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トウキョウ百景

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東京生まれ東京育ちの30代。 太と環は、それぞれの東京で生まれ育ち、二十歳の時に東京で出会いました。 2人が見てきた東京の景色、東京での物語を、紹介していきます。 ぼくらが育…
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2024年5月の記事一覧

鮫洲駅の停車時間のような日々で

鮫洲駅の停車時間のような日々で

鮫洲駅と聞いて多くの人が連想するのは、教習所か、または京急線の停車時間なのではないないだろうか?
各駅停車しか泊まらない鮫洲駅は、急行の時間調整のために、長めの停車時間がある。

小さい頃、横浜方面から家に帰るとき、または向かう時に鮫洲で電車が停まると、少しイライラした。
早く家に帰りたいのに。目的地に行きたいのに。電車の中で退屈しているのに。
止まっている時間以上に、長く感じたものだった。

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原宿に親戚でもいたっけ?

原宿に親戚でもいたっけ?

大学生の頃、なかなかアルバイトが決まらなかった。理由は明白で、大学の体育会系の部活に入っていたからアルバイトをできる日が平日2日間しかなく、しかも融通が効かない。テストや部活の大会などで、アルバイトを休む可能性もある。それを馬鹿正直に伝え続けていたから、アルバイトを20社くらい受けても、採用とはならなかった。

大学一年生の年末、原宿にある大型の中華料理店の面接を受けた。そのお店はなかなかの高級店

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君が生まれて、虎ノ門に向かう銀座線で泣き笑いしたくなったことを思い出した

君が生まれて、虎ノ門に向かう銀座線で泣き笑いしたくなったことを思い出した

自分の人生の底と言えば、いまからちょうど7年前だ。
思い返すと、自分で引き起こした出来事がうまくいかず、それでもう世界の終わりみたいな気分になって、なかなか浮き上がることができなくなってしまった。
最近「鬱の本」といういろんな人の鬱な感情や出来事のエッセイ集を読んでいて色々と思い出したのだけど、自分がそのテーマで文章を書くとしたら間違いなくその頃のことを書くと思う。

妻との出会いや家族や友人の支

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さらば! 椎名町の隣人よ

さらば! 椎名町の隣人よ

私には密かに好きな隣人がいた。それがマンションの大家さんである松本さんだった。年齢は70歳くらいか、あまり詳しいことはわからないが、品のある女性だった。

松本さんはおそらく旦那さんと二人暮らしで、いつも私とパートナーが住むマンションの共用部を掃除してくれた。そして、共用部には観葉植物が飾られ、季節に合わせたお花が置かれることもあった。また、クリスマスやハロウィーンのときにはそれに合わせた飾りもさ

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