分類された若者を、おおいに勇気づけたに違いない。

「あの乙川アヤト博士と一緒なんだ!」

もし僕が10年前に診断を受けていたら、学者を目指したことだろう。


ぶっちゃけ、学ぶものはなんでもよかった。

後世に残るような仕事をして、一生遊んで暮らしたかった。

札束のお風呂に入りたかった。

自宅に巨大な書庫を建造したかった。

特大のワインセラーも必要だった。

ふわふわのバスローブもなくてはならなかった。

その生きざまを自伝として出版して、さらに一儲けしたかった。

あれ?

それじゃあやっぱり、文章を書かなくてはいけないではないか。



よかったらやってみて、どうなったか教えてください。▼


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