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小説「ポルシェに乗った地下芸人」

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36歳で急に思い立ってお笑い芸人を志した私の自伝的なやつです。 曖昧な記憶と都合が良い記憶改竄がなされている可能性がありますので、あくまでフィクションとしてお楽しみください。
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#エンタメ

ポルシェに乗った地下芸人.14

ポルシェに乗った地下芸人.14

YU-TAはアキちゃんを打ち上げに誘いに来たらしい。

なるほど、こういうライブにも打ち上げというものがあるのか。そう思っているとアキちゃんが言った。

「ジョニーさんも一緒に行きましょうよ」

なんて可愛いやつなのだろうか。初対面のおじさんを打ち上げに誘ってくれるとは。見た目は気持ち悪いが、いいやつなのだ。

「お邪魔にならなければ、ぜひ」後輩芸人感を崩さないようにそう答えてみた。

「割り勘に

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ポルシェに乗った地下芸人.6

ポルシェに乗った地下芸人.6

子供が生まれた。妻は1週間ほど入院するらしい。

となると、毎日顔は出さないとまずいだろう。僕はわりと仕事の時間に自由が効くから、合間の時間で顔を出そう。

それはそれとして、明日はお笑いライブ出演だ。新宿のヒルトンホテルで高いコーヒーを飲みながら作った会心の下ネタ漫談。衣装だって、黒いツナギに変える。これはウケないはずがない。

誰もいない家で、ガサガサと押入収納ボックスを漁る。

あった、ツナ

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ポルシェに乗った地下芸人.5

ポルシェに乗った地下芸人.5

ネタを書き終えた僕は、会計をしてカフェを出る。

ついつい注文してしまったケーキと追加の飲み物で2,000円を超えてしまったが、良い環境でこそ良いネタは生まれる。これは必要な投資なのだ。

駐車場からアルピナを出して家に向かう。時間は21時を過ぎた頃で高速道路はまあまあ流れている。小一時間で自宅に着くと、妻がおなかが張ってきたと言う。

数日後に予定日を控えている。もしかしたら陣痛なのかもしれない

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ポルシェに乗った地下芸人.4

ポルシェに乗った地下芸人.4

メタリックが煌めくグリーンのアルピナB3ビターボは、新宿ヒルトンホテルの地下駐車場に続くスロープを滑り降りていく。

いや、ここのスロープは幅が狭く傾斜も急なので滑るようには降りていけない。

そろそろと、車幅を気にしながら下る。スロープを降りきったところで、ザサッと車の底を擦る。アルピナは絶妙な車高なんだよなぁと思いつつ車を停めてロビー階に上がる。

パティスリーショップを眺めながらカフェへ向か

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ポルシェに乗った地下芸人.3

敗北の初舞台。

元来の負けず嫌いというわけではなく、「まあ、ウケるっしょ」というあまりに安易な考えで人前に出て、なかなかの恥を晒してしまったという後悔が胸の奥を重くする。

空腹を堪えきれずに買い食いした肉まんを喉に詰まらせたような、焦りにも似た息苦しさに僕は耐えきれなかった。

この胸の詰まりを解消するには、ウケるしかない。人を笑わせるしかない。

子供の頃から「小野ちゃんはひょうきんだなあ」

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