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悩みに悩んで会社を辞めた。夢を追う51歳、鳴門らっきょ起業の旅【おてつびとインタビューVol.35】

今回は、会社を早期退職して徳島県に移住した藤井 隆行さんに、おてつたびの魅力や起業への道のりをお聞きしました!

●これまでに参加したおてつたび●
徳島県鳴門市「徳永農園


これまでのご経歴を教えてください

藤井と申します!今年で51歳、この春に長年勤めた東京の会社を早期退職。現在は妻と2人の子どもを東京に残し、単身で徳島県鳴門市に住んでいます。

私が26年間勤めていたのは大手の製紙会社。ちょうど今年から、50歳以上の社員を対象にした早期退職希望者を募り始めました。会社に残るという選択肢もあり、はじめは迷いに迷いましたが早期退職を選ぶことにしたんです。

会社員時代の藤井さん

それまではとにかく60歳まで会社で働き定年後は地方移住し好きなことして悠々自適な生活を送る!?……とただ漠然と思っていました。と同時にあと10年か……長いな……とも。

60歳から新しい環境でなにかを始めるより、50歳の今から好きなことで仕事を始めた方が結果的に長く働けるのではと思い、これを機に”自分が好きなこと“を軸にセカンドキャリアを考えてみることにしたんです。すると自分がワクワクするのは、第一次産業のような"ナマ感”のある現場ではないかと思うようになりました。振り返ってみると、自分はもともと自然環境に関心がありましたし、製紙会社に入ったのも植林ができる仕事に興味があったからでした。

これまで長い間、東京のオフィスで働いてきたけれど、本当にワクワクするのは自然と関わるそういう現場。そう気付いてから農業に関わるビジネスを始めたいという想いが強くなりワクワクがおさまらなくなっちゃいました(笑)

おてつたびを知ったきっかけは?

セカンドキャリアについて模索している時に、学生時代の友人と再会しました。彼は三重県に住んでいて、たまたま東京に来る用事があったので飲みに行ったんです。

私が描く将来像を彼が聞いて「おてつたびというサービスがある。時間があるのならトライアル的に使ってみては?」と声をかけてくれました。もし何も得られなかったとしても失うものはないのだから、と友人に背中を押され、おてつたびのサイトに登録してみました。

その頃は4月。毎日、起業者向けのサイトで「移住×起業」というキーワードで検索したり、おてつたびの募集をのぞいたりしていました。そしてある日、見つけたのが徳島県の「鳴門らっきょ」のおてつたびの募集でした

実はわたしはワインとらっきょうの組み合わせでの晩酌が大好きなんです。だかららっきょうはわたしにとってとても親しみのある野菜でした。その割にはどんなところでどういう栽培しているのか全く知りませんでしたので、好奇心から「よし、これだ!」と思いました。期間が2週間と長かったのも魅力的でしたね。セカンドキャリアを探るためにも、らっきょうでビジネスができるかどうか実地調査をしよう!という気持ちで応募しました。

おてつたびではどんなことをしましたか?

応募が通り、いざ徳島県へ向かいました。鳴門市はらっきょうの名産地。毎年5月から6月にかけてが収穫期で、農家さんは猫の手も借りたいほど忙しい時期です。

私が参加した徳永農園さんでのおてつたびは午前と午後を選べるようになっていたので、私は午後の仕事を選びました。収穫されたらっきょうの箱を担いで、皮をむいて選別機械に入れる作業を行いました。

働きながら農家さんとは色々な話をしました。一年間、どういうサイクルでらっきょうを育てているのか?栽培方法は?農家さんはどういった価値観で生活しているのか?らっきょうの本質的な側面を理解しようと、たくさん質問しましたね。

らっきょう畑で作業

そして仕事がない時間は、とにかく外に出てマーケティング調査をしていました。そしてあちこちのお店に足を運ぶ中でビジネスチャンスを見つけたんです。鳴門市のらっきょうは品質も良くてブランド化されているものの、加工品がまったく作られていないんですよね。レンコン、なると金時、わかめ、鯛などの名産は加工品があるのに、らっきょうはない。そこで「あ、これだ!」とらっきょうの加工品を開発するビジネスプランを考え始めました

また、道の駅にどういった商品が置かれているのかを調べて、いいなと思った商品は写真を撮り、製造している会社をネットで調べてメールを送りました。私はらっきょうでピクルスやドレッシングを作りたいと思ったので、食品加工会社など複数の事業者さんとアポを取り、一緒に事業をできないかと相談しました。

その後、協力してくれそうな方々とも出会えて、おてつたびの二週間が終わる頃には、すっかり鳴門市に心惹かれていました。「この素晴らしい風土の中で、この人たちと一緒にやったら、新しい何かを生み出せるんじゃないか」と思ったんです。

そして鳴門市への移住を決意し、家族にしっかり自分の想いを伝えて理解してもらおうと考えながら、帰りのバスに乗りました。

おてつたびのその後と、これから挑戦したいことは?

おてつたびに参加したのが5/2から5/17。その後家族を説得し、3ヶ月後の8月には鳴門市でアパートを借りて移住生活をスタートさせました。二人の息子たちは大学と高校の進学が決まっていたので、思い切って決断できたんですよね。

これからはこの地で起業し、「鳴門らっきょ」の魅力を最大限に活かしたみんながワクワクする商品を作って、全国さらには世界に向けて広めていきたいと思っています。9月には鳴門市で開催されたNARUTO BOOT CAMPというビジネスコンテストにも出場して、なんと優勝することができました。

移住起業アカデミー「NARUTO BOOT CAMP」で優勝し、スピーチする藤井さん

また、ハーバリウムにして結婚式の引き出物にするのもいいんじゃないかなと思っているんですよね。らっきょうの可能性を追い求めていきたいです。

あまり知られていませんが、らっきょうの花は美しいむらさき色
ハーバリウムにすれば贈り物としても喜ばれるのではないか。らっきょうの可能性を探りつづける

私は今でもらっきょう農家さんで働かせてもらっていて、らっきょうについて学び続けているところですし、ピクルスを製造している事業者さんで食品加工技術、商品開発やマーケティングを学ばせてもらっています。下手くそながらSNSでの発信も始めたところ。まずは自分でやってみながら、どんどん新しいことに挑戦していきたいですね。

8月、らっきょうの植え付け作業中。らっきょうについて学ぶ日々

おてつたびの魅力とは?

私にとっておてつたびは、“おてつ起業アイデア着想たび”やったなと思います(笑)今回のおてつたびは農家さんと鳴門市が関わっているものだったので、行政との繋がりが持てたのも魅力でしたね。

また、2週間も滞在できたので、街の様々な人たちと出会えたのもよかったです。大人の一人旅をコンセプトにした宿を始められた方や、退職後にご夫婦で喫茶店をオープンさせた方とか。先日、らっきょうの試作品を持っていったら喫茶店に置いて販売してくれるようにもなったんです。散歩しながらいろんな人に話しかけて、知り合いになっていって。いきなり知らない土地に移住するのは勇気がいりますけど、知り合いができていたからこそ移住という判断ができたと思っています。

らっきょうで作ったピクルスの試作品!応援してくれる仲間がいるのが心強かった

これからおてつたびを利用しようとしている方へひとこと

50代、60代になるとできない理由を探しがちだと思います。でも、できない理由は言わず、やってみればいいと思うんです!多分、いろいろ迷っているうちは判断するのって難しいですよね。でも、来るべき時が来ると、不思議と迷わないんです。ストンストンとすべてが腑に落ちて、偶然が必然になるというか。

私も退職や移住について「勇気ある決断をしたね」って言われたりするんですけど、そんな気はしていなくて。ご縁が重なってこの場所にたどり着いた感じがしています。今ある環境に幸せを感じていますよ。まだ全然成功もしてないんですけどね(笑)まだまだ私も伸びしろだらけだと思って、これからも挑戦し続けていきます!

編集後記

おてつたびをフル活用して、移住から起業まで実現させた藤井さん。現地で出会う人々に声をかけたり、地元の企業さんにアポを取って話しに行ったり……行動力が半端ではなくて、驚きっぱなしのインタビューでした。

らっきょうもおいしそうですね、食べてみたいです。次の収穫は来年の5月とのことなので、その頃を楽しみにしています。藤井さんのSNSもチェックしておりますね😊ありがとうございました✨

●藤井さんのSNSはこちら●
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【取材・執筆:やまくぼ(おてつたびライター)】

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