なまもの

主に受験生に生き物の話をする人。前職は理科の教材作り。なんちゃって2級ビオトープ管理士…

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主に受験生に生き物の話をする人。前職は理科の教材作り。なんちゃって2級ビオトープ管理士で,科学技術コミュニケーションは勉強中(北大CoSTEP選科B修了)。 https://twitter.com/nama_books

マガジン

最近の記事

―私見 大学入試生物で“科学とは何するものぞ”を問うことについて―

論文:中村 大輝, 松浦 拓也, 仮説設定における思考過程とその合理性に関する基礎的研究理科教育学研究, 2017, 58 巻, 3 号, p. 279-292 https://www.jstage.jst.go.jp/article/sjst/58/3/58_17005/_article/-char/ja/  すごく面白いなと思った論文↑がありまして,自分用のメモも兼ねてここで紹介したいと思います。要約等はおこがましくてできないので,中身はぜひ読んでください。  著者の中

    • 2022年 大学入試共通テスト 生物 所感と解説

      ―――初めに――― ・この記事は,2022年1月16日に実施された,大学入試共通テストの生物の所感や解説をだらだらと書いたものです。 ・問題は適宜ダウンロードしてください。 ――――――――― 第1問 問1 ヒトがもつ特徴のうち,「直立二足歩行に伴って獲得した特徴」を問う問題。(a)〜(d)のいずれもがヒトの特徴としては正しいのがポイントです。つまり,“類人猿には無かった特徴”を答えるということになりますね。類人猿のうち,乾燥化に伴う森林面積の縮小の影響で樹上生活をやめる

      • 指導者として博物館を利用するために

        「博物館」で授業をしたいな―と思うことがあります。この「博物館」は,私にとっては科学博物館であったり動物園であったり,水族館や植物園であったりするわけですが,もちろん,皆様のご専門によっては美術館でも歴史民俗博物館でもいいわけです。要するに,教科書や資料集以上の情報が得られる場で授業をしたいということです。 博物館と学校の連携を,文字通り「博学連携」といいます。その理念や実践は,ググるとそれなりにヒットします。いくつか読んでみると,次のような課題が挙げられていることが気に

        • 「生物学的に」「生物学上」云々

          ヘッダーは先日作った魯肉飯です。とても美味しかったです。以下,今回はチラシの裏の落書きだと思っていただければ。 「人間は生物学上、種の保存をしなければならず、LGBTはそれに背くもの」 https://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4272640.html …と,一定のお立場のある人間にすら,「生物学」とはこんなふうに使われてしまう言葉ですが,そろそろ勘弁していただきたいところです。 様々な生物が様々な方法で子孫を残しているの

        ―私見 大学入試生物で“科学とは何するものぞ”を問うことについて―

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        • ―問題解説―
          3本
        • 学習指導要領に沿ったもの
          2本
        • ―プレス等解説―
          2本
        • ―疑似科学―
          3本
        • ―脱線のすすめ―
          1本

        記事

          愛想がよくてめんどくさい人

          唐突ですが,教科書の一節を引用します。 ●解糖系 細胞質基質で行われる異化の代謝経路である。呼吸基質の有機物を,炭素が3個(C3)のピルビン酸にまで分解する。この過程では,異化で放出されたエネルギーの一部がATPとして取り出され,酸化還元反応によって還元型補酵素(NADH)が生じる。 [出典 東京書籍株式会社発行 生物 教科書 p.50 H29年検定] 今となってはこんな仕事をしているので,この記述に対しては「うん,そうだよね」で済むんです。でも,そういえば私も高校生の頃

          愛想がよくてめんどくさい人

          日常という名の問題集

           いわゆる「生物は暗記じゃない」と「思考のためには知識が必要」の間に起こるケンカを,いったいどうしたらいいんでしょうね―ということをよく考えます。少なくとも高校課程で学習する生物は,物理や化学に比べれば大きめのモノを扱うことが多いので,対象をイメージしやすい(実物を見せやすい)というところに答えがあるように感じています。  「リンゴが赤いことを“暗記”している人はいない」というのを,先日どなたかがTwitterのTLに流していたのを拝見しました。私達が生きてきた数十年の間,

          日常という名の問題集

          mRNAワクチン2/2 mRNAワクチンのお話。

           前回は,“そもそもワクチンとは”ということを,免疫記憶とB細胞に絞ってお話しました。従来の不活化ワクチンや生ワクチンは,体外から入れた異物に対して免疫記憶を成立させ,二度目以降の同じ異物の侵入に備えるということでした。  mRNAワクチンもワクチンなので,私達の身体にすでに備わっている免疫のシステムを利用し,二度目以降の異物の侵入に備える点は同じです。従来のワクチンと違う点は,異物そのものを体外から接種するのではなく,異物の「設計図」を接種し,異物を体内で作らせるという点で

          mRNAワクチン2/2 mRNAワクチンのお話。

          mRNAワクチン1/2 mRNAワクチンの前にワクチンのお話。

           日本でも新型コロナウイルス感染症に対する“mRNAワクチン”の接種が始まりました。ここで,高校課程の生物基礎・生物で分かる範囲で,mRNAワクチンについて考えていこうと思います。  …が,Twitterで一度書いたことに補足していくと分量が多くなりそうなので,今回はワクチンの話に限定しようと思います。 ― ―  mRNAワクチンの前に,そもそも“ワクチンとは何ぞや”から。高校課程の生物基礎では,弱毒化したり不活性化したりした病原体(細菌やウイルスなど)をワクチンとして注

          mRNAワクチン1/2 mRNAワクチンの前にワクチンのお話。

          生物と地理―例えばチェルノーゼムについて

           前回の記事で,「2022年から,高校課程に「地理総合」という科目が必修化します」という話をしました。あんな話やこんな話が面白いかもしれないなぁ…という気持ちを,少しだけ具体的にしてみたいと思います。 ― ―  地理には「土壌」という項目があります。生物基礎の教科書にも土壌は登場し,概ね,「母岩由来の無機物と,生物由来の有機物が混ざったもの」と説明されています。  ちょっとだけ,生物基礎における土壌について紹介しようと思います。ちょっとだけです。  例えばここで,

          生物と地理―例えばチェルノーゼムについて

          雑記 地理と生物

          文部科学省|平成29・30年改訂 学習指導要領、解説等 より https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/1384661.htm 高等学校学習指導要領の改訂のポイント https://www.mext.go.jp/content/1421692_2.pdf ― ―  2022年から,高校課程に「地理総合」という科目が必修化します。地理は,内容によっては生物(+生物基礎)と親和性の強い分野です。地球上の様々な現象を,地理の切り口

          雑記 地理と生物

          2021年度 大学入試共通テスト(第二日程) 生物 所感と解説

          ―――初めに――― ・この記事は,2021年1月31日に実施された,大学入試共通テスト第二日程の生物の所感や解説を,心赴くままに書いたものです。 ・問題は適宜ダウンロードしてください ――――――――― 第1問 問1 タンパク質の立体構造に関する問題ですね。選択肢が,第一日程よりは少し工夫されています。  「鍵と鍵穴の関係」と言われるように,ある酵素(鍵)は,それと対応する物質(鍵穴)にのみ作用します。これを酵素の基質特異性といい,ある鍵がどの鍵穴に入るかは,鍵の形―すな

          2021年度 大学入試共通テスト(第二日程) 生物 所感と解説

          2021年度 大学入試共通テスト(第二日程) 生物基礎 所感と解説

          ―――初めに――― ・この記事は,2021年1月31日に実施された,大学入試共通テスト第二日程の生物基礎の所感や解説を,心赴くままに書いたものです。 ・問題は適宜ダウンロードしてください。 ――――――――― 第1問 サンゴと褐虫藻の共生に関する問題。そもそもサンゴが動物であることを知っておくと,問題文の読解はスムーズかもしれません。しかし,問題には,「サンゴの胃壁細胞」といった表現やその図もあるので,サンゴが動物であるということを試験の場で知っても差し支えはありません。図

          2021年度 大学入試共通テスト(第二日程) 生物基礎 所感と解説

          「今日の生き物」の下書き的ブレスト vol.10

          アメーバ,ゾウリムシ,ミドリムシ 細胞や分類の単元の後で ーーはじめにーー ・2021年度以降の授業の小ネタを整理するのが目的ですが,2021年度内に終わるとは思ってません。 ・どのみち「分類」の単元でいろんな生き物を学習するなら,普段の授業の中で少しずつ,身の回りの生き物を取り上げておくのがいいんじゃないのという仮説のもとでやります。 ・画像はいらすとやさんから拝借します。 ーーーーーーーー  アメーバ,ゾウリムシ,ミドリムシ。少なくとも名前は聞いたことがあるのではないで

          「今日の生き物」の下書き的ブレスト vol.10

          「今日の生き物」の下書き的ブレスト vol.9

          ササ 生殖の単元について ーーはじめにーー ・2021年度以降の授業の小ネタを整理するのが目的ですが,2021年度内に終わるとは思ってません。 ・どのみち「分類」の単元でいろんな生き物を学習するなら,普段の授業の中で少しずつ,身の回りの生き物を取り上げておくのがいいんじゃないのという仮説のもとでやります。 ・画像はいらすとやさんから拝借します。 ーーーーーーーー ササです。パンダに食べられていたりするアレです。分類としてはイネ科で,その中でもタケ亜科に属するタケの仲間です

          「今日の生き物」の下書き的ブレスト vol.9

          「今日の生き物」の下書き的ブレスト vol.8

          ウイルス 生き物じゃないんですけど,免疫の単元について ーーはじめにーー ・2021年度以降の授業の小ネタを整理するのが目的ですが,2021年度内に終わるとは思ってません。 ・どのみち「分類」の単元でいろんな生き物を学習するなら,普段の授業の中で少しずつ,身の回りの生き物を取り上げておくのがいいんじゃないのという仮説のもとでやります。 ・画像はいらすとやさんから拝借します。 ・今回は生物ではないです。 ーーーーーーーー  今更ですが,生物で学習する「生物とは何ぞや」をち

          「今日の生き物」の下書き的ブレスト vol.8

          「今日の生き物」の下書き的ブレスト vol.7

          マウス その高校課程の生物への貢献 ーーはじめにーー ・2021年度以降の授業の小ネタを整理するのが目的ですが,2021年度内に終わるとは思ってません。 ・どのみち「分類」の単元でいろんな生き物を学習するなら,普段の授業の中で少しずつ,身の回りの生き物を取り上げておくのがいいんじゃないのという仮説のもとでやります。 ・画像はいらすとやさんから拝借します。 ーーーーーーーー  マウス―動物界 脊索動物門(脊椎動物亜門) 哺乳綱 齧歯目 ネズミ科 ハツカネズミ属 に属する「ハ

          「今日の生き物」の下書き的ブレスト vol.7