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短歌・歌集

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歌集・短歌・短歌に関係ある日記など。
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歌集『日暈』(小林幸子氏)を読む。ー光る発見ー

歌集『日暈』(小林幸子氏)を読む。ー光る発見ー

帯の背の部分に「第九歌集」とある。
歌歴の長さもあり、内容と作風に安定感を感じた。

五首選

古墳に行く連作の一部。

現地の鴉の立場から見たら、観光客も異物に見えているかもしれない。
そういった「視点を変えた発見」がある。

雲などのよく使われる題材ほど、作者の手腕と個性が試されると思う。

競歩に目を付けた点が工夫で、歩くでもなく走るでもないスピードだという気付きがある。

「非破壊検査」と

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歌集『アルゴン』(斎藤寛氏)を読む。

歌集『アルゴン』(斎藤寛氏)を読む。

歌集『アルゴン』(斎藤寛氏)を拝読した。

本の紹介

中年男性の立場からの視点が多い歌集。
ひとつまみの皮肉と哀愁がある。

時折作中に登場する「沼津の姉」の個性的な発言も魅力。

五首選

「領土」という仰々しい言い方が、おかしみを生んでいるように思った。
「ドトール」のカタカナ表記が異国の名前に見えてくるという効果もある。

「蹲る」は「うずくまる」と読む。
躓く(つまずく)と漢字が似ていて

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歌集『アーのようなカー』(寺井奈緒美氏)を読む。-ひねりと親しみやすさの両立-

歌集『アーのようなカー』(寺井奈緒美氏)を読む。-ひねりと親しみやすさの両立-

歌集『アーのようなカー』を読んだ。

不思議なタイトルは、歌集のある一首を読むことで分かるという工夫がある一冊。

五首選

今と過去が交差することで、それぞれの瞬間の切実さやかけがえのなさを感じる。

花びらとビニール傘の取り合わせも景が綺麗だと思う。

「面長の動物は横顔で絵を描かれがち」という発見も内包されている一首。

「向き合うんだ今日は」の部分だけ見ると、大変な出来事への決意のように見

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歌集『義弟全史』(土井礼一郎氏)を読む

歌集『義弟全史』(土井礼一郎氏)を読む

『義弟全史』は、かばん所属の土井礼一郎氏の歌集である。

意味深なタイトルが気になり、
惹きつけられた読者も多いのではないかと思う。

選(6首)

虫や鳥と人の感覚や立場が逆転しているような書き方に工夫を感じた。

上句は虫の声や鳥のさえずりだと読んだ。

また、虫と鳥を両方哲学や幸福とせずに、それぞれに哲学と幸福とで分けているのも印象深い。

人に割り当てられているのが、くるしいであり、一番本

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