nico

1973年生まれ。生まれてから今まで、おんなじ地方の田舎町で暮らしています。 人生折り…

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1973年生まれ。生まれてから今まで、おんなじ地方の田舎町で暮らしています。 人生折り返し地点に入ったので、ぽわぽわと感じている何かを言語化してみようと思いたちました。

最近の記事

雨を浴びる

小さな水滴がいくつもいくつも、窓にあたる。 雨音も一緒に、透明な水をワイパーで拭いていく。 明るい曇り空。 エアコンも要らない、ちょうど良いこんな朝は、職場に着くまで雨を浴びようと思った。 バッハのシンプルなピアノ曲を、カーステレオで流す。 シンプルで美しい旋律が、雨粒と一緒になって、降ってくる。 私の住む町は田舎で、あまり信号も建物も無い。水田の黄緑と、森の沈んだ影のような緑。空を覆う雨雲の、やわらかいグレー。私のカフェオレ色の軽自動車は、広い道路をのびのびと走っていく。た

    • 私の庭

      朝5時。うぐいす、ひよどり、ほととぎす。からす、すずめ、はと。あまがえる。 季節毎に変わるいろんな声の合間に、遠くでトラックの走る音がする。飛行機の起こす大気の音がする。 まだ日は昇っていない。庭はうす青く、露に濡れている。 私の庭仕事が始まる。 結婚して新しい家に来たとき、土地は一面の砂利だった。 好きな風に草花を植えられるのが嬉しくて、庭の形を絵に描いた。 夫が土を掘り、私が苗を植えた。 できあがった庭は、粘土のような赤土と園芸用土が混ざって、まだぎこちなく見えた。

      • 自分との対話と軽やかさ

        梨木香歩さんの本『やがて満ちてくる光の』(新潮社刊)を読んでいて、伊勢神宮に関するエッセイが心に留まった。 梨木さんは伊勢神宮・外宮の森に明るさと軽やかさを感じ、その秘密は神宮のありかたにあると思ったという。 朝夕の神々の食事を用意する「日別朝夕大御饌祭(ひごとあさゆうおおみけさい)」。20年に一度、神殿から調度品まで何もかもを一新する「式年遷宮(しきねんせんぐう)」。日々、目的に向かって動き続ける神宮。  ~繰り返して倦むことを知らない、決して澱ませず清浄を保つのだという

        • 評価による心のゆらぎについて

          「自分を眺めるもうひとりの自分」をどう育てるか。それによって、心の安定度が違ってくるように思う。 以下は、かなり正直な私のケース。 ・お会いした人から「良い感じの方ですね」というコメントをもらった ↑ ・謝礼の額の件で尊敬する講師を怒らせてしまい、以降嫌われてしまった ↓ ・過去の業績から「あなたに期待している」と言われた ↑ ・調整の順番を間違えているところを上司に見られ叱られた ↓ ・「問題の部下をよく育ててくれた」と言われた ↑ どのケースも多かれ少なかれ、相手の受

        雨を浴びる

          病院にて

          パールブルーの水平線。冬の、淡く沈んだ空。建物の白い壁が、夕陽を受けて燃えている。 病室から少し歩くと、食堂がある。そこで何かを売っているわけではなく、患者や見舞い客用にテーブルと椅子が置いてあるだけの、簡単な休憩所だ。北東と南東に向けた壁一面が窓になっており、湾が見渡せる。 面会時間を避ければ人も少なく、思う存分窓辺にいられる。 ヘッドフォンで静かなジャズピアノを聴きながら、見惚れる。海、空、湾岸道路のフェニックスの木。 グレーの鳥が2、3羽、空を舞っている。影になって

          病院にて

          浮遊する時間

          考えがまとまらないまま宙にぷかぷか浮いていて、ただ私はそれを見ている。文字に定着させたい、そこへ向かって集中する体制ができているのだけれど、考えは浮遊し続ける。 ジャズが流れている。女性が雰囲気良く歌っている。 英語の歌で、魅力的な感じがするのに、英語のできない私には歌詞が分からない。 まとまらない考えも、そんな感じ。肌触りのようなものは感じられるのに、言語化できない。いろんな味や色が入っていて、ふんわりなめらかだから、はさみでジャキンと切ってしまったら、良さがまるで無く

          浮遊する時間

          好きなこと:ヨガ ~自分の歩幅の見つけかた~

          好きなこと、を具体的にことばにしたら、どうなるだろう。 それを読んだ自分は、どんなふうに感じ、思うのだろう。 そんな興味が沸いてきました。 なので、しばらく「好きなこと」を書こうと思います。 「周囲に流されず、自分の歩幅で歩くのです」・・・って言ったって、そもそも「自分の歩幅」が分からない。 それが、ヨガを始めるまでの私だった。 周囲をやっかんだり、落ち込んだり、どうすれば良いのか分からずに、がむしゃらに頑張ることしかできなかった私。 そんな私が、自分の歩幅を判断することが

          好きなこと:ヨガ ~自分の歩幅の見つけかた~

          好きなこと 秋の散歩

          好きなこと、を具体的にことばにしたら、どうなるだろう。 それを読んだ自分は、どんなふうに感じ、思うのだろう。 そんな興味が沸いてきました。 なので、しばらく「好きなこと」を書こうと思います。 ・・・わたしの好きなこと・・・ 秋。高い高い空。内側から静かにひかっているような青。 昼下がり、好きな公園へ行って、散歩する。木々の葉っぱは、明るい茶色やミルクコーヒーみたいな色の中に、くすんだ赤や黄色もまじる。このあたりは暖かいので、紅葉はあまり鮮やかじゃない。 平日なので人はま

          好きなこと 秋の散歩

          将来の夢

          飄々と、楽しく生きるおばあちゃんになりたい。 からからと笑い飛ばせるおばあちゃんになりたい。 動けるうちは自分で楽しく過ごし、 動けなくなったら若い人にかわいく甘えて ありがとう、ありがとう、っていっぱい言って 介助したいって思ってもらえるようなおばあちゃんになりたい。 そして、 身体は助けてもらうけど、気持ちは自由に 自分で楽しくして笑って死にたい。 これから、 やりたい仕事をやる。 やりたい趣味をやる。 学びたいものを学ぶ。 仲良くしたい人と仲良くする。 心の波立ちを見

          将来の夢

          揺れ動くのはしょうがない

          知人からモーニングページの効果を聴き、もう1ヶ月近く続けています。 モーニングページとは、朝起きたらできるだけすぐ、思ったことをすべてノートに書いていくというもの。どんなくだらないことでも、「書くことがない」でもいいそうです。知人はモーニングページを書くことで一日をすっきりと過ごすことができると言います。頭の中を掃き掃除するような感じなのだとか。 本当はA4のノートに3ページぐらい書くそうなのですが、できる範囲でやってみた結果、「手持ちのノートに“もう終わり!”と自分が思

          揺れ動くのはしょうがない

          図書館で借りるもの

          たまに、図書館へ行きます。 図書館には、本屋さんには置いてないような本があるからいいな、と思います。 これまでに借りた本の例 (1)昭和30~50年代に書かれたエッセイ 発刊当時のものが普通に棚に並んでいて、それだけで異空間に来た気がします。バースコントロールについてとか、時代を感じるテーマの文章も見つかります。 (2)児童書コーナーにある小学校高学年~中学生向けの物語 赤毛のアンシリーズとかムーミンシリーズとか。往年の名作をハードカバーで読める喜びを感じます。 (3)いろ

          図書館で借りるもの

          (ネタバレあり)映画「君たちはどう生きるか」感想

          作品は、観る人ごとに違う感想があると思います。特にこの映画は、他の方のレビューをみても、さまざまな「読み」が可能な映画のようです。映像が説明されないまま差し出されるので、イメージの連なりをそのまま観ている感じになり、まるで自分自身の夢(眠ってみる夢)のように、直接身体に染みてくる。だからこそ、自分自身の物語と響き合う体験をした人はきっとたくさんいて、観た人の数だけ読み方がある。そしてたとえ自分の読みを言語化できなくても「何か自分にとって大事な、素晴らしい映画だった」と感じるの

          (ネタバレあり)映画「君たちはどう生きるか」感想

          つたえる、きく、わかちあう

          乳児検診で、息子は人より半年、発達が遅れていると言われました。 専門の先生にみていただいた結果、軽度の発達障害ということになりました。 幸いなことに、私の住んでいる町は私たちを非常に手厚く支援してくださり、保育所から中学校まで、途切れ無く息子を見守ってくださいました。そして息子は今、一人暮らしをし、大学で油絵を学んでいます。 私にとっての息子・・・それは、「心の友」です。 発達障害にもいろいろありますが、息子は言葉を話すことが一番遅れていました。何回言葉を発しても、家族でさ

          つたえる、きく、わかちあう

          娘がくれたもの

          単純な私は、性別も顔かたちも似た自分の赤ちゃんを、自分の分身のように思っていました。 私は問題児で、学校が大嫌いでした。自分のペースで勉強を進めたいし、集団行動が苦手。気の合わない人と話すのも本当に苦痛でした。だから、「学校が苦しくなったら我慢せずに言うんよ。学校以外の選択肢だってあるんやから」と、小学校入学前から娘に言い聞かせていました(先生方ごめんなさい)。 ところが娘は学校が楽しい、学校へ行きたいと言いました。先生からも、いろんな子に優しく接する良い子ですよ、と言わ

          娘がくれたもの

          等身大を見ることの難しさ

          私は長い間、自分の写真を見るのが嫌いでした。満足のいくような顔のものは一つも無い。人に見せるときは、厳選してなるべく可愛く写ったものだけ見せました。 お化粧するときは鏡の前で、目をぱっちり開けて、にっこり笑います。自分が納得行く可愛らしさになるまで、表情を作ります。でも家を出るころには、そんなことは忘れています。 誰かと会っているときは、自分の顔の造作より、存在のありようが変化するのを感じます。具体的には、実際に自分の身体が広がったり縮んだりするみたいに思えます。 憧れの人

          等身大を見ることの難しさ

          「誰か」と比べることについて

          私はずっと、職場で聞く「ここって給料低いから」というセリフに、違和感を覚えていました。 私の地域では、女性が正規職員になれる職種が限られており、たいてい友だちの給料より私のほうが高額でした。だから私は、高いお給料に見合った仕事をしなければと焦っていました。 ですから、「ここって給料低いから」という言葉を聞くたび、誰と比べてそんな言葉が出てくるのだろう、そういうあなたは給料に相当した仕事ができているの?と憤りすら感じていました。 その後、オンラインのコミュニティに入って、様

          「誰か」と比べることについて