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0.1℃単位で火入れする狂気のシェフ『三つ星レストランの作り方』
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口絵
仔羊のステーキ。
見た目は完全に”レア”ですが、火は入っています。
彼は少なくとも5通りの方法を組み合わせて、仔羊に火を通していた。炭火、繊細な温度調節の可能なオーブン、赤外線調理器、使い込まれたフライパン、氷で冷やしたボウル・・・・・・。
何種類もの方法を駆使するのは、一つの肉の塊のそれぞれの部分に最上の火入れをするためだ。
緻密、という一言しかありません。
火入れの温度は、0.1℃単位で調節するとのことです。
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口絵
お皿の右端の置かれているのは黒胡椒です。
よく見ると、上から順に小さくなっていますね。
一粒の胡椒が1/4、1/8、1/16のサイズに割られ、それぞれ2粒ずつ並んでいるのだ。 手前の胡椒ほど小さいのは、まずは小さい粒から使えということなのだろう。
なんという繊細さでしょうか。
これが、米田肇シェフの仕事ぶりなのです。
米田氏は、2008年5月12日に自身のレストランを開店します。
(現在の店名は【HAJIME】)
そして開店から1年5ケ月でミシュランガイドの三つ星を獲得します。
これはミシュラン史上最速の記録です。
『三つ星レストランの作り方 史上最速でミシュラン三つ星を獲得した天才シェフの物語』は、そんな米田氏の半生が書かれた本です。
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『三つ星レストランの作り方 史上最速でミシュラン三つ星を獲得した天才シェフの物語』
【※】
本文中の引用はすべて『三つ星レストランの作り方 史上最速でミシュラン三つ星を獲得した天才シェフの物語』のものです。
しかし、米田氏の料理人としてのスタートは遅いです。
父親に猛反対されたためです。
大学(理工学部)に進学し、エンジニアとして就職。
しかし夢を諦めきれず、2年で辞め、料理の学校に1年通います。
大阪のフランス料理店に修行に入ったときは、26歳になっていました。
早い人なら、高校を卒業してすぐ料理の世界に入るのですが・・・・・・。
それでも米田氏は、『世界を代表するシェフ100人』にも選ばれています。
【※】
フランスの雑誌「LE CHEF」の企画。
世界中の三ツ星、二つ星ののシェフ約500人がそれぞれが思う「世界を代表するシェフ」を5人選んで投票するもの。
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1.専門学校時代
昼食は社員食堂のカレー(300円)、夕食は自炊(材料費は200円まで)の生活を続け、600万円を貯めた米田氏。
そうして、料理の専門学校に入学し、猛勉強します。
いつも教室のいちばん前の席に陣取り、そこにあるものは何から何まで喰い尽くしてやるという顔で授業を受けていた。
昼間学校で学んだことを、帰宅してパソコンでまとめます。
母親の和子によれば、彼はその1年間1日も欠かさず夜自宅に戻るとずっと机に向かって作業をしていたという。
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授業が終わると、講師のところに飛んで行き、質問をあびせかけます。
この質問の内容が、狂気です。
「先生はこの野菜を1センチ角に切りなさいっておっしゃったけど、なぜ1cm1mm角ではいけないのですか?」
米田氏は本気で聞いているのです。
(のちに、そのことがわかります)
そして、就職するときがやってきました。
遅れを取り戻すため、
「いちばん厳しい店を紹介してほしい」
と希望を出します。
自ら進んで厳しい修業場所を選ぶところが実にカッコイイですね。
ところが・・・・・・。
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2.修業編 その❶
料理学校で凝縮された1年を過ごした米田氏。
厳しい店で、早くも頭角を現す・・・・・・。
といったことはありませんでした。
米田氏は何もできなかったのです。
毎日、毎日授業後にまとめたファイルは、そこでは役に立ちません。
僕は1年かけて、詳しいルールブックを作っただけのことだった。(中略)
野球のルールを覚えることと野球をすることがまったく違うのと同じように、料理の知識を頭に詰め込むのと料理を作るのは別のことなんです。
1年間もの間、洗い物とデザート準備しかさせてもらえなかったのです。
そのうえ、
パイ皿で顔を殴っておいて、皿の端が欠けると、「なんで皿を欠けさせるんだ」といって、今度は頭を殴る
という、暴力が当たり前のように存在した職場ということもあり、体重は15kgも落ちました。
悩んだ米田氏は父に相談し、店を辞める決心をします。
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厳しく理不尽な職場から、真っ当な職場へ。
そこからは米田肇氏は飛躍的な成長を・・・・・・というわけにはいきませんでした。
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3.修業編 その❷
肇を取り巻く環境は変わった。けれど、肇自身が変わったわけではない。 肇は相変わらず、厨房で自分が何をしたらいいのかがわからなかった。木偶の坊のように突っ立っているしかなかった。
料理以外の世界なら、研修期間というものがあるでしょう。
しかし、レストランでは”目の前にお客さんがいる”という現状があります。
その修行先のレストランは、『Louis Blanc』。
現代フランス料理界の鬼才と呼ばれた三つ星シェフのアラン・パッサールのもとで修業した島田敦哉氏がオーナーシェフを務めていました。
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※島田さんの料理ではありません
当然、超人気店だったことが想像できます。
新人にアレコレ教えている暇なんてなかったのでしょう。
何もできないまま3ヶ月がたち、ついに米田氏はシェフに話をしにいきます。
「自分がこの厨房で何をしたらいいかわからないんです。いったい僕はどうしたらいいんですか」
そこでシェフに言われた、とある一言・・・・・・。
その一言によって、米田氏は覚醒します。
このとき、米田氏は初めて料理人になったと言えるかもしれません。
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4.『週刊少年ジャンプ』
加速度的に成長する米田氏は、修業の場をフランスに移します。
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フランス修業から自分の店を開くまでも試練の連続です。
フランスでは数か月も労働許可証がおりず働けない・・・・・・。
帰国しても理想の物件が1年も見つからず貯金を切り崩したり・・・・・・。
それでも、
開業までの2ヶ月間と店が軌道に乗るまでの約1年間の苦労に比べたら、それ以前の苦労など苦労と呼ぶには値しない
というのですから、開業当初の米田氏の苦労は峻烈を極めます。
たとえば、スタッフ。
ほとんど未経験者しか集まらなかったので、
最初の頃は、コース料理を全部出し終えるのに5時間もかかかってました。
「もうあり得ない」って言われましたから。
ということがあったそうです。
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ただ、みなさん思い出してください。
これって『週刊少年ジャンプ』の主人公たちと同じなんですよ。
『ジョジョの奇妙な冒険』(荒木飛呂彦)の第2部では、難敵・柱の男たちに対抗するため、主人公ジョセフは波紋の修業をします。
『HUNTER×HUNTER』(冨樫義博)では、念能力の取得に向け、天空闘技場において地味で過酷な修業を積みます。
『NARUTO』も『ドラゴンボール』も、同じ。
厳しい修業を乗り越えた主人公たちが、強敵を撃破するシーンにカタルシスを感じるのではないでしょうか。
【※】
本来は「浄化」という意味。
ここでは(主人公が)辛い状況を経て強くなり、
最後にはスカッとすること。
『三つ星レストランの作り方 史上最速でミシュラン三つ星を獲得した天才シェフの物語』も同じです。
米田氏は苦労しっぱなしですが、終盤になって一気に花開きます。
抑圧が解放され、満足感と快感を得られるのです。
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5.米田肇とは、どんな男か?
私が思ったのは、
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です。
鴨肉のある部分に存在する1本の細い筋を切断するために、人間の眼球の毛細血管の切断用の極細の医療用鋏を揃えておくような男なのだ。
たった1本の筋ですよ。
それも、相当”極細”であるようなのですが・・・・・・。
そんな細い筋でも、”美味しさ”に影響する、という考えが米田氏にはあるということですね。
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口絵
また、米田氏は、
分量を0.1g単位で、
大きさを0.1cm単位で、
温度を0.1℃単位で、
管理しています。
専門学校時代の質問、
「先生はこの野菜を1センチ角に切りなさいっておっしゃったけど、なぜ1cm1mm角ではいけないのですか?」
が、真剣だったことがわかります。
その緻密さが、修業を経て得た実力と結びついたことが三つ星獲得に繋がったのだと思いました。
「天才」というより、修業の過酷さと、技術の緻密さが印象に残ったのです。
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米田シェフが作った料理、食べてみたいと思いませんか?
(注意!!文庫版は、名前が違います)
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【書籍データ】
著者:石川拓治
書名:三つ星レストランの作り方 史上最速でミシュラン三つ星を獲得した天才シェフの物語
出版社:小学館
ページ数:240ページ
出版年月日:2012年11月14日
ISBN-10 : 4093882118
ISBN-13 : 978- 4093882118
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