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歌集『アルゴン』(斎藤寛氏)を読む。

歌集『アルゴン』(斎藤寛氏)を拝読した。




本の紹介

中年男性の立場からの視点が多い歌集。
ひとつまみの皮肉と哀愁がある。

時折作中に登場する「沼津の姉」の個性的な発言も魅力。


五首選

当面のわが領土とてドトールの長方形のテーブルはあり

74ページ


「領土」という仰々しい言い方が、おかしみを生んでいるように思った。
「ドトール」のカタカナ表記が異国の名前に見えてくるという効果もある。

谷底に蹲る日も「為すべきこと」数件ありてわが生き延びつ

85ページ

「蹲る」は「うずくまる」と読む。
躓く(つまずく)と漢字が似ていて注意。

確かにやるべき事が無いよりも適度に用事がある方が生活に張り合いがあるかもしれない。

わたくしを護る一首を探さむと短歌の森へ分け入りてゆく

114ページ

「短歌の森」という喩が魅力的。

種田山頭火の俳句の
分け入つても分けいつても青い山
を意識しているかもしれない。

褒め合ひて突つつき合ひて抱き合ひて楽しく煮くづれよさかなたち

145ページ

煮魚が崩れていくさまを詠んでいるのだが、意味深である。

人によって色々な場面を連想して読むのではないだろうか。

みづうみの霧にまみれぬかしこさとずるがしこさの境界線は

152ページ

境界線があやふやなもの同士の取り合わせ。

「みずうみ」と「霧」の境目、
「かしこさ」と「ずるがしこさ」の境目。
色々な境目は作為的なのかもしれない。


リンク

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