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雑記 地理と生物


文部科学省|平成29・30年改訂 学習指導要領、解説等 より
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/1384661.htm
高等学校学習指導要領の改訂のポイント
https://www.mext.go.jp/content/1421692_2.pdf
 
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 2022年から,高校課程に「地理総合」という科目が必修化します。地理は,内容によっては生物(+生物基礎)と親和性の強い分野です。地球上の様々な現象を,地理の切り口だけでなく生物の切り口でも見つめることは,双方の科目の理解にきっと貢献するものと思います。
 
 世界のバイオーム(生物基礎)とケッペンの気候区分(地理)は,きっと多くの方がピンとくるであろうところです。生物では森林・草原・荒原と分けられる相観と,地理では熱帯気候・乾燥気候・温帯気候・寒帯気候…などと分けられる気候区の対応がどのようなものかを調べるのもいいでしょう。
 また,なぜアジアではイネが栽培され,欧州ではコムギが栽培され,南アメリカではトウモロコシが栽培されるのかについて,湛水環境で発芽するイネの発芽特性や,春化要求性を示す秋撒きコムギ,葉肉細胞にC4回路をもつトウモロコシの生理生態の違いに着目し,生物の切り口から説明を与えてみるのはいい試みになるかもしれません。
 さらに,各地の土壌の有機物量に関して考えるのも面白いかもしれません。生物基礎では,熱帯多雨林と針葉樹林の有機物生産量および土壌の有機物量について考えます。熱帯多雨林はその膨大な生物量から豊かな土壌が形成されていると思いきや,高温による有機物の分解促進と降雨による溶脱から実は貧栄養土壌となっていることは,足りない栄養を虫で補うよう進化した食虫植物の在り方と併せて考えるととても興味深いことです。またこれは,第二次世界大戦後,解放された旧植民地において人口が増加し,食料需要が増した中で着目された熱帯土壌が実は貧栄養であり,その効果的な活用のための熱帯土壌研究の必要性が叫ばれるようになった―というのは,世界史的にも興味深いことかと思います。他方,地理では森林土壌だけでなく,草原地帯に発達するチェルノーゼムを始めとする黒色土が世界の穀物需要を支えていることを扱ったりと,生物基礎で学習する内容を拡張する内容が含まれています。そういや,“拡張”と言えば,降雨によって土壌の酸性化が進む要因について,アルカリ金属やアルカリ土類金属のイオンが,降水によってもたらされる水素イオンとの間で陽イオン交換が起こることを考えるのなら,それは化学の出番です。いやぁいろいろ引き合いに出せるって,いいですねぇ。
 
 教科横断的な内容は,現状科目別に行われている大学入試でこそ決してメジャーであるとは言えないにせよ,横断された科目の単元の理解に大きく貢献することは,肌感覚ながら間違いないと言えそうです。指導者側としては勉強する内容が一気に増えるんですが,まぁ「勉強する内容」なんてもとから際限がないようなものですから,諦めていろいろ学んでいく他ないですよね。他分野の方と博物館に行くなどして,入り口だけでもたくさん仕入れておくのが望ましいように思いますですよ。
 緊急事態宣言が続き,国立科学博物館などは今も予約制が続いています。なかなか,仲のいい人どうしで博物館に行ってあーだこーだ言うワケにも,その後居酒y…夕食の場で意見交換するワケにもいかないのです。この有様が早く終わってくれるよう願うばかりです。

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