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#時間

詩 幻と

詩 幻と

書店の隅で
読んでた雑誌は
もう消えた

在ったもの
辿ると
わたしだけの時間
パッケージされてるような

いつのまにか
変わっていた
世の中に
気付かなかったのは
わたしが
いつのまにか
変わっていたから

幻と消えた時間に
重ねながら
別人みたいな
私を迎える
同じ書店

分かってくれると
信じてる
変わっていくと
知ったことで
大人になっていったこと

詩 ポスター

詩 ポスター

君の声は
君が好きだった
画家の名前で
再生された
いつもいつも

アクセントや
声の明るさ
そこにはあったのは
君だけのことば

思い出す回数が
減っていたことに
気が付く
強い風の中

耳を澄まし
思い出にひたる
地下鉄のポスター

詩 川を越える

詩 川を越える

川を越える
きらきらした
川を越える

ゆらゆらと
光が美しい時間
心浮き立つ

川を越える
長い長い
川を越える

深い深い
どこまでも水の上
足をつけては歩けない
なんてちっぽけな

川を越える
手をとりあって
川を越える

誰もが期待と不安の中
揺らめいている
大切な時間を
大切に思おう

川を越えたこと
自信になって
気持ちだけ
忘れぬよう
橋はかかっている

詩 人間観察

詩 人間観察

記憶の中の色
記憶の中の温度
時間とともに
変化しないが
時間とともに
変化していく
思い出として

わたしという人間を
あの日にもう一度
連れて行けたら
思い出は
変わらないのに

どれだけ文明が
発達しようとも
戻れない時間に
頬杖をつく

思い出を
都合の良い色にして
都合の良い温度にして
幸せに墜落していく

ダメ人間じゃないよ
きっとわたしたち
これを人間というんだろう

詩 秋の迷い子

詩 秋の迷い子

ひんやりした窓に
頬を当てて
秋を感じる

秋になっていてもいいから
気持ちだけでも夏に置いていかせてと
季節に無理なお願いをする

あの日に帰りたいとか
はやく時が経って欲しいとか
子どもに戻りたいとか
もっと大人になりたいとか

月日の流れは
止められず
私の気持ちの流れとは
なかなか噛み合わない時のなか

季節に縋りたい気持ちを
手放して
早く秋に追いつかなきゃ
その先に待つ冬にも
備えなき

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詩 地球時間

詩 地球時間

昨日と今日を
並べてみたら
きっと全然
違うだろう

同じような毎日
そう思うのに
ひとつひとつ
じっくり眺めてみると
何も同じじゃない日々

その少しの違いに
興味を持って 
少しだけ良い日にしたり
楽しい日にしたり
そんな風に
暮らしたい

絶えず訪れる
僅かな変化の中
ポンと1人
放たれている
世界は縦にも横にも広すぎて
不安になるけれど

焦らずに
諦めずに
毎日を並べて
昨日と今日と明日

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