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Mizuki
2021年7月12日 16:30
「日暮れ時、夕焼け前」まだ西の空が橙色に染まっていない頃空は青い。青いけれど、もう昼ではない。うちはこの時間が好きだ。夕暮れ前。夕焼けの予感がする青い空。よく、出かけたくなるのはこういう時だった。日中ギラギラと照りつけていた太陽が、その勢力を弱めて、見える視界の丸ごとが、一段階淡い色彩に移行する時間。******うちが丘を登っていくと、あの子がこっ
2021年3月21日 19:21
↑このお話の続き******ごめんください…部屋の中は真っ暗だった。あの灯っていた明かりは、もう消えてしまったのかな。夕日が沈むみたいに。もう眠ってしまいましたか。私を泊めてもらえませんか。扉の近く、水槽のさかながパクパクと口を開いた。ご主人、電球が切れて、なぜだか静かになっちゃったよ。君は迷子かい?迷子だねえ。あれ。君天使?天使だね?珍しいこともあるも
2021年2月27日 20:52
↑このお話の続き。雨粒の天使雨は雲を離れ、地上へと向かう。一粒で。空中に孤独。音立てることもなく。波紋をつくり地上の水の仲間入りをするまで、ひとりで。わたしは、雨みたい。天の世界から離れて、地上にたどりついて。でも、雨みたいに浸みていくことはできないでいる。濡れた髪。ぬれた翼。私にはつばさがあって、それはこの場所でも変わらないこと。翼が折れなく
2021年2月18日 05:30
あなたは言った。「遠くへ行きたいなあ…」思いもよらなかったのでうちは驚いたけれど、顔や声には出さなかった。「行けるよ」うちはつぶやく。「そうかなあ。」「どこにだって、行けるよ。あなたなら。」木が、遠くへ旅立つのは、どういうときなんだろう。いつなんだろう。花が咲く季節。木漏れ日の季節?実がなるとき?それとも、枯れ葉の頃あるいは。雪に埋もれる頃。「遠くへ
2020年11月27日 06:00
不思議なところに看板が立っていた。ピンときたうちは、看板の隣から、一歩を空に踏み出していった。やっぱり。空の道の工事中だった。そうでなければ、あんなところに看板なんてあるわけないとおもったんだ。「ごめんね。ここは工事中。迂回してね。」「はい。ありがとうございます。」応えながら、うちは、手元にはちみつレモン、がないことを悔やんだ。休憩をしません
2020年9月29日 21:18
丘の上では、今日は特に、柔らかい風が吹いていた。ずいぶん風の雰囲気が変わった。木はいつも通り、涼しげな木陰をたたえて立っていた。感じる風はやさしくて、涼しくて。夏の間、救いを求めるように訪れていたそのこかげは色がブルーから少し薄れ透明に近づいているようだった。こかげの色は、これから暖色になっていって、紅葉と同じようになっていくだろう。そして葉が落ちきる
2020年7月9日 20:04
かつて、樹木だったことがある。その時のことを思い出している。あの人にもう一度会いたくて。***うちは名前を知らなかった。自分の。世界の。毎日流れてゆく雲を見つめながら、雨に打たれて、風に枝を折られ、それでもその場所にずっといた。時折、風に乗って、言葉が流れてきた。イメージもくっついて。感情のこもったいろんな音。すごく遠くからの音。地球の歌。