温泉なんでも屋さん 髙野 紀康

北海道の温泉を巡り続けて20年870湯。「北海道はひとつの大きな温泉郷」がモットー。一…

温泉なんでも屋さん 髙野 紀康

北海道の温泉を巡り続けて20年870湯。「北海道はひとつの大きな温泉郷」がモットー。一人で日帰り温泉を運営した経験もあり、事業者側/利用者側の両方の視点で現場を見ます。温泉資格は嗜む程度に8つほど。フリーでライティング・講師・施設運営のサポートやコンサル等を行なっています。

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最近の記事

人気野湯の行方

北海道の道東にある「からまつの湯」。 昔から人気で、よく知られている野湯(野天風呂)でした。 利用者の死亡事故が起きたのが昨年11月のこと。 その後は別の意味でよく知られるようになってしまいました。 現在はバリケードが張られているようで、この野天風呂はこのまま閉鎖になるだろうと考えています。その理由を幾つか書いておこうと思います。 土地問題からまつの湯がある場所は国有林の中です。 上記の記事の中で『(北海道森林管理局根釧東部森林)管理署は「適切に管理できる団体などがあ

    • 覚悟して楽しむということ

      忙しくて全く見ることのなかったオリンピックですが、それが終わろうとしている頃にこんな記事が目に入りました。 覚悟して楽しむ…言葉にするとそういうことか!と。 これは私の温泉ライフにも当てはまることなのです。 現場主義昨年末、私は温泉の現場に戻りました。おかげさまで昨年も(そして今年に入ってからも)数社の大手メディアさんの温泉特集で裏方をさせていただき、私の脳内の温泉企画が世に出て現実のものとなっています。でも私は「温泉ライター」だけの人として生きるつもりはほとんどありませ

      • ワーケーションできる温泉宿、大雪山白樺荘

        私がワーケーションという言葉を認識したのは世界が感染症の波に呑まれる前のこと。環境省の新・湯治セミナーで、ワーケーションをこれからの働き方として推進しようという企業の方がおられました。その時はまだ社会的に見ても小さなアクションでしたが、それから世の中の流れが一気に変わったのはご存知の通りです。 ワーケーションそのものについてはもうあちこちで語られていますし、それができる職業の方は既に経験しておられるでしょうから、その辺は触れずに本題へ。 旭岳温泉にあるユースホステル・大雪

        • 温泉施設とメディア

          「温泉は重要な観光資源」…よく言われます。本当によく言われます。私が温泉施設を運営していた時、町職員の方から何度もそのセリフを聞きました。実際に観光資源として扱われたかどうかはさておき笑、実は観光資源として扱いづらい部分が温泉にあることを、温泉事業者側としてもメディア側としても経験しています。特にメディア対応に関連して、その辺のことを書き残しておこうと思います。 温泉施設は純粋な観光施設ではない日本人は温泉が大好き。温泉があるところには、その市町村の外からも人が集まります。

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        • のんさんの湯めぐり日記
          7本
        • 北海道の温泉の底上げを目指して
          5本
        • 温泉を継ぐということ
          1本
        • 北海道三霊泉五名泉・人気投票の行方
          50本

        記事

          温泉施設を継ぐということ

          趣味で温泉を巡る人は多くても、そこから温泉施設の経営側になった人はそんなに多くないと思います。大きな温泉施設には当てはまりませんが、私が経験したことを書き留めておきます。 内容は私自身が温泉施設を引き継いだ時のことと、初めて温泉運営を任された(指定管理者になった)小さな会社をお手伝いした時のことです。また、同じ境遇の方からお聞きした話も含まれます。 居抜きでは営業できない「小さな温泉施設を譲り受けて、スローライフを送りながら運営したい」といった夢をお持ちの方は意外に多いと

          温泉施設を継ぐということ

          超ツウ好みの温泉!「シララ姫の湯」

          積丹半島の温泉はじわじわと数を減らしていますが、積丹町にある「シララ姫の湯」もその波に呑まれた一軒でした。長らく営業していた「民宿北都」が2018年10月に閉館、町内の温泉は町営の「岬の湯しゃこたん」だけに。 その民宿北都が「ニャー助のホテルん」という名前で、新オーナーのもとで営業を始めることになりました。 私が温泉施設を運営していた頃、温泉仲間の方が来られて「温泉宿を借りて、チームでそこを運営したいと考えているんです…その時はよろしくお願いします」という話をしたことがあり

          超ツウ好みの温泉!「シララ姫の湯」

          「かけ流し」の真実 (後編)

          前の記事では、温泉好きの方なら気になる「かけ流し」「循環ろ過+塩素殺菌」について、かけ流しの利点とされるところと、主に塩素殺菌の弱点とされるところを書きました。 実は気にしない人が大半で、かけ流しかどうかを気にするのは温泉マニアと、それを売りにできるメディア・事業者だけかもしれません。それでも、北海道では過去に「かけ流しかどうか」で温泉の良し悪しを判断するような評論家が現れてブームのようになったことがありました。 そのような著名人の言うことを鵜呑みにし、お湯を自分の肌で確

          「かけ流し」の真実 (後編)

          「かけ流し」の真実 (前編)

          大抵の温泉好きにとって、かけ流しかどうかということは温泉評価の大きなポイントになるのではないかと思います。 地球の恵みである温泉を手を加えないそのままの状態で味わえるなら、それは理想的。「かけ流し至上主義」のような考え方を持つ人も少なくないでしょう。 では、かけ流しは正義なのでしょうか。 かけ流しとは何か一般によく使われる言葉になったので改めて説明するまでもありませんが、温泉における「かけ流し(方式)」とは、基本的に温泉水に手を加えず湯船に投入し、温泉水を再利用せず湯船から

          「かけ流し」の真実 (前編)

          「モール温泉」の真実

          先日、こんな記事をリリースしておられる方がいました。 たまたま最も最近見かけたのがこの記事だったというだけで筆者の方に対しては何も感じていません(特定の個人の良し悪しをジャッジするのが目的ではありません)が、このタイトルには決定的な間違いがあり、その間違いが温泉に詳しくない一般の多くの方にも浸透してしまっています。メディアの方もよく間違える典型的な話で、業界あるあるかもしれませんね。 それは「世界的に珍しいモール泉」という文言です。 モール温泉とはなぜそれが間違いかとい

          バリアフリーホテルの完成形

          最近クラブハウスでホテル系の話をお聞きして、学ぶことが多い。 そして、ホテル系の話の一つにバリアフリー…いや、バリアフリーという言葉はもう古くて、ユニバーサルデザインと言ったほうが良いでしょうかね。 そこで話されるのはハード面での調整とサービスの問題。 もちろんそこをバランスよく調整すれば、車椅子の利用者の快適性は上がります。 でもそこで話が止まってるんですよね。 北海道の道南、乙部町に「オールバリアフリー」のホテルがあります。 本州の関係者の皆様には知られていないホテル

          バリアフリーホテルの完成形

          化学反応

          昨年せっかくnoteを始めたのに、途中から忙しすぎて更新する時間がなかったという…今日だけ少し時間があるので、今のうちに書いておこうと思います。 昨年、強く心に残った言葉があって。 自然科学の授業は、別府の地獄(温泉)からでした。 赤茶色の血の池地獄も、淡いブルーの海地獄も、同じ鉄の色なんです。 色の違いは、温泉水の中で鉄がどう化学反応しているかの違い。 実際に見たことがある風景だったので、すぅーっと頭に入りました。 さまざまな化学物質が含まれている温泉ですが、化学の法

          vs行政?

          温泉に関わる方と話していると「町は何もしてくれない」という言葉を聞くことが多いです。行政に期待しないといいながら不公平な扱いをされていると感じる要素を多々挙げたりして。 そして、自分もそんな風に思っていました。 すべてが終わった後で冷静に振り返ってみても、あの町は全く動いてくれなかった。なのでその時の気持ちはたぶん間違いではないのです。そもそも私が一人で切り盛りしていた温泉施設は、先代(創業者)が町役場に開店の挨拶に行ったら「営業しなくていい」「俺の目の黒いうちは絶対に認め

          つい頑張っちゃうフタ集め

          ずっと温泉の事ばかりを書いてきましたので、ちょっと一休みのネタを。 最近人気のジャンルに「フタ(マンホール)」というものがあります。 北海道内でも幾つかフタ系の企画があり、国土交通省などが全国で展開しているマンホールとマンホールカードは有名どころなのではないかと思います。 その中でまだ8つの道県でしか展開されていないのが、各種ポケモンがデザインされたマンホール、「ポケふた」です。 8つと書きましたが、実は福島県に設置される事がつい数日前に発表されたばかり。さらに、神奈川

          つい頑張っちゃうフタ集め

          三霊泉五名泉投票・完

          昭和5年8月4日の新聞より 審査会にて厳選の結果 三霊泉五名泉決定す参考資料を基礎に数時間審議 得票順に意見一致 既報の如く三霊泉、五名泉審査会は二日午後二時半から本社楼上において開会、出席審査員は 道庁衛生課長木村眞之助氏、札鉄運輸課旅客係長馬場惟保氏、小樽旅行協会々長河原直孝氏、小樽市星野三郎氏及び本社側三名(札鉄運輸課長橋本重太郎氏は病気のため、温泉協会北海道支部評議員酒井隆吉氏は止を得ざる事故のため欠席) 本社平野専務開会の挨拶を述べ池島企画部長より温泉投票の経

          三霊泉五名泉投票・その後

          昭和5年8月2日の新聞より 三霊泉五名泉をけふ審査会審査員に六氏を推薦 結果は四日に発表 既報、七月十七日開会の温泉投票選定会において 洞爺湖温泉、昆布温泉、根崎温泉、カルルス温泉、豊富温泉、子宝湯、雨宮温泉、鹿部温泉、温根湯温泉、及川温泉、光風館、瀧不動霊泉 の十二温泉を本道三霊泉、五名泉候補に選定したが以上の候補温泉中より三霊泉、五名泉を決定する最後の審査会はいよいよ今二日午後二時半から本社楼上によりにおいて開かるる事となり左記六氏を審査員に推薦した 道庁衛生課長 

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          温泉を支える素敵な仲間たち③

          前の二つの記事で、奥尻島唯一の温泉と、その温泉がある小さな地域について書きました。大きくて派手なアトラクションはありませんが、魅力に溢れた地域なのです。 私が札幌に依存する小さな町・当別町で温泉を運営していて感じたのは、とにかく小さくても細かくても、地域ならではのものを見つける目を持つことが大切だということでした。 そういう意味での「視力」が良ければ、一見関係ないもの同士でも、それらを繋げて地域まるごと面として外からの人を迎えることができます。 ただし、それもその地域に拠

          温泉を支える素敵な仲間たち③